東ティモールの村の住民が、水位を測定できるようになるまで

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Image: WaterAid/Tom Greenwood

すべての人々が水や衛生設備を利用できるようするためには、住民の参加が欠かせません。しかし、水位の測定など、中には難しい作業もあります。ウォーターエイドは東ティモールで、住民と協力し、持続可能な解決法を見出しました。ウォーターエイド・東ティモールで、水資源管理を担当するモイゼス・ペレイラが解説します。

 

ウォーターエイドは、2007年にリキシャ県、2011年にマヌファヒ県で活動を開始し、現地パートナー団体や地方自治体と協力しながら水・衛生プロジェクトを実施してきました。ウォーターエイドは、住民と協力しながら新しい給水設備を導入する現地パートナーをサポートするというアプローチで水・衛生プロジェクトを実施しています。また、住民がより持続的に水を利用できることを可能にするために、水資源管理にも注力しています。

東ティモール政府が掲げる「東ティモール戦略開発計画2011年-2030年(Strategic Development Plan 2011-2030)」は、東ティモールの住民全員が、2030年までに水と衛生設備を利用することが可能になり、衛生習慣を身に付けることを目標としています。そして国の法令によって、地方の水・衛生設備の運営や管理は、その給水設備のある集落や地区、村といったコミュニティで責任を負うことになりました。しかしこうした設備の管理が、住民には難しい場合もあります。

それぞれの状況に合わせて
ウォーターエイドは、住民がこの「設備の管理」という責任を担うための手法を開発し、それぞれの村の実状に合った形で適応させました。ウォーターエイドは、給水設備設置プロジェクトを開始する際には必ず、現地パートナー団体と協力し、住民が中心となって維持管理を含む活動計画を策定するプロセスを作るほか、水利用者グループを立ち上げます。この水利用者グループが責任をもって、継続的に給水設備の運営管理を担い、各家庭から利用料を徴収するのです。

多くの村では、水量が減る乾期に問題が発生します。利用者グループのメンバーは毎日水源を訪れ、貯水槽を開けて、中の水位をチェックしなければなりません。その作業に貴重な時間を割かねばなりませんし、重い貯水槽の蓋を開けるのに苦労する人もいます。こういったことが原因で、住民による設備のモニタリングや管理に参加する意欲が失われることも少なくありません。簡単に実行、理解、管理ができる、より安価でシンプルな方法が必要になります。

試行錯誤
こうした問題の解決にのりだしたのは2015年のことでした。ディーキン大学大学院博士課程の学生であるケイト・ニーリーさんが、リキシャ県マウバラ郡ラウテカス村で、現地で調達できる材料を利用した簡易の水位計を導入したのです。村の人たちはこの手法をほかの村にも広めようとしましたが、土を詰めたプラスチック製の容器を滑車の材料として使っていたため、長期的には水質へのリスクになりかねないことがわかりました。

再検討の上、ウォーターエイドのオフィスでべつの滑車を試作しましたが、このタイプの水位計は、浮きやおもりの重量によって影響を受けてしまうことがわかりました。そこで、新たにより簡単な設計のものを作り、タリポサ地区で試すことになりました。この新しい設計では、タンク内の浮きに結んだひもを上から外へ垂らし、外側にある「レベル(測量をする場合に用いられる機器)」に結び付けました。これで、外から水位を判断することが可能になりました。

1週間後に意見を聞くため村を訪ね、住民からのフィードバックをもとに、よりしっかりしたひもとより重いおもりに代えることで、設計を改善しました。さらに、水位計について懐疑的な人がいる、子供たちがひもで遊んでしまう、貯水槽をフェンスで囲み安全を確保する必要がある、などの課題にも取り組みました。水利用者グループから村全体に説明をしてもらい、水位計が子供たちの遊び道具にならないようにしました。

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水位計に改良を加えるウォーターエイドスタッフと住民たち(東ティモール・タリポサ地区)
Image: WaterAid/Tom Greenwood

最終的な設計を他のコミュニティに共有
この完成した水位計は、早期警報システムとして役立っているほか、情報を得やすく、透明性が高く、水利用者グループが簡単に、しかも透明性を確保しながら、効率よく水位をチェックできるようになりました。タンクの水量が減少した場合、取水量を制限したり、人々の水利用時間を限定したりすることで、うまく水を配給できるようになりました。

 

地方のコミュニティ(特にエル・ニーニョの影響を受けている地域)が自立して水の供給を管理していくにあたり、この水位計はとても安価で簡単な方法といえます。

水位計がもたらした最大のメリットは、コミュニティが主体的にシステムを管理していく自信を持ったことです。水位を記録できるようになったことで、水利用者グループのリーダーは自信を持って村の支援にあたり、水利用を管理することができるようになりました。

ウォーターエイドは、コミュニティや利用者グループが自分たちで設備の管理をしたいという強い意志を持っていること、また設計や制作過程の初期段階から住民が関わることが重要であることを学びました。将来的には、現地パートナーや政府の給水設備担当者にも参加してもらいたいと考えています。

ウォーターエイドは、タリポサ村と同様の課題を抱えているほかのコミュニティでも、この仕組みを導入していく予定です。進捗状況については、このウェブサイト上で更新していきます。