【活動レポート・ブログ】インド:ウォーターエイドジャパン役員がビハール州ガヤ県の水・衛生プロジェクトを視察②

India day 2
Image: WaterAid Japan

ウォーターエイドジャパンは、支援者の皆さまのご寄付によって、インドにおける水・衛生プロジェクトをサポートしています。2024年11月、ウォーターエイドジャパンの古米弘明理事長をはじめとする役員5名と事務局長の高橋が現地に入り、ビハール州ガヤ県における水・衛生プロジェクトを視察してきました。前回のブログに続き、本ブログでは、視察1日目の後半と2日目をご紹介します。 

1日目夕方:女性が運営する衛生用品の小売店訪問 

現地視察1日目の夕方には、マンプール・ブロックのソンディ村を訪問。この村に住む女性ゴウリ・クマリさんが運営する、衛生用品などを販売する小さいお店を視察しました。

クマリさんは、元々、生計を立てるために家の敷地内で生活必需品の販売を始めました。その後、この地域で衛生習慣を促進する取り組みを進めていたウォーターエイドの支援を受けて、クマリさんは、石けん、生理用品、トイレの掃除用品、歯ブラシと歯磨きなど衛生関連用品を販売する「水・衛生マート」として店を拡大。ウォーターエイドの活動によって、住民が衛生習慣を理解しても、家の近くで石けんやトイレ掃除用品などを入手できなければ、住民たちは衛生習慣を実際に継続することができません。クマリさんの「水・衛生マート」によって、住民たちは、手を洗ったり、トイレを清潔に保ったり、という衛生行動を実践するために必要なものを、家の近くで簡単に入手することが可能になりました。住民の間で衛生行動が定着するにつれて、石けんや生理用品の売り上げが増加しています。クマリさんによると、毎日多くの住民が店を利用していて、最も売れているのはトイレ掃除用の洗剤とのこと。今後、資金を貯めることができたら、さらに店を拡大したい、と話してくれました。

ウォーターエイドは、ガヤ県において、クマリさんを含む76人の女性たちの「水・衛生マート」を支援しています。 

drawing on the ground
私たちを歓迎するために住民の皆さんが地面に描いてくださった絵柄
Image: WaterAid Japan
posuture on the WASH store
水・衛生マートに掲示されていたポスター
Image: WaterAid Japan
Kumari standing at in front of her store
自分が経営する水・衛生マートの前に立つクマリさん
Image: WaterAid Japan

2日目午前:サライヤタール居住地訪問 

2日目の午前中は、様々な理由によって脆弱な立場に置かれた人々が多く住むサライヤタールを訪れました。ここは、50世帯が生活し、人々は日雇いの仕事と農業などで生計を立てています。村のなかを歩くと、あちこちにヤギがいて、小さい子ヤギたちもいました。現地スタッフによると、ヤギは1度で複数匹出産するので、売って収入を得るためには効率がよいとのことでした。

ウォーターエイドは今年、給水網が届いておらず、また、機能するトイレがなかったこの場所に、地下水を水源とする給水システムとコミュニティ共用トイレを設置しました。それまでは、村に6基ある個人が所有する手押しポンプ式井戸を住民たちが借りて水をくんでいたとのこと。さらに手押しポンプ式井戸ができる前は小川から水をくんでいたそうです。

給水システムは、地下水を高いところに設置されたタンクにくみあげて、そこから各戸に排水するというもので、12人の女性たちが参加する委員会が維持管理を担当しています。委員を選ぶ際には、コミュニティで集まって、どの世帯から委員に出てもらうか話し合ったそうです。水使用料金として、各家庭が月に30ルピー支払っており、そこから電気代や修理が発生した際には修理工への費用を払っています。また、モンスーン時期の前と後に、水質検査を行っているとのことでした。 

board members welcomed by local people
住民の歓迎を受けるウォーターエイドジャパン役員たち。後ろに見えるのが貯水タンク。
Image: WaterAid Japan
consulting with local people about how to maintain WASH system
住民の皆さんから維持管理方法などについてヒヤリング
Image: WaterAid Japan

トイレは、地下水を使った水洗式になっていて、男性用、女性用に加えて、高齢者や障害のある住民が使える「洋式トイレ」(座るタイプのトイレ)も設置されていました。こちらも各家庭から徴収した資金を使って維持管理されています。ウォーターエイドは、この住民が共同で維持管理する「コミュニティ共用トイレ」のモデルを他の地域にも普及していきたいと考えています。 

sign of inclusive toilet
インクルーシブトイレ(障害者や子供が使や水トイレ)を示すイラスト
Image: WaterAid Japan
explaing how to use cummunity toilet
コミュニティトイレの説明を受ける
Image: WaterAid Japan

2日目午後:地下水のフッ化物汚染が見つかっている村 

最後に訪問したのは人口889人のカラー村です。以前は、この村にある2基の手押しポンプ式井戸から水をくんでいたとのこと。一方、乾期には水が出なくなることもあったほか、基準値を超えるフッ化物汚染が確認されており飲料水として安全ではありませんでした。

2018年、この地域にパイプ給水システムが建設されたものの、ろ過ユニットの不備などにより、稼働しなくなっていました。そこで、ウォーターエイドは、その給水システムを改修し、フッ化物を除去する装置も組み込んで、住民が安全な水を利用できるようにしました。

私たちが視察している間、周りに集まってきた女性たちに、以前と比べて水について何か変わったことがあるか尋ねたところ、「水の味がよくなった」とのことでした。

前回のブログでご紹介したとおり、ビハール州は、ヒ素やフッ化物などの水質汚染、気候変動による干ばつや洪水など、多様な水問題に直面しています。こうした状況から最も影響を受けるのは、貧困層や脆弱な立場に置かれた人々です。ウォーターエイドのようなNGOの強みは、取り残されがちな貧困層・脆弱層のニーズをくみあげて、地域や社会、人々にあった解決方法を講じること、SDGsのテーマである「誰も取り残さない」を実践していくことです。今回の視察に参加した古米弘明理事長は次のように話します。

「ウォーターエイド・インドが地元行政府と連携を取りながら、集落住民のニーズを把握して実効性のある水道供給とトイレの整備計画を立案して、給水および衛生設備を整備したことは非常に意義深いことです。行政だけでは行き届かない状況のなかで、水と衛生の専門家集団としての NGO ならではの力が発揮されたものと思いました。このように活動していることは、まさに『Leave no one behind』の原則を実践している証であろうと思いました。」

インドにおける活動には、日本の個人の皆さまのご寄付、法人からのご寄付も多く使わせていただいております。ウォーターエイド・インドチームからは、こうした日本の皆さまからのご支援への感謝の言葉が寄せられました。