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ウガンダでジェンダーと水・衛生に焦点をあて、失明に至るトラコーマを根絶する

ブログ

2017/8/4 | Uganda

トラコーマは、「防ぐことが可能な失明」の最大の原因であり、世界の最貧困層数百万人の生活に損害を与え、特に女性に大きく影響のある病気です。ウォーターエイド・ウガンダのジェームズ・キインバが、ジェンダーの観点から見たこの疾患について、また2020年までにトラコーマの根絶をめざす動きのなかでウォーターエイドが果たす役割について解説します。

防ぐことが可能な失明の主な原因

トラコーマは顧みられない熱帯病のひとつで、防ぐことが可能な失明の主な原因です。

トラコーマは、クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされる感染症です。繰りかえし感染すると、まぶたの内側に瘢痕(はんこん)組織が現れ、それによってまぶたが内側にまくれ込み、まつ毛が角膜を引っかくことになります。痛みや不快感を伴い、常に角膜が傷ついた状態になります。

トラコーマは貧困な社会経済的状態と関連があり、安全な水が不足し、個人の衛生意識や衛生環境が悪い状態もその一つです。眼の分泌物にたかるハエあるいは不衛生な手や衣類を介して、感染者の鼻水や目やにに潜む細菌が広まるのです。

眼の分泌物にたかるハエは、人の排泄物の中、ときには動物の糞の中で産卵します。排泄物が野外に放置されているような衛生状態の悪い場所では、こうしたハエが増えやすくなり、病気が広がる可能性が高まります。洗顔や手洗いをしないなど衛生習慣が定着していない場合、より感染が広がりやすく治療も困難になります。


ウガンダ、カラモジャ地方ナカピリピリ県ペドゥル・アデンジェイ村に住むイタイ・ナコルさん(87)はトラコーマによる視覚障害を発症しています。医療担当者のシスト・ロモジン氏に、手術を受けることを勧められました。

世界保健機関(WHO)によれば、およそ190万人がトラコーマを原因とする視覚障害を患っており、2億人以上がトラコーマの流行地域に暮らしているとされます。ウガンダでは112県のうち39県で流行が見られ、ウガンダ保健省の推計では1000万人以上がトラコーマ発症の危険にさらされています。

ウガンダをはじめとするトラコーマ流行国は、WHOが定めた目標「2020年までにトラコーマの根絶をめざす」の実現を約束し、WHOの「SAFE戦略」を積極的に実行しています。SAFEとは、手術(Surgery)による失明を引き起こす段階の治療、抗生物質(Antibiotics)の大量投与による感染除去、洗顔(Facial cleanliness)および環境改善(Environmental improvement)を意味します。トラコーマの根絶には、安全な水とトイレ、衛生習慣へのアクセスの改善、ならびに女性や女の子に特に焦点を充てた健康増進を目的とするコミュニティに根付いたインクルーシブ(包摂的な)支援が必要です。


洗顔中の少年。清潔な手、目やになどがない清潔な顔、清潔な家屋によってトラコーマを排除することができます。

ジェンダーと感染:なぜ女性と子供が感染するのか

どこであれトラコーマが流行する村を訪ねたならば、最も影響を受けているのは貧困層であり、とりわけ女性と子供であることがすぐにわかります。

トラコーマ被害の大きいアフリカの農村部で特に女性が感染しやすいのは、ジェンダーによる役割分担のためです。女性は庭仕事、水くみ、薪集め、料理、そしてトラコーマの原因となる細菌の保有者であることが多い子供の世話などを担っています。またハエは家の周辺に多いので、女性や子供のほうが、家から離れた場所で仕事をしている男性より感染する危険が高いと考えられています。

最近、私は、ウガンダ北東部カラモジャ地方のロペドゥル・アデンジェイ村を訪ねました。ウォーターエイドはこの村で、トラコーマ根絶プログラムの一環として、安全な水とトイレ、衛生習慣へのアクセス改善をめざしコミュニティを支援しています。

※トラコーマ根絶プログラムは、クイーン・エリザベス・ダイヤモンドジュビリー・トラスト(The Queen Elizabeth Diamond Jubilee Trust:エリザベス女王即位 60 周年を記念して 2012 年に設立された慈善団体)が主導する、ウガンダを含むアフリカの6カ国以上でトラコーマ根絶を目指す5年間のプログラムです。ウガンダではカラモジャの7つの地区とブソガの10の地区を対象としており、ウォーターエイドはこのプログラムに参加し、カラモジャ地方で洗顔促進と環境改善に取り組んでいます。

ここで見たのは、女性のトラコーマへの感染リスクが、ジェンダーによって決まる家庭内の作業分担によって高まっている実態でした。

この村で出会った87歳のイタイ・ナコルさんは、トラコーマで視覚障害を発症しました。彼女と話してみると、トラコーマ感染者のほとんど誰も、この眼病が広まる経緯や予防方法を知らないことがわかります。

「この6年ほど、目がかゆくて仕方がありませんでした。今年になって、左目を完全に失明しました。夫に顔を叩かれた日から、わたしの目に問題が起きるようになったのです。」

同じ村に住む86歳のアレペール・アリスさんは、夫のもう一人の妻によって魔術をかけられたせいで失明したと信じています。

女性が病気になると、家族の健康状態も危機にさらされます。子育てをしている女性のトラコーマが進行すれば、子供たちも感染しかねません。母親が最終的に視覚障害に陥ったり失明したりした場合、娘たちは学校を休んでその世話をし、代わりに家事を担わなければなりません。


SAFE戦略の実行におけるジェンダー視点

トラコーマ制御および根絶のためには、前述した「SAFE戦略」は有効です。同時に、ウォーターエイドは、家庭内で家族の衛生管理を担っている女性、ならびに感染しやすい子供に重点的に配慮することで、より高い効果があげられると考えています。
さらに、ウォーターエイドのこれまでの活動から得られた重要な教訓として、トラコーマ根絶をめざして実施するプログラムにおいて、「女性の感染率が高い」「一方で治療を受けづらい」という、ジェンダーによる障壁に対する対策も不可欠であることが示されています。

例えば、トラコーマが流行する農村部のコミュニティにおいて、保健センターは遠いところにある場合がほとんどです。必ず受けるべき手術であっても、女性や女の子が長い距離を歩いてそこに行くまでには、数々の障壁が立ちふさがっています。まずは、子供の世話や料理、水くみまで、代わりにしてくれる人を確保しなければいけません。そして手術後、家に帰るまでつきそってくれる人も必要です。

こうしたたくさんの障壁によって、多くの女性が保健サービスを受けられずにいます。女性のトラコーマ感染者に手術を受けるよう勧めるときには、医療を受けるための社会的サポート、ならびに男性による妻や娘の診察へのサポートについて考える必要があります。

また、子供(トラコーマの主要な保菌者)と女性は、繰り返しトラコーマに感染する可能性が高いことから、抗生物質を大量投与する際に優先されることが重要です。



行動を変え、理解すること
トラコーマ根絶のためには、コミュニティが安全な水を簡単に利用できるようになり、顔や家屋を清潔に保てるようにしなければなりません。

トラコーマ以外にも、コミュニティの水・衛生の状況が改善されると、下痢症や栄養不良などの健康問題の改善、女性や女の子たちの福祉と機会の向上といった前向きな影響をもたらします。

住民とのやりとりからわかるように、トラコーマの原因についての誤解は、トラコーマ根絶を目指す上で大きな課題です。トラコーマをなくすためには、病気の予防や治療において衛生がいかに重要かを人々が理解する必要があります。ウォーターエイドはウガンダにおけるトラコーマ根絶プログラムに参加し、水・衛生に関する環境の改善と行動を変えることを通じて貢献してきました。今後、このようなプログラムにジェンダーへの配慮を取り入れることで、その成果に大きな違いが生まれることが期待されます。


ウォーターエイド・ウガンダ ボイス・フロム・ザ・フィールド コミュニケーション担当 ジェームズ・キインバ