インドのユース(若者)グループが取り組む水質検査

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Image: WaterAid/ Mansi Thapliyal

20歳のブハラットさんは、携帯用水質検査キットを抱え用心しながら階段をのぼり、デリー東部のスンデル・ナグリ地区にあるチャンドラワティさんの家に向かいます。ブハラットさんが蛇口をひねって水を採取し検査を始める様子を、チャンドラワティさんは見つめています。まず初めに調べるのは、pHレベルです。――水に不純物が含まれず中性ならば、pH試験紙の色は変わりません。それから水温、大腸菌群数、濁度を調べます。

「水をくんできて飲むとき、たいていの人はその水が澄んでいるかどうか確かめます。もし透明なら、飲んでも安全だと判断するのです。しかし、それは誤りであることが多いです。澄んでいるように見える水が必ずしも安全とは限りません。」とブハラットさんは言います。わたしたちのほとんど誰もが同じことをしています。水をくんだり、飲んだりするとき、澄んでいる水ならば、口にしても大丈夫と思いこんでいます。

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デリーのスンデル・ナグリ地区にあるチャンドラワティさんの家で、pH調査を行う青少年グループ
Image: WaterAid/ Mansi Thapliyal

ユース(若者)グループの活躍
ブハラットさんは「ユース(若者)利用者グループ」のメンバーです。このグループはウォーターエイド・インドの支援のもと、2012年にアクション・インディアによってスンデル・ナグリ地区で設立されました。その目的は、男女を問わず12歳から20歳までの若者に集まってもらい、安全できれいな水へのアクセスが不可欠であることを理解してもらうことでした。およそ10名から15名を1グループとし、コミュニティで簡単に実施できて、しかも難しい技術を伴わない11種類の検査の方法を学びます。その後、彼らは一般家庭や共同水栓をまわり、水質検査を行います。変化をもたらすことができるのはほかならぬ若者たちであり、彼らが学んだことを家族やコミュニティに伝え、きれいで安全な飲料水を求めるように促すことで、あらゆる世代の意識改革が進みます。

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水の濁度を検査するユースグループのメンバー
Image: WaterAid/Mansi Thapliyal

一連の検査をすべて行うには3時間かかります。その場で結果がわかるものがほとんどですが、記録に時間がかかるものもあり、コミュニティへの報告は後日行います。「5分で結果がわかる検査もあります。しかし私たちは、検査結果すべての関連性を調べてから、48時間以内に全結果をまとめてコミュニティに報告するようにしています。」とブハラットさんは言います。

もし水質が基準に達していなかった場合、きれいな水を得るために必要な手順をコミュニティに伝えます。家庭で簡単に水質を検査できる方法や、水を安全に貯めておく方法なども実演します。若者たちが行った水質検査の詳細な結果は、アクション・インディアによって公聴会を通してデリー上下水道公社(Delhi Jal Board)の職員と共有され、その後の対策につなげられるようにしています。

状況に応じた支援
ブハラットさんはスンデル・ナグリ地区で利用者グループが立ちあげられた当初からのメンバーで、いままで何軒の家庭を訪問し、何回水質検査をして、コミュニティにもたらす影響について調査したかはっきりと覚えてはいないけれど、軽く100回は超えるだろう、と話します。なかでも記憶に残る一件について話してくれました。「コミュニティ内のある家を訪れ、水質を調べたときのことです。水はとても汚れていて、飲むにはまったく適さないものだったので、その家の人にデリー上下水道公社に行って要望を出すように話しました。実際に申請をすると、公社の担当者が来て、給水管を調べてくれました。一か所漏水しており、そこから周囲の泥が流れこんでいることがわかりました。給水管を修繕してもらって、問題を解決することができました。」


しかし、ほとんどの家庭では、もっと簡単な方法で問題を解決することができます。「塩素タブレットを使って、飲む前に水を沸騰させるだけで十分な場合もあります」とブハラットさんは言います。

ただ、水質検査の際に採取した水のサンプルから、高濃度のアンモニアや大腸菌が見つかることもあります。その場合、デリー上下水道公社に連絡して漏水や汚染がないか調べてもらうよう、コミュニティに助言をします。「水質の問題は年々減ってきていますし、たとえ問題が起きても、コミュニティは素早く手を打つようになりました。」とブハラットさんは言います。

病気の減少
ブハラットさんによれば、当初このコミュニティでは、黄疸、下痢、発熱、その他の感染症が頻繁に見られました。「しかし、年々そのような病気の件数は減ってきています。安全できれいな水が必要なことをコミュニティが理解したからです。はじめのころは、なかなか家の中まで入らせてもらえず、水を採取するまでに質問攻めにあうこともありました。今では、私たちを探しだして検査を頼まれるほどです。」

何年にもわたってこの若者のグループがたゆまぬ努力を続け、水質検査を実施しその結果をコミュニティと共有したことによって、水質や検査についての人々の考え方や姿勢に確実な変化が生まれました。

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コミュニティで活動する話し合うスンデル・ナグリ地区青少年利用者グループのメンバー
Image: WaterAid/ Mansi Thapliyal