【活動レポート・ブログ】ネパール:水・衛生環境の整備でコミュニティが作業に従事
以前から水をめぐる状況が厳しかったうえ、2015年4月の地震でさらに深刻な状況となったネパールのカブレ郡チャウリデウラリ村で、ウォーターエイドは、「コミュニティ主導の回復力と持続可能性を持った水・衛生プロジェクト」に取り組みました。前回のレポートで、プロジェクト後の生活の変化をご紹介しましたが、今回のレポートでは、水・衛生設備の建設への住民の参加についてお伝えします。
前回の記事
【支援の現場から】ネパール:地震被災の地域で「水のある生活」を実現
自分たちのためになることは、自分でやる
このプロジェクトでは、給水設備のパイプを通すための溝を掘る工事やパイプの敷設・接続、水道メーターの設置など、多くの場面で、大勢の住民が作業に加わりました。女性たちも多くが参加しました。「家に水があれば、生活はすごく楽になります」「一番いいのは、清潔な水を飲めること」と話してくれたチャンドラさんも作業に加わった一人です。
「私が工事に参加したのは、自分の家で水を使えるようにしたいからです。私は早く、家で蛇口をひねれば、水が出るようにしたいと思っています。自分のためになることは自分でやるということ気持ちがなければ、何も得られません。これは私たちの生活を改善するための行動なのです」
ギャヌさんは、約8カ月にわたって、配管などの作業に従事しました。
「私は36歳で、生まれてからこの村を離れたことがありません。村に助けが必要な時や誰かが困っている時はいつでも、私は可能な限り何でもやってきました。だから、生きていくうえで欠かせない水に関する取り組みに、私は関わらない訳にはいかず、参加して成果を出すことができました」
ギャヌさんの主な仕事は、パイプや継手を接続し、そこから水が漏れないようにすることです。地形によって一様にいかないところもありましたが、すべての蛇口から同じくらいの量の水が出るように整備しました。プロジェクトの終わりが見えて、ギャヌさんは「私は非常に幸せです。コミュニティの人々もとても幸せです」と話します。かつて7世帯で共用していた水を各戸で使うことができるようになり、「子供たちは、ほぼ毎日入浴します。服も洗うことができます。彼らの幸せな様子を見ると、私はいい仕事をしたと感じられます」(ギャヌさん)。
「ウォーターエイドがやってくれる」を乗り越えて
住民の事業参加を取りまとめたのは、そのために結成された給水設備の利用者委員会でした。委員長を務めたのが、カリさんです。委員会には多くの課題があったといいます。
「若者が少ない村で、それぞれの家から作業に参加してもらうのは、とくに大変でした。委員会には他の地区からの委員もいたので、助けてもらうことができました。最大の課題は、地区外にある水源を管理することでした」
カリさんによれば、プロジェクトが動き始めたころ、住民の間には、ある「誤解」がありました。
「村の人たちは、ウォーターエイドが事業の費用をすべて出してくれて、住民たちが作業する必要はないと考えていました。でも、それは事実ではありませんでした」
パイプを敷設するための溝の掘削が始まった後も、作業への参加を受け入れない地区もあり、掘削作業が中断してしまうこともありました。カリさんは、住民たちと話し合う場を設け、翌日からの作業参加の同意を取り付けました。
こうした課題があったにも関わらず、多くの人が作業に参加しました。「最初は、こうした給水網が実現するとは信じられず、作業に参加する人は少数でした。でもプロジェクトが終わりに近づき、人々は希望を感じ、協力してくれるようになりました。一部の人はまだとても否定的で、『24時間、水が使えるようになるなんて、あり得ない』と言います。こうした声を聞くのは残念ですが、委員会で話し合って、前進しています」(カリさん)
ウォーターエイドがこの取り組みで重視したことの一つが、コミュニティ自身の力で水・衛生設備が維持できるようになることです。カリさんのようなリーダーの存在も重要です。カリさんは、次のように話します。
「この委員会に参加することは、私にとって非常に重要です。リーダーシップを身に着けていく機会ともなりました。この経験は私に、社会のために活動することの大切さを気づかせてくれました。私は個人的に金銭的な利益を得たりはしていません。水が必要だから、委員会の委員長として活動しているのです」
委員会は、設備の修理のための資金も積み立て、災害に備えて貯水タンクに保険をかけることにしています。ウォーターエイドは、村の生活が改善し、それが住民たちの努力と協力によって維持されることを期待しています。