タンザニア都市部の未計画居住区に水・衛生を届ける

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2017/7/14 | Tanzania

「協働する」「変革を起こす」という2つの価値観は、ウォーターエイドの活動において重要な柱です。タンザニア最大の都市ダルエスサラームのキボンデマジに水と衛生環境を届けるプロジェクトにおけるパートナーシップと最適なプランニングについて、ウォーターエイド・タンザニアのキャンペーンおよびコミュニケーション担当プリヤ・シッピーが紹介します。

タンザニアの人口の70%は農村部に住んでいますが、都市は成長を続けており、人口統計は急速に変化しています。2030年には人口の3分の2以上が都市部に住むことになると予想されています。

都市はこのかつてない成長速度に対応できず、水とトイレ、衛生環境にアクセスできない未計画居住を生み出す可能性があります。たとえばダルエスサラームでは、70%以上が水や排泄物の処理・管理などのサービスが行き届かない未計画居住区(Unplanned settlement)に住んでおり、水媒介の病気にかかる危険性が高まっています。


キボンデマジ区にある、水をせき止めてくめるようにした水源から水をくむ青年

2015年から、ウォーターエイド・タンザニアはパートナーと協力し、このような未計画居住区が集まるダルエスサラーム州テメケ県のキボンデマジ区において、水・衛生のサービスを供給するプロジェクトを実施しています。

キボンデマジの未計画居住区は、給水網が整備されておらず、人々は水に高額な値段を支払ったり、安全とは言えない井戸の水を使用したりしていました。トイレの便槽を空にする排泄物くみとりのサービスが限られているために、人々はこれらの作業を手で行わねばならず、とても不衛生で危険でした。キボンデマジは、2015年にコレラが大流行した地域の一つで、毎月約7件の新症例が報告されました。

都市の未計画居住区で活動するにあたり、そこにある多くの複雑な課題に直面しましたが、ウォーターエイドは、パートナーシップ、ならびに適応的な計画(Adaptive Planning:少し計画・実行した後の学びを元に、再度、計画・実行→学びを繰り返す)が重要であるという教訓を得ました。


パートナーシップの重要性

プロジェクト期間中、ウォーターエイドは貧困層を対象とした水・衛生サービスを実現するにあたり、テメケ県の自治体やDAWASA(ダルエスサラーム水道・下水道局)、DAWASCO(ダルエスサラームの水道・下水道の民間企業)、UTTマイクロファイナンス、選出されたコミュニティのリーダー、ピープルズディベロップメントフォーラム(PDF:タンザニアと南スーダンで活動する国際NGO)、公衆衛生にかかわる事業体など、多様なステークホルダーと連携しました。このプロジェクトでは、土地の確保、資本、コミュニティの参加、技術的な専門知識が求められたため、こうした幅広い領域のパートナーが必要でした。途中、管路を道路の下を通して延長する必要が出てきたためにTANROAD(タンザニア道路公団(事業実施機関))と協働したように、予想外のステークホルダーの協力を必要とすることもありました。

パートナーシップによって、さらなる機会が広がりました。例えば、DAWASCOは各家庭に水を供給する機会を得て、当初の計画よりも多い、600世帯の人々に水を届けることができました。ウォーターエイドはDAWASCOと協力し、コミュニティの人々も水の料金を支払うことが可能になるよう、貧困層向けの水の料金の取り決めに取り組みました。これによって、水1単位の料金が、5,000~6,000タンザニアシリング(約250~300円)から1800タンザニアシリング(約90円に引き下げられました。



バケツ1杯あたり150-300タンザニアシリング(約7~15円)だった水の価格が引き下げられ、利用者は現在民間の販売業者から1バケツあたり50タンザニアシリング(約3円)で水を購入しています。

プロジェクトの当初の設計には、こうした多くのパートナーは含まれていませんでしたが、プロジェクト実施中に生じた課題によって、貧しい都市のコミュニティに水や衛生設備、衛生環境を届けるためには、これらすべてのパートナーの協力が必要だということがわかりました。以前より、タンザニアの各局や実施機関は個別に活動する傾向があったため、ウォーターエイドは本プロジェクトを通じて、水・衛生部門以外の機関も含む幅広いパートナーと協力しながら都市部の水と衛生設備、衛生環境を改善する新しいアプローチを実証することができました。


適応的な計画(Adaptive Planning)

プロジェクトを実施する上での多くの課題が生じたことによって、「適応的な計画(Adaptive Planning)」が本プロジェクトのもう一つの大切な要素になりました。当初は、掘削井戸を修復することで、区全体に給水する予定でした。しかし、井戸は放置されたまま、かつ、水には多くの塩分が含まれており、飲み水として安全でないことがわかりました。パートナーと協議した結果、既存の貯水タンクとキオスクを修復し、DAWASCOと協力して水道の配管を拡大することにしました。土地所有者が補償を求めていたため、貯水タンクの新設は困難でした。

水道管網を拡張する際には、さらなる課題が生じました-管路を道路の下に通す必要があったのです。そのため、TANROADと連携して実施に必要な許可を得る必要があり、プロジェクトの予定が数週間ずれ込みましたが、多くの交渉の後、許可を得ることができました。

もう1つの課題は、ウォーターキオスク(水の売店)と固体および液体廃棄物集積所の設置に必要な土地を確保することでした。土地所有者は、その土地に建設するにあたり、プロジェクト予算を超えた補償を求めていました。しかし、ウォーターエイドはDAWASAと連携し、個々の土地所有者と協働することで、分散型排水処理施設建設のための土地を確保しました。

こうした多くの課題から、プロジェクトの設計や契約合意に柔軟に対応し、変更が発生した際に交渉し合意を得られるよう、すべてのパートナー間で良好なコミュニケーションをとる必要があるということを学びました。



今後の動き

水は利用できるようになったものの、コミュニティによるプロジェクトの管理、特に資金調達の問題に再考の余地があり、パートナーと議論を重ねています。ウォーターエイドは、都市における水・衛生により多くの資源を投入することができるよう、このプロジェクトから生まれたパートナーシップを強化し、深めていく予定です。

また、本プロジェクトでは、無収水、財政的・技術的課題に対応するための民間セクターの関与、貧困層を対象としたプロジェクトモデルに関する知識不足といった、水・衛生セクターが直面する主要課題に取り組んでいるため、ウォーターエイドは、本プロジェクトの成果を政府や幅広い水・衛生の関連セクターに共有します。このモデルを拡大できれば、タンザニア政府が掲げる水分野開発計画に定められている、都市における水・衛生の国家目標達成に貢献することができます。

ウォーターエイドは、国中で都市化が進み、多くの村が町に変わりつつあるため、多くの地方議会がこれに対応した計画を立てる必要があると考えています。ウォーターエイドは、水と衛生設備、衛生環境が都市計画に不可欠であることを示すために、ババティ町で調査を実施、都市計画と水・衛生を効果的に融合する方法について町議会と協力しています。この調査は、都市化が進む他の地域への情報提供の面で有用です。

都市部の水・衛生は、複雑で多様な課題が存在するため、ウォーターエイドは、そこに取り組む最も効果的な方法を研究し続けています。キボンデマジのプロジェクトは、効果的なパートナーシップ、ならびに生じる課題に適応していくことによって、最貧都市のコミュニティに水と衛生設備、衛生環境を届けることが可能であることを実証しました。

ウォーターエイド・タンザニア キャンペーンおよびコミュニケーションマネージャー プリヤ・シッピー