【活動レポート・ブログ】新型コロナウイルス感染症拡大期における、衛生習慣促進活動の教訓とは

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15 October 2021
WaterAid/ Mani Karmacharya

衛生習慣を変えるためのプロジェクト(Hygiene Behaviour Change Coalition project: HBCC)は、イギリス政府とユニリーバが資金を拠出し、国連機関やNGO、学術機関が連携して10億人の人々に衛生用品・インフラを提供し、衛生意識の向上を促進することを目指す官民パートナーシップです。ウォーターエイドは、エチオピア、ガーナ、ネパール、パキスタン、タンザニア、ザンビアの6か国でこのHBCCと連携し、新型コロナウイルス感染症対応プロジェクトを実施しました。1年弱で1億5200万人に支援を届けた成果と教訓について解説します。

ウォーターエイドは、水・衛生専門の国際NGOとして、石けんでの手洗い、公共の場でのマスク着用、頻繁に触る場所の清掃、物理的な距離を保つなどの重要な衛生行動を推進し、26カ国で新型コロナウイルス感染症の拡大の防止に取り組んできました。

このうちエチオピア、ガーナ、ネパール、パキスタン、タンザニア、ザンビアの6カ国では、HBCCの資金援助を受けて活動しました。ウォーターエイドは、360万ポンド(日本円で約5億5800万円)の資金に加え、180万個の石けんや手指消毒剤などの衛生用品の提供を受け、下記の成果をあげることができました。

  • マスメディアを利用した啓発キャンペーンを通じて、各国の全人口の20%から70%、合計1億5,100万人の人々に衛生習慣の改善を呼びかけました。
  • コミュニティの315,761人を対象に、衛生習慣の改善を目的とした対面式の活動を実施しました。
  • 1,122か所に大規模な(主に足踏み式の)手洗い設備を設置し、何百万人もの人々が手洗いできるようにしました。
  • ユニリーバの衛生用品を1,811,593個配布しました。
WaterAid_MED185
HBCCプロジェクトの一環として、ウォーターエイドはユニリーバから10万個の固形石けんを受領し、エチオピア・アディスアベバの保健医療施設や貧困家庭に配布しました。

いくつかの国では、新型コロナウイルス感染症に対応するために、以前から実施していた衛生習慣促進プログラムに、ビデオやイラストなどの新しいプロモーション素材を開発して導入する、という方法をとりました。ネパールでは、フリップチャートを更新したり、ステッカーを配布したりしたほか、以前から実施していた予防接種と連携した衛生プログラムに取り入れるための新しい広報素材を作りました。

他の国では、以前から実施していた衛生習慣促進プログラムを改訂するだけでなく、政府による衛生習慣への取り組みを強化する機会ととらえ、政府の関連する部署や委員会の機能を強化し、政府や衛生促進ボランティアのスキルを高める支援を実施しました。
 

マスメディアを使ったメッセージ発信

新型コロナウイルス感染症の特性を考えると、コミュニティにおいて人々を集めて対面で情報を伝え、衛生習慣の変容を促すという通常の方法は、人々を感染の危険にさらす可能性がありました。そこでウォーターエイドは、新型コロナウイルス感染症や衛生行動に関する重要なメッセージを、マスメディアや村の拡声器など「非接触型」の手段を用いて発信しました。

ウォーターエイドは今回、普段コミュニティにおいて衛生習慣を促進するために使っている手法を、ビデオや看板広告などのマスメディア素材作りに応用できる、ということを学びました。政府主導の広報用制作物委員会を立ち上げ、政府や制作会社、国内外の開発援助従事者とチームを組んで、衛生習慣を促進するための広報用制作物と支援パッケージを開発する、というプロセスは実はこれまでと同じなのです。

 

こういった取り組みが実り、ウォーターエイドは新しいタイプの衛生習慣促進用の広報用素材・制作物を開発することができました。最初のテレビ・ラジオの広告は、従来型で知識を伝えることが中心でした。その後、著名人が衛生習慣の重要性を発信することで、新型コロナウイルス感染症の症状や自己隔離のタイミングを人々に伝える、という新しい手法に成功。啓発活動が進行するにつれ、広告の内容はメッセージを受け取る側の気持ちに訴えて共感を呼ぶものになり、コミュニティを守るための各々の役割を効果的に強調することができました。

また、それぞれの国の事情に合わせた広報素材を制作したことも成果の一つです。例えば、タンザニアでは、アーティストがさまざまな民族をイメージして素材をデザインしました。ザンビアでは、著名なミュージシャンが手洗いの重要性を発信しました。また、ウォーターエイドは公平性と包摂性(インクルージョン)を重視していることから、手話を使ったり、さまざまな障害を持つ人々が登場したりする広報素材も制作しました。

その他のテレビ・ラジオ広告

エチオピア:心を揺さぶるような衛生習慣の変化促進

ガーナ:#COVID19に備えた衛生習慣

パキスタン:Corona ka Dabba Gol ジングル

ザンビア:「パワー・オブ・ファイブ」

ザンビア:Kutuba キャンペーン「手洗いチャレンジ

 

コミュニティにおける衛生習慣の変容

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タンザニアにおけるウォーターエイドの新型コロナウイルス感染症対応の一環として、手指衛生の啓発を行うアーティストのムリショ・ムポトさん(2020年9月)

ウォーターエイドは、感染拡大が落ち着き、人々が集まることが可能になったタイミングで、政府や現地パートナーと連携しながら、コミュニティにおける衛生習慣の促進にも取り組みました。

ウォーターエイドが企画に携わった衛生習慣促進の手法・素材は、アクティビティ、ゲーム、競技、実演しながらの説明、歌、ラジオや演劇の台本など。これらを通じて、重要な衛生習慣に関するメッセージを3回から12回、人々が目にすることを目指しました。

こうした活動では、各コミュニティで行われる衛生セッションが同じ方法で、かつ適切な教材を使って行われるようにするためのトレーニングが欠かせませんでした。現場の保健スタッフや地域のボランティアは、ウォーターエイドの監督のもと、衛生促進セッションを実施。これらのセッションは、2021年4月にHBCCプログラムが正式に終了した後も継続して実施されています。

ウォーターエイドは、こうした取り組みの効果を評価するために、さまざまなモニタリングメカニズムを確立。迅速に評価を行っています。

 

手洗い設備

ウォーターエイドはコロナ以前から、学校や保健医療施設に多くの手洗い設備を設置してきました。が、今回のように、足踏み式の手洗い設備を設計・テストし、大規模かつできるだけ早いスピードで設置するといった取り組みは初めてのことでした。

手洗い設備を設計するにあたっては、すべての活動国で統一のデザインを採用するのではなく、地元の組織や大学と協力して、地域に適した手洗い設備のモデルを作るようにしました。また、新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた当初は、安価ですぐに設置できる仮設の手洗い設備を多く設置しましたが、これらは必ずしも水道システムと接続していなかったり、障害者に配慮したものではなかったりしたため、徐々に改良を加えていくようにしました。

Sunita Kharel, senior auxiliary nurse midwife, Healthpost incharge, Bhumlutaar health post, washing her hands, Bhumlutaar, Kavre, Nepal, Sep 2020.
WaterAid/ Mani Karmacharya
ネパールのカブレで非接触型の手洗い設備を使用する、ブムルタール診療所の上級補助看護師兼助産師、スニータ・カレルさん。2020年9月

ウォーターエイドは、プロジェクト開始から3ヵ月で手洗い設備の設置を開始しました。このスピードは、多くの国が都市封鎖中で、かつ設備を設計してテストし、資材を調達することを考えると、比較的早いと言えるでしょう。しかし、設備の設置スピードを最優先したために、コミュニティの障害者や高齢者と十分な話し合いができなかったこともありました。また、設備を設置した後に安全性の監査が行われ、手洗い設備への通路を改善する、駐車車両が手洗い設備の利用を妨げないように手立てを講じる等、後から調整する必要が出てきたこともありました。

 

主な教訓

エチオピア、ガーナ、ネパール、パキスタン、タンザニア、ザンビアにおけるウォーターエイドのプログラムは、各国の新型コロナウイルス感染症対応に大きく貢献しました。1億5100万人以上の人々に衛生面での支援を行ったことを特に嬉しく思います。

一連のプロジェクトから得られた重要な教訓は次の通りです。

  • 人々に繰り返し届くような大規模な衛生啓発活動の実施は可能です。メッセージを届けるためには、信頼度が高く、魅力的で、かつ聞き手の気持ちを動かすコミュニケーション手法が不可欠です。
  • 障害者への配慮は最初からプログラムの中に組み込まれていることが望ましいです。手話を使うことで、ウォーターエイドのマスメディア素材は包摂的で、障害者を前向きなイメージで表現するものとなりました。また、ウォーターエイドが、現地の障害者団体とパートナーシップを結んでいる場合には、より良い結果が得られました。
  • 長く使い続けられる手洗い設備には、石けんと水が不可欠です。ウォーターエイドは、手洗い設備の監督責任者を継続的にモニタリングする人材を支援しています。
  • マスメディアは、コミュニティにおける衛生習慣変容キャンペーンの補助的役割として活用すべきです。マスメディアによる情報発信は、短期間で多くの人々に影響を与えることができますが、人々が衛生習慣を長期的に維持し継続していくことができるかどうかは未知数です。

このレポートは、ウォーターエイドの水・衛生シニアマネジャーであるオム・プラサド・ガウタム(Om Prasad Gautam)、グローバルプログラムマネージャーのイアン・ギャビン(Ian Gavin)、衛生プログラムマネジャーのララ・コントス(Lara Kontos)のレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)