【活動レポート・ブログ】インド:コミュニティとともに水不足と気候変動への適応に挑む

水を運びながら家路につくインドの子供たち
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

気候変動は、水の問題に悩む人々の状況をさらに深刻にしています。水不足や水質の問題が深刻で、気候変動の影響とも思われる自然災害に見舞われているインドで、ウォーターエイドは、コミュニティが中心となった取り組みで、この課題に立ち向かっています。

2030年までに、インドの水需要は、利用可能な水の供給量の2倍に達すると予想されています。また、現在、インドの水のほぼ70%が汚染されていて、国ごとの比較で世界で3番目に悪いとされています(*1)。水不足と水質の問題が深刻ななか、気候変動が問題をより複雑にしています。

例えば2019年、人々が待ちわびたモンスーンの雨が例年より数週間遅れるなか、熱波が襲い、少なくとも137人が死亡しました。インド第6の都市チェンナイ(*2)では、深刻な水不足に陥り、水の供給が危機的状況になったことが大きなニュースになりました。2017年の熱波は、2015年の歴史的な洪水に続いて、都市の大部分に打撃を与え、多くの住民が家を失ってホームレスとなりました。

気候変動が水の問題をより深刻にする

この危機はどこからともなく起こったものではありません。水不足の問題は地下水の過剰なくみ上げと数十年間の不適切な水管理が原因です。その問題が気候変動によって悪化しているのです。

2019年のような熱波は、今後、頻繁に起きるかもしれません。インドの人々は、これまで以上に厳しい状況に適応しなければなりません。

インドのウッタル・プラデシュ州に住むクムス・カリさん(60歳)とフクム・チャンドさん(65歳)。清潔な水を入手するのは容易でない
インドのウッタル・プラデシュ州に住むクムス・カリさん(60歳)とフクム・チャンドさん(65歳)。清潔な水を入手するのは容易でない
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

こうしたなかインド政府は、適切な管理を通じて水の保全と水の安全保障を図る「水の力」キャンペーン(ヒンディー語では「Jal Shakti Abhiyan」)を立ち上げました。地下水の専門家や科学者が、水不足が最も深刻な州や県の職員と協力。地域の水源の再生や、処理された排水の再利用、水の保全、雨水の貯留、井戸を利用した涵養、流域の保全、さらには自然由来のソリューションとして植樹などに焦点があてられていく予定です。

コミュニティと協力して気候変動に強いしくみを

ウォーターエイドは、このようなインドの状況を受け、コミュニティレベルで、気候変動の影響にレジリエントな(回復力のある)しくみ作りに取り組んでいます。それぞれの地域に合わせ、レジリエントで、長期的に持続可能であることが確認された方法を使って、人々が清潔な水を安心して使い続けられることを目指します。具体的には、次のような取り組みを進めています。

  1. ウッタル・プラデシュ州のバンダ県では、2019年3月、地下水の再生と保全に関するキャンペーンを開始しました。35,000人以上の人々が、水に関する予算や地下水の調査に関する地域限定のプラットフォームに参加しました。プラットフォームを通じて、コミュニティ、活動家、政府関係者、研究者、市民社会グループは、水問題の解決に向けて一緒に取り組むことができます。
  2. このキャンペーンで、2,000以上の壊れた手押し井戸(ハンドポンプ)が修理され、機能していなかった260の井戸が回復しました。雨を貯めるために約2,500の小さな井戸と池が作られ、土壌と水の保全に役立てるため2,500の堀がつくられました。キャンペーンの第2段階は現在、池などの復元に重点的に取り組んでいます。
  3. チャッティースガル州のカンカー県では、雨水活用に焦点をあて、5,000以上の雨水活用設備の建設が進めされています。ウォーターエイドの現地パートナーとともに、計画づくりや能力向上、遠隔監視のためのスキルトレーニングなどをサポートしてきました。
  4. 南部では、ケララ州のパラッカド県、カルナタカ州のネラマンガラ県において、小規模な給水設備や雨水を貯めるシステムなど、気候変動にも強いインフラの構築を支援することに重点を置いています。また、村の水・衛生委員会や水利用グループ、学校運営委員会が、本プロジェクトについて「オーナーシップ」を持って取り組むことに注力し、これらのグループ・委員会が給水設備やしくみを主体的に維持管理していくことを目指しています。

これらの取り組みの結果、2018年のモンスーンの季節に、2,000万リットル以上の雨水を貯めることができました。

インドのウッタル・プラデシュ州で、公共のハンドポンプ(手押し井戸)から水をくむ女性
インドのウッタル・プラデシュ州で、公共のハンドポンプ(手押し井戸)から水をくむ女性
Image: WaterAid/ Prashanth Vishwanathan

影響を受けるのは貧困層や疎外された環境の人々

気候変動の影響が表れているのは、インドだけではありません。世界中の気温が上昇しています。2019年7月は記録的に最も暑い月でした。これまでになかった時期に干ばつや洪水が発生するのは、海面上昇とともに、気候変動の最も明確な指標の一つです。

そして、水・衛生へのアクセスが困難な人、貧困層や疎外された環境で暮らしている人ほど、こうした災害の影響を大きく受けます。気候変動によりすでに影響を受けている人々、今後影響を受けるおそれのある人々のために、緊急の行動が必要です。

ウォーターエイドは、気候変動への適用力を高めるため、今後もコミュニティ主導の取り組みを進め、その成果と教訓を発信していきます。

(*1)出典:Government of India. Composite water management index water quality indexに基づく

(*2)チェンナイの人口は、2011年国勢調査では約465万人。

※このレポートは、ウォーターエイド・インドのAvinash Kumarと、ウォーターエイド・イギリスのVirginia Newton-Lewis (Senior Policy Analyst)によるレポートを、ウォーターエイドジャパンが翻訳・編集したものです。オリジナルはこちら(英文)