【活動レポート・ブログ】マダガスカル:湖を水源とする給水システムで人々の生活を変える②

A woman fetches water at one of the 90 newly installed social fountains, Fiadanana fokontany, Manjakandriana commune, Analamanga region, Madagascar, April 2021.
Image: WaterAid/ Ernest Randriarimalala

アフリカの南東海岸沖に位置する島国マダガスカル。マンジャカンドリャナ郡は同国の首都から約50kmの中央高地に位置しています。24の村からなるこの郡の人口は約27,000人、人口の大半は小規模農家です。

ウォーターエイドは、この郡で、12,860人の人々に清潔な水と衛生環境を届けるために、現在、2019年~2022年と3年間にわたる水・衛生プロジェクトを実施しています。前回の記事では、湖を水源とする給水システムの建設についてご紹介しました。今回は、学校や保健医療施設での水・トイレの普及、コミュニティにおける衛生習慣の促進や、新型コロナウイルス感染症への対応、そして、水・衛生の持続性を高める「しくみ」の構築についてご紹介します。

村に水を届ける

前回の報告で、ポンプ施設と浄水施設、貯水槽の建設がほぼ完了し、残る作業は国道沿いに水道管を敷設する作業とお伝えしましたが、このたび、ポンプ施設から各村に水を送るために必要な12kmの水道管の敷設が完了しました。雨期が到来したり、この地域の道路事情が悪かったりしたことから必要な資材の輸送に予想以上の時間がかかりましたが、現地パートナーと連携して、共同水くみ場90基、ウォーターキオスク(水の売店)5か所を設置、ポンプ施設とこれらの設備を水道管で接続し、9村の4443人が清潔な水を得られるようになりました。

学校・保健医療施設の水・衛生

ウォーターエイドは、多くの学校で清潔な水を得るための給水設備がなく、子供たちが授業中に水くみに行かなければならなかったことを受けて、この給水システムの水を学校にも供給できるよう水道管を敷設し、学校に水くみ場・手洗い設備を設置する作業を進めています。衛生的な環境で勉強できるよう、また、特に女子生徒たちが、トイレがないことで学校を休んだり中退したりすることがないよう、8校に男女別かつインクルーシブなトイレを建設することに決定。これまでに3校でトイレの建設を完了しました。

最近、職業訓練コースに約300人の生徒が通っている技術高校にも、新しいトイレが完成しました。この学校のティソリ校長は次のように話します。「だいぶ前、生徒と先生のために小さなトイレが2つあったのですが、それが一杯になってしまったので、別のトイレを作りました。そしてこのたび、給水設備、そして男女別のトイレにシャワー、便器、手洗い用設備、さらには障害者用トイレが完備された最高のトイレがこの学校に完成したのです。このような素晴らしいインフラがあることで、学校のさまざまなことが変わると信じています。私たちにこのような大きなチャンスを与えてくれたウォーターエイドとその支援者の皆さまに感謝します。」

The newly built sanitation block of the Rasalama private school, Manjakandriana commune, Analamanga region, Madagascar, April 2021.
完成した学校のトイレ。男女別、かつシャワーや手洗い設備が備わっている。
Image: WaterAid/ Ernest Randriarimalala

コミュニティにおける衛生習慣の促進

ウォーターエイドは、清潔な水の供給とトイレの建設に加え、人々が継続して手洗いなどの衛生習慣を実践していくための活動にも取り組みました。

コミュニティから選ばれた18人の衛生推進担当を対象に、衛生習慣に関するトレーニングを実施したほか、特に直近6か月間は、衛生推進担当が使用するステッカーやゲームなどの衛生促進ツールの制作・活用を進めました。

Nirina Chantal, 41, holding some of her visual materials for hygiene promotion, Antsakambahiny village, Manjakandriana commune, Analamanga region, Madagascar, April 2021.
衛生習慣をイラストで示す教材を手にする衛生推進担当のニリナさん
Image: WaterAid/ Ernest Randriarimalala

衛生促進ツールを制作するにあたり、ウォーターエイドはこれまでの経験上、「衛生習慣は重要である」ということを説明するだけでは、人々の衛生習慣は持続しにくいことから、人々と対話をし、子供の将来への不安や自分自身の快適さ、社会的地位の向上など、どういったことが動機となって、人々が衛生習慣を変えていくのか、理解するようにしました。その結果をふまえて制作したツールのひとつ、ステッカーには、①衛生的なトイレを使う、②手洗いをする、③清潔な水を利用し、清潔な水を慎重に保管する、④食品衛生、⑤月経衛生、といった計5つの衛生行動を表す5つの葉を描きました。人々は、家のドアなど目立つ場所にこのステッカーを貼り、これらの衛生習慣をどれくらい実践できているか、定期的に確認しています。

衛生促進ツール_ステッカー
家に実際に掲示されている5つの葉のステッカー

新型コロナウイルス感染症対応

2021年3月~5月、マダガスカルではベータ株の影響で新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が急増しました。現在(2021年8月時点)は比較的落ち着いていますが、この国の保健システムの脆弱性などを考えると予断を許さない状況です。ウォーターエイドは昨年より、各国で手洗い設備の設置に取り組んできました。ここマンジャカンドリャナ郡にも、写真のような足踏み式手洗い設備を設置。コミュニティにおける感染リスクを減らすのに役立っています。

Handwashing demonstration using acontactless handwashing station during the delivery of handwashings facilities for examination centres, Manjakandriana commune, Analamanga region, Madagascar, August 2020.
足でペダルを踏むことで水が出る手洗い設備
Image: WaterAid/ Ernest Randriarimalala

水・衛生の持続性を高める

ウォーターエイドは、給水設備やトイレが適切に維持管理され、衛生習慣が持続してコミュニティに定着するような「しくみ」の構築にも取り組んでいます。

そのしくみの一つが水・衛生の技術チーム「STEAH」。ウォーターエイドは、STEAHと地方政府を対象に、清潔な水を利用できる世帯数のデータを集め、システムに登録し、その登録内容を分析して問題があれば解決するための計画を立てる、というプロセスに関するトレーニングを実施しました。また、STEAHは、コミュニティの水・衛生課題に関する声や懸念をヒヤリングし、それらが今後の給水・衛生設備の改善計画に反映されるよう、コミュニティと地方政府をつなぐ役割も期待されています。

今後の予定

今後6~12カ月の間に、学校やコミュニティ、保健医療施設において現在進行中のインフラの建設、ならびに給水設備の水質検査を完了する予定です。また、引き続き地域の水・衛生課題を分析し、清潔な水とトイレ、衛生習慣が広がっていくよう、次の計画を策定していきます。