【活動レポート・ブログ】インド:気候変動に対応するために、水資源管理と水の供給確保を

Golaniya, 25, collects water from a dug hole in Jariha village of Chitrakoot District in Uttar Pradesh, India. March 2018
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

インドでは近年、大雨や洪水、干ばつ、熱波など気候変動による異常気象が頻発しています。2022年、同国では気温49度が記録されたほか、2023年も豪雨、熱波が各地で発生。そして年々、これらの激しさ・頻度は激化しています。こうした異常気象の影響を最も受けるのは、貧困層・脆弱層です。

2019年、このような気候変動に対応するためには水資源、ならびにその利用可能性を高めることが不可欠であると、ウォーターエイドの南アジア地域アドボカシーマネージャー ヴァニタ・スネジャは話しました。それから4年経った2023年、私たちが住む日本、そしてインド、さらには世界中のいたるところで、私たちはさらに激しくなった気候変動の影響を目の当たりにしています。3年前のブログになりますが、さらに深刻化した気候変動の影響と水・衛生について改めて考えるために、下記記事を紹介します

 

2015年12月第1週、気候変動活動家や世界のリーダーたちがパリに集まり、気候変動の影響について議論している最中、インド南部の大都市チェンナイでは、過去100年間で最悪の洪水が発生し、300人以上の命が奪われました。そして洪水によって、数百万人もの人々が、清潔な飲料水を得ることができない状況に置かれました。

当時、チェンナイの大洪水は、世界のリーダーたちが気候変動に対する行動を起こすための警鐘、またはエビデンスとして引用されました。それから4年後、チェンナイは、今度は深刻な水不足によって、再びニュースになる事態となりました。このときは、雨が降らなかったことに加え、湖・池や貯水槽が劣化したり消失したりといった構造的な問題によって、地域全体で効果的に貯水できなくなり、都市全体が水不足に陥りました。飲用・生活用に必要な安全な水が手に入らなくなったため、レストランやホテルは営業を停止、学校やオフィスも閉鎖されました。人々は、給水車が法外な料金で提供する水に頼るしかありませんでした。チェンナイは、2015年には大洪水、4年後の2019年には水不足によって、大混乱に陥ったのです。このチェンナイで起きたことは、脆弱な都市計画、そして(気候変動による)不安定な降雨が組み合わさって、深刻な大雨が起きたり、深刻な干ばつが起きたりする、という典型的な例を示していると言えます。

Women and girls wait for their turn to collect water from a small dug hole (supposed to provide fairly clean water as compared to the water body closeby) in Bundelkhand region of Uttar Pradesh, India. March 2018
干ばつにより、小さな穴を掘って水を得るしかない女性たち(ウッタル・プラデシュ州)
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

こうした緊急時にレジリエントな(回復力のある)給水システムがあれば、被害を受けたコミュニティは、より効果的に対処し、より早く復興することが可能になります。すべての場所ですべての人が清潔な水を利用できるようになれば、気候変動に対する適応能力が高まり、気候変動に強いコミュニティづくりにつながります。一方で、異常気象や気候変動の影響を最初に受けるのもまた、水であることが多く、すなわち人々の安全な飲料水へのアクセスは気候変動と異常気象の影響を受けやすいと言えます。特に給水網や水資源管理が整っていない地域で生活する貧困層・脆弱層は、気候変動の影響を受けやすい状況にあり、安全な飲料水へのアクセスの確保などの「水」の備えは、脆弱層・貧困層が気候変動に対応していくために不可欠です。

深刻な熱波や長引く干ばつによって、水の入手が困難になることはもちろん、水の質も大きく低下します。ランセットの2018年版報告書「健康と気候変動に関するカウントダウン」によると、インドで熱波にさらされる人の数は、2012年から2016年までの5年間で4,000万人増加したと推定されています。干ばつと高温によって、藻類が発生したり、(地下水のなかの)化学汚染物質の濃度が濃くなったりするため、浄水にかかるコストも増大します。そうなると貧困の連鎖に陥っている人々にとって、きれいな水を手に入れることがさらに難しくなるのです。女性や女の子たちは給水設備の前で長時間、行列に並んだり、水が得られる給水設備を探して1日に何時間も歩いたりしなければなりません。

Golaniya, 25, carries the water and washed utensils to her home in Jariha village of Chitrakoot District in Uttar Pradesh, India. March 2018
水と洗った食器を運ぶ女性(ウッタル・プラデシュ州)
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

こうした状況を受けて、2019年、インド政府は、節水や水資源管理を促進するキャンペーンを開始しました。さらに、長期計画の一環として、インド政府は、2024年までにすべての人が家庭で安全な水を利用できるようにすることを約束しました。こうした取り組みで導入される給水設備・給水サービスも、気候変動に対応できるものであることが重要です。

洪水やサイクロンなどの異常気象は、給水インフラを破壊し、水質にも影響を及ぼします。インド中央・南部で未曾有の熱波が発生した後、今度は遅れてやってきたモンスーンが引き金となり、アッサム州を皮切りに、マハラシュトラ州、ケララ州、ビハール州、ウッタル・プラデシュ州で洪水が発生したほか、マディヤ・プラデシュ州とラジャスタン州で異常降雨が、さらにビハール州の一部で再び洪水が起きています。

Floodwaters in Bihar. August 2021
2021年8月に発生した洪水被害(ビハール州)
Image: WaterAid

気候変動への適応はまだ発展途上の状況です。しかし、水資源を保全し、水をいつでも利用できるようにするために地域レベルで計画を立てること自体が、気候変動の影響に対する強固な盾を築くことにつながります。水資源を保全するためには、地下水の最大の「消費者」である農業において、灌漑による水利用効率を高めることに加えて、インセンティブや価格設定、規制を通じて、水不足に悩む農業地域に適した作付けパターンを導くことが重要です。また、(水を多く使いがちな)中間層・富裕層の水消費量を減らすために、行動変容と政治的意志も必要です。そして排水のリサイクルと再利用、水源の汚染抑止、さらに重要なこととして、あらゆる産業に対して、水の「持続不可能な」使用を規制する政策も必要です。

気候変動の危機に直面している今、私たちは、水不足に悩む地域だけでなく、国全体で水資源管理、そして人々が安全な水を得られるようにする取り組みを加速させなければなりません。2024年までに、すべての人が安全な水を利用できるようにするためには、給水設備・給水サービスが気候変動の影響に強いものになるよう、住民の参加や気候の視点からの計画策定が必要です。

この記事は、ウォーターエイド・インドが2019年に出したブログ記事を、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)

ウォーターエイドジャパンはこの夏、深刻な水・衛生危機に直面しているインドの人々の「夢」を叶えるため、皆さまにご寄付を呼びかけています。安全な水を切に願う人々に水と希望を届けるため、夏募金に、どうかご協力をお願いします。

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