【活動レポート・ブログ】 タンザニア:廃棄物から富を生み出す

安全で衛生的な方法でトイレのピットを清掃する作業員
Image: WaterAid

1年前、タンザニアのワジリ・ムスタファさんは「フロッグマン」として働いていました。「フロッグマン」とは、公共サービスの届かないタンザニアのスラムなどで、バケツやショベルを使ってくみ取り式トイレを空にするという危険な仕事をする人たちのことです。しかし、ウォーターエイドの取り組みにより、この仕事は利益を生み出すビジネスへと変わり、ワジリさんは安全で衛生的な方法で、安定した給料を得ながら、同じサービスを提供するようになりました。排せつ物を富に変えるリサイクルを軸にしたタンザニアでの取り組みをご紹介します。

危険なくみ取り作業をする「フロッグマン」        

低所得国の多くの都市と同様に、ダルエスサラームは過去数十年に渡ってかつてない成長を遂げました。未計画居住区が都市のあちこちにでき、公共サービスは人口増加に対応できていません。その結果、こうした居住区の多くが不衛生な水に依存し、衛生環境も劣悪です。タンザニアでは、都市部に生活している人のうち、37%しか適切なトイレを使うことができていません。

こうした居住区では、多くの人が下水道に接続されていないくみ取り式トイレを使用しており、排せつ物の処理は課題となっています。居住区の通りの多くは道幅が狭くトラックが入って来られないため、住民たちは手作業でくみ取って、排せつ物を周囲や小川、水源などに捨てています。あるいは地区内に住む「フロッグマン」にお金を払い、作業をしてもらいます。

フロッグマンの仕事は危険です。彼らにはトイレのピット(排せつ物が溜まる穴)で安全かつ衛生的にくみ取りを行うのにふさわしい道具や装備がありません。病原菌の多い環境での作業のため病気にかかりやすいうえ、作業中に大雨でピットが崩壊し、亡くなる人もいます。

衛生ビジネスのモデルをつくる        

こうした状況を変えるため、ウォーターエイド・タンザニアは、コミュニティーのリーダーたちや現地パートナー、マイクロファイナンス(小規模金融)機関、自治体の協力のもと、ダルエスサラームのトイレの排泄物の問題を改善するため、衛生ビジネスのプロジェクトを提案しました。

このプロジェクトでは、3つの衛生ビジネスを法人化すること、そしてビジネスが成功するよう経営についてトレーニングを行うことに注力。また、これらのビジネスに対する融資を管理する役割を担うべく、現地で評価されているマイクロファイナンス機関UTTにも参画してもらいました。さらに、このビジネスが必要なライセンスを得て、かつ適切に規制に対応したものになるよう、テメケ県の自治体とも連携しました。

まず家庭ゴミに着目し、ポスターやリーフレットで宣伝し、融資を受けて必要な機材を調達し、家庭からゴミを集めて、専用の埋立地へ安全に運搬するようにしました。

設立された3社のうちの1つ、JAMKAのディレクターのカイサリ・ムグワさんは、この結果に喜びました。「この辺りの環境は以前は不衛生で汚いものでした。住民たちはゴミをそこら中に捨てていました。住民たちに教育を行ったことで、毎日道は清掃され、ゴミは収集されています。平均で、私たちは毎日6〜7トンのゴミを捨てています」とカイサリさんは言います。

ウォーターエイドが協働した衛生事業の3社のうちの1つ、JAMCAのオフィスの外観
ウォーターエイドが協働した衛生事業の3社のうちの1社、JAMCAのオフィスの外観
Image: WaterAid/Priya Sippy

し尿処理プラントも建設、事業は成長        

業者によって、し尿処理プラントも建設されました。このプラントで、し尿を肥料や炭、バイオガスへとリサイクルすることで、販売や活用が可能になります。その結果、周辺環境や近くの水源を清潔で汚染のない状態に保つことができるようになります。

10人に3人のタンザニア人は、1日あたり1.25ドル以下で生活しています。すべての人がこのサービスが使えるように、費用は分割で払えるようにし、さらに最貧困層は、サービスを無料で受けられるようにしています。

JAMKAは、営業区域を4本の通りから7本の通りへ広げ、従業員数は15人から25人へ、顧客基盤は3倍になりました。従業員たちの月収は倍になりました。

「プロジェクトのことを神に感謝します」

3社のビジネスの成長により、事業開始時に受けた融資を予定よりも早く返済することができました。このことにより、衛生ビジネスが融資をする銀行にとっても有効であることを実証できました。UTTは、それ以降、他の衛生ビジネスが適用できる衛生関連の融資のしくみを作りました。他のマイクロファイナンス機関も、衛生ビジネスに投資することに関心を示しています。

以前フロッグマンであったワジリ・ムスタファさんは、こう話します。「私のフロッグマンとしての仕事は、とてもリスクの高いものでした。需要が最も多い雨期は非常に危険で、最悪でした。作業中にピットが崩れ、友人がピットの中へ落ちるという事件も忘れられません。今は、安全で衛生的な状況で働き、そして、安定した給料を得ています。このプロジェクトのことを神に感謝しています」。

オフィスの外に立つEMACE(Environmental Management and Community Empowerment)のビジネスオーナー。EMACEもこのプロジェクトで教導する3社のうちの1社
EMACEもこのプロジェクトで連携する3社のうちの1社
Image: WaterAid/Priya Sippy

※このレポートは、ウォーターエイドタンザニアのシニアプログラムマネージャーのニカス・ペトロと、コミュニケーション・戦略マネージャーのプリヤ・シッピーによる議論をもとに、ニカス・ペトロらが書いたレポートを、ウォーターエイドジャパンが編集したものです。オリジナル原稿(英文)はこちら。ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルのレポートはこちら(英文)