アドベンチャー・プロジェクト(NGO)のベッキー・ストローさんがレポート

インド、マホバ地域

ラム・ラティさんに出会ったとき、彼女の村は夜が明けて涼しい朝が訪れようとしていました。私は一瞬にして、頭の回転が速く傍若無人に笑う彼女の様子に、エネルギーが沸いてくる思いがしました。他の女性たちは顔を覆い、邪魔にならないように私たちから離れたところで遠慮がちに立っているのに、ラム・ラティはまるで市長のように歩き回り、どんどん話をして、誇りに顔を輝かせていました。

インド北部のこの地域は文化的に保守的で、女性が公共の場で話をしたり、ベールで顔を隠さずに出歩いたり、女の子を学校に通わせたりすることを良しとしません。ですから、ラム・ラティさんのような女性 ― 150センチあるかないかの身長で、勇敢にもオートバイを村に乗り入れ、けたたましく喋る女性は、ほとんどの人にとって衝撃的です。しかも彼女は、自分の工具箱を開けて、井戸を修理するのです。

地球全体の人口のうち10分の1の人々は、安全な飲み水を手に入れることができません。これは甚大な規模の危機です。もっと井戸をたくさん設置すれば簡単に解決できるように思えますが、難しいのはその井戸を維持することです。ゲイツ財団の資金提供によってアフリカ21か国が実施した最近の調査によると、過去20年以内に設置されたすべての手押しポンプうち36%が壊れた状態だということが分かりました。南アジアでも同じような統計結果が出ています。

この「廃井戸」はアフリカ大陸全土に散らばっており、資産の損失額は12億~15億ドルに上ると見られています。腐敗した政府やずさんな資金計画、交換部品のサプライチェーンがないことなどを要因として挙げる人もいます。また、支援団体に矛先を向け、貧しい村に井戸を設置する善意はあっても、判断力に乏しく、設置した井戸の維持は誰かがやってくれると思っていると非難する人もいます。いずれにしても、これでは、イギリスで車を買ったものの、ガソリンを入れるお金がなく、最寄りの修理工場もフランスにしかないというようなものです。

誰に責任があるのかはさておき、もし3台中1台の井戸が機能していないのであれば、それは変革が必要だということです。WaterAidは国際的な非営利団体ですが、この非営利団体は進取的な取り組みを行っています。事業を始めたのです。

2年前、壊れた井戸が4,000台もあったマホバ地域で、WaterAidは整備士訓練プログラムを開設しました。小さな店を開き、工具、オートバイ、水質検査設備を購入。女性7人を含む人たちに、整備士になる訓練を行いました。そしてこの整備士たちは、井戸の修理代を出しても良いという村から修理の依頼を受け始めたのです。

この方法は見事にうまくいきました。依頼の電話はひっきりなしにかかってきます。これまでに整備士たちが修理した井戸は300台以上。3万人の人々が、また水を使えるようになりました。

これとまったく同じ方法がインド以外の地域でうまくいくかどうかは分かりませんが、これと似た整備士育成プログラムがアフリカで何件か実施され、成功を収めています。このプログラムがうまくいくケースは、1つには政府にその理由があります。修理代のほとんどが、現地の村議会の予算から出ているのです。

整備士たちが他の井戸を修理するのを見ながら、私はこのプログラムがいかに大きな意味を持っているかということに気付きました。女性の整備士たちにとって、これは女性解放運動なのです。「最初は女に修理なんてできっこないと思っていました」と、近くに立っていた男性が話してくれました。「でもラム・ラティさんは訓練を受けてやり方を覚え、今ではすごくうまくなりました。男だって彼女ほどうまくは修理できないですよ。」

ラム・ラティさんの友人で同じく整備士をしているシェイラさんは、こう話してくれました。「私が初めて自転車に乗る練習をしたとき、みんな笑って言ったんですよ、『今日は自転車の練習で、明日は飛行機の操縦かい?』って。」

「みんな今は何て言っているんですか?」と私は聞いてみました。

するとラム・ラティさんが、クスクス笑ってこう言いました。「みんな今では、手押しポンプ整備士さん、来てくださいって言っています。修理を待っているんです、お願いだから来てくださいってね。」