インドのコミュニティが一丸となって水の危機的状況を解決

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2017/3/21 | India

コミュニティが一丸となって水の危機的状況を解決


ドゥングリパダはオディシャ州ナウパダ県のサイパラ・グラム・パンチャーヤト(村落レベルの地方自治機構)にある小さな村です。ここで飲料水と家庭用水の主要な水源となっているのは手押しポンプのついた、たった1基の掘り抜き井戸です。村の人々はこの井戸の水が安心して利用できるものだと思い込んでいました。2013年、ウォーターエイドインドは現地のパートナー団体Regional Centre for Development Cooperation (RCDC)とともに同県にて水質の基礎評価を行ったところ、掘り抜き井戸には許容値をはるかに超える5ppmのフッ化物が含まれていることが判明しました。住民60人あまりの小さな集落では、すでに21人もの人が骨フッ素症を患い、残りの人々にも明らかにフッ素症の症状がみられました。コミュニティは自分たちの身体の異常を引き起こした原因に気づいておらず、村の唯一の水源に対して疑いを持ったことはありませんでした。

ウォーターエイドインドとRCDCは村の人々と数回にわたるミーティングを行い、水源である井戸水にフッ化物が含まれていること、そして、その物質が身体に悪影響を及ぼすことを報告し、コミュニティがフッ化物問題を解決できるよう対処方法について検討を始めました。村の人々が話し合って最初に決めたことは、掘り抜き井戸の使用を中止し、近くを流れるバルビンダ川の水を使用することでした。ただこの川の水量は季節によって左右され、モンスーンの直後は干上がってしまうため、毎日水をくみに2キロの距離を歩かなくてはなりませんでした。また村の人々は政府の農村水供給衛生課(Rural Water Supply and Sanitation department:RWS&S)に安全な水の供給に関する覚書も提出しましたが、政府の対応を待つよりも別の水源を探すことにしました。

調査をすすめるうちにわかったのは、水の汚染が特定の帯水層に限定されているということでした。「地下水面」として知られる帯水層に接触している他の開放井戸の水は汚染されていませんでした。さまざまなアドバイスを受け、村の人々は「サニタリー井戸」(物理的・細菌学的な汚染を避けるために衛生の面で適正な評価を受け、保護手段がとられた手押しポンプ付きの手掘り井戸)なら安全な水源となりうるということを学びました。ただし、実際の井戸掘りはたやすいことではありません。各家庭から作業に協力するために村の人々が集まり、5.5メートル(18フィート)の深さの井戸を掘り、巨大な岩を打ち砕き、井戸の壁を作りました。さらに砂やセメント代、運送費や石工職人にかかる費用は人々が持ち寄った寄付金18,790円(11,150インドルピー)でまかないました。フッ素症を患っている住民までもがなんらかの形で井戸の設置に協力しました。資材の在庫が不足し、運送用の費用がなくなったときは、コミュニティの女性たちがボランティアとして大きな石の詰まった袋を頭に乗せて運び、工事に協力しました。発展から取り残された集落であるにもかかわらず、コミュニティは驚くべき団結力を発揮して水質問題に取り組みました。

ついに井戸の完成です。衛生処理を行った後、井戸水は検査され飲料用として安全であることが証明されました。2014年5月以降、コミュニティで飲料水と家庭用水が不足する事態はおきていません。村の人々は井戸使用者グループを結成し、井戸の維持管理費を定期的に支払っています。さらにバクテリア、フッ化物、鉄分などの溶解性物質が水質に影響を与えることを踏まえ、サニタリー井戸の水質検査がコミュニティ内でできるようRCDCによる支援も行われました。

現在、安全な水を供給するという当面の目標は達成しましたが、村の人々は安全な水が水道による給水システムによって供給されるよう、政府に対して働きかける予定です。「安全な飲み水を手に入れることは私たちの権利だとやっとわかりました」と語るのはフッ素症を患う40代のカイラシュ・マジさん。このドゥングリパダの小さな集落は、コミュニティがいかに持続可能な方法で水についての困難を改善できるかを示す貴重な例と言えます。

サニタリー井戸が安全な水源として人気が高い理由は、(1)設置のしやすさ、(2)維持管理がしやすい、(3)費用対効果が高い、(4)コミュニティレベルで設置・管理が可能、の4点です。ナウパダ県では多くの人々がすでにサニタリー井戸のしくみを理解し、安全な飲料水の供給を確保しています。同県のベルトゥクリ・グラム・パンチャーヤトにあるカダメリ村には16基のサニタリー井戸が設置されており、インド政府もこのモデルケースを高く評価しています。RWS&Sはこれまでにナウパダ県全体で45基のサニタリー井戸を設置し、フッ化物問題に取り組んでいます。

ビカシュ・クマール・パティ(ウォーターエイドインドのプログラムコーディネーター)