【活動レポート・ブログ】東ティモール、パプアニューギニア、カンボジア:気候変動に強い水・衛生のための統合的な水管理

WaterAid/ Anindito Mukherjee

世界中で干ばつや洪水などの異常気象が頻発しています。この影響を最も深刻に受けているのは、地球温暖化の主要因から離れた生活を送ってきた開発途上国の貧困層・脆弱層です。こうしたコミュニティは、脆弱なインフラや居住エリア、政府のリソース不足など、様々な社会経済的な障壁により、気候変動の影響を受けやすい状況に置かれています。また、ウォーターエイドが活動するコミュニティでは、井戸、ため池など、村全体が唯一の給水設備に依存することで、水不足や水質汚染、さらに食料不安や健康被害に直面するリスクが高くなっています。また、ジェンダーや社会的不平等も途上国の農村部における大きな課題です。

今後、気候変動がさらに進めば、水不足、水源の汚染、地下水の塩分濃度上昇、給水・衛生インフラの破壊といった課題がさらに頻発・深刻化し、貧困層と脆弱層の水へのアクセスがさらに困難になることが予想されます。一方、こうした気候変動下でも、安定して水・衛生サービスを利用し続けることができれば、コミュニティは気候変動の影響を受けにくくなったり、洪水や干ばつ等の自然災害の被害から素早く回復したりすることが可能になります。

ウォーターエイドは、カンボジア、東ティモール、パプアニューギニアにおいて、給水設備の種類を多様化または気候変動に最適化したり、水と気候に関するデータを収集・分析したり、住民の気候変動に関する理解を促進したりする活動を進めています。また、気候変動に適応し、かつレジリエントであるために、地方自治体が「ウォーターセキュリティプラン(水の確保計画)」を策定するよう働きかけ、その策定プロセスをサポートしています。

ウォーターエイドは、コミュニティが水・衛生を通じて気候変動にレジリエントであるために、下記の分野に注力しています。

  1. 気候変動と水・衛生に関するコミュニティと政府の能力強化と意識向上
  2. より効果的な水資源管理に向けた組織間の連携促進
  3. 水・気候関連データのモニタリング

 

気候変動と水・衛生に関するコミュニティと政府の能力強化と意識向上

水・衛生と水資源管理に統合的に取り組むためには、意思決定へのコミュニティの参加を含め、コミュニティレベルでの能力強化が必要です。女性、障害者、高齢者など脆弱な立場に置かれている人々は、清潔な水とトイレへのアクセスが困難であることも多く、さらにこうした水・衛生に関する意思決定の場からも排除されがちです。

東ティモールは2021年、過去50年間で最悪の洪水が発生し、気候変動の厳しい影響を目の当たりにしました。ウォーターエイドは、シドニー工科大学の「持続可能な未来研究所(Institute For sustainable future)」と連携し、住民による気候変動への理解を深め、コミュニティのレジリエンスを高めるための住民参加型プロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、コミュニティにおけるワークショップ等を通じて、住民の気候変動に対する意識を高める手法についてガイドラインを作成すると同時に、気候危機に対応する際に、ジェンダーならびに脆弱層を取り残さないことの重要性を実証することを目指しました。例えば、ガイドラインには、①気候変動による自然災害が発生した際、コミュニティの住民のうち誰がどういう役割を果たすのか、また、誰が重要な意思決定するのかを事前に検討しておくこと、②こうした災害時に給水設備・トイレに起こりうるリスクを特定し、それが人々の生活に与える影響について検証し、対策を立てておくこと、といった内容が含まれています。このガイドラインは、各コミュニティの状況に合わせて、プロジェクトの様々な段階で取り入れられるよう設計されており、現在、東ティモールだけではなく、カンボジア、パプアニューギニアでもこの手法を取り入れています。

climate resilient WASH
WaterAid

より効果的な水資源管理に向けた組織間の連携促進

カンボジアは洪水の被害が非常に多い国です。洪水によってトイレが倒壊したり浸水したりすることで、コミュニティの衛生環境や井戸などの水源が汚染され、下痢等の病気が蔓延することもあります。カンボジアにおいて、全人口が清潔な水とトイレを利用できるという状態を実現できない最大の障壁の1つは、水・衛生を担当する政府機関や公共サービス事業者間の調整ができていないこと、また、政策立案に必要な水・衛生関連の情報やデータが適切に収集されたり、異なる部門間で共有されたりしていないことにあります。

ウォーターエイドは、「オーストラリア水パートナーシップ」による資金的支援を受けて実施しているプロジェクトの一環で、カンボジアにおいて水資源管理計画策定の実行可能性に関する調査を実施。この調査には、国や地方自治体、市民社会、水道事業体、学術機関、開発パートナーなど、同地域の水・衛生に関わるステークホルダー100人以上が参加しました。本プロジェクトを通じて、水・衛生関連部門・政府機関の間のコミュニケーションに関する取り決めを策定し、これらの組織・部門間の協力体制を確立することに重点を置きました。また、政策立案に必要な水・衛生関連の情報収集の一環として、郡の水・衛生委員会と州政府を対象に、水質検査の現場での実務への理解を深める研修を実施しました。

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水・気候関連データのモニタリング

気候や水資源に関するデータの不足は、現在および将来の気候リスクとそれが水資源に及ぼす影響を理解する上で、もう一つの障壁となっています。気候変動の影響を受けている地域では、年間を通して安定的に水を供給することが困難になりつつあります。さらにこうした状況に対して、モニタリングが不定期であること、また、コミュニティの水問題を最も把握している水利用組合と、水問題解決のための施策を立てるべき地方自治体との間で十分情報共有するしくみがないことが、状況をさらに悪くしています。ウォーターエイドはこのような状況を受けて、パプアニューギニアと東ティモールにおいて、地方自治体の課題解決力・計画立案力を高めるために、現場レベルのデータ収集とモニタリングのプロセスの立ち上げ・強化に注力しています。

ウォーターエイドは東ティモールにおいて、同国に本社を置く民間企業「Similie」と連携し、農村部にある給水システムにデータ記録装置を設置しています。東ティモールでは、湧き水を囲ってパイプで村まで水を届ける「自然流下式給水システム」が広く採用されていますが、近年、気候変動の影響によって、同システムの水量が不安定になりつつあります。このデータ記録装置は、自然流下式給水システムの貯水タンク等さまざまな場所に設置され、貯水タンクの水の量や、特定の村における水の使用パターンについてリアルタイムでデータを可視化することができます。ウォーターエイドは、このようなデータを収集し、分析することで、住民たち、ならびに住民代表からなら水利用者委員会が自分たちの水資源をモニタリングし、水不足等のときには必要な対策を講じるようになることを目指しています。

ウォーターエイドは、各国のプログラムにおいて、気候変動の影響にレジリエントな水・衛生を重要項目として位置付けており、気候変動に強い給水・衛生設備の設置からコミュニティや政府機関への啓発・能力強化、さらに政府の政策への働きかけなど、包括的な取り組みを進めています。
 

このレポートは、ウォーターエイド・オーストラリアの地域気候変動アドバイザーTanvi Oza、コミュニケーション・マネージャーCaity Hallのレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)