【活動レポート・ブログ】エチオピア:気候変動に脆弱な地域で新たな水・衛生プロジェクトを開始

Seido, 16, loading jerrycans full of water onto a donkey to walk for about five hours to her parent’s house, Sirima village, Berbere District, Bale Zone, Oromia Regional State, Ethiopia, May 2022.
Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

アフリカで2番目に人口の多い国であるエチオピアは過去20年間、目覚ましい発展を遂げてきました。清潔な水を利用できない人々の数を半減させるという「ミレニアム開発目標」を達成したほか、野外で排泄する人の数は、1990年の10人に9人から、2015年には10人に3人以下まで減少しました。一方、この国は、気候変動の影響を受けやすくもあります。10人に4人が清潔な水を利用できず、その結果、1時間に1人、子どもが病気で命を落としています。

ウォーターエイドは、2021年8月~2025年3月まで、オロミア州バレ県ベルべレ郡の気候変動の影響に脆弱なコミュニティにおいて、水・衛生プロジェクトを実施することを決定。まずは2022年3月まで、調査・準備を進めました。

(left to right) Tuba, 14, Halima, 35 and Safiya, 40, collecting water in their jerrycans from a river located near Haro Town, Berbere District, Bale Zone, Oromia Regional State, Ethiopia, May 2022.
ポリタンクに川の水をくむハロ・ナノ村の女性たち Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

ベルベレ郡のハロ・ナノ村に住むサフィヤ・ブネヤさん(40歳)は、7人の子を育てる農民です。エチオピアの農村に住む多くの女性がそうであるように、サフィヤさんも料理や薪集め、家の掃除、そして最も重要な水くみなど、たくさんの家事に多くの時間を費やしています。
「農園には、給水設備も水源もないため、雨に頼るしかありません。雨が降らない限り、収穫はうまくいきません」。

サフィヤさんが水をくむのに一番近い川は、村から歩いて1時間かかる場所にあります。1日にポリタンク3つ分の水が必要であるため、サフィヤさんは毎日歩いて水くみに行きますが、川でくんだ水が清潔でないことも知っています。清潔で安全な水を手に入れることは、サフィヤさんとその家族、村の人々にとって大きな課題ですが、近年、この地域の極端な天候がこの課題をさらに悪化させています。
「雨が降ると、この川は氾濫します。水をくむことはおろか、川を渡って町へ行くことさえ困難です。雨が降らないときは水量が減り、水がより不衛生になります。このような状況が、私たちにとっては難しいのです。」
「もし、住んでいる場所の近くに水があれば、農作業をすることができ、より生産的になるでしょう。水があれば、農作業もはかどり、家族の生活も豊かになります。でも、正直なところ、家の近くできれいな水が使えるというイメージがわきません。ずっと不満を言い続けてきましたが、もう希望がなくなってしまいました。でも、実現するとしたら、それは夢のような話です。」

Safiya Buneya, 40, washing her feet in the river where she collects water from near Haro Town, Berbere District, Bale Zone, Oromia Regional State, Ethiopia, May 2022.
水くみをする川で、ポリタンクに座っているサフィアさん Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

ウォーターエイドは近年、こうしたサフィアさんが住むハロ・ナノ村のようなコミュニティが、清潔な水とトイレを利用し、衛生習慣を実践できるようになれば、気候変動に影響に対してレジリエントになると考え、気候変動に脆弱な地域における水・衛生の改善に注力しています。

ウォーターエイドは、ここオロミア州のベルベレ県でも水・衛生プロジェクトを実施することに決定。本プロジェクトでは、気候変動に強い自然流下式の給水システムを設計・建設します。このシステムは6つの村と1つの町をカバーし、住民41,549人に清潔な水を得ることが可能になります。あわせてウォーターエイドは、この地域の保健医療施設3か所、学校5校において、インクルーシブで誰もが利用できる給水設備とトイレを設置します。さらに現地政府とコミュニティが自分たちで気候変動の影響に対応する戦略を立てて、それを実践していくよう、現地政府とコミュニティによる流域保全の取り組み促進、現地政府・水道事業者を対象とした水・衛生関連の計画立案とモニタリングのトレーニング実施など、能力強化にも取り組む予定です。

2021年8月~2022年3月までの最初の8か月間は、「導入期間」として、詳細な調査実施、現地政府とのパートナーシップ契約に関する協議、スタッフの雇用など、プロジェクトを成功させるための基礎を築くことに注力しました。また、2021年12月には、水エネルギー省、保健省、財務省やオロミア州の水エネルギー担当部門、バレ県とベルベレ郡の職員など、主要なステークホルダーが参加するプロジェクト立ち上げのワークショップを実施しました。

郡の水担当部署から、本プロジェクト担当に任命されたサフィ・アブドさんは、「気候変動に強い給水システム」の一例について次のように話します。
「清潔な水を供給するには、水源を保護する必要があります。そのために、水源の周りに木を植えて、万が一の洪水から守る予定です。その上、植物は涼しさを保つのに役立ちます。」

Safi Abdo, 33, a water engineer for Berbere District Water and Energy Bureau, Haro Town, Berbere District, Bale Zone, Oromia Regional State, Ethiopia, May 2022.
郡の水担当部署から、本プロジェクト担当に任命されたサフィさん Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

また、この「導入期間」中、水文マッピングや、気候に対する水の脆弱性・リスクの評価を行いました。今後、この評価結果をもとに、気候変動が、この地域の「水の安全」にどういった影響を及ぼす可能性があるかを確認し、干ばつや洪水時に地下水などの水源を保護する方法を検証する予定です。また、2022年中には、地域の水・衛生委員会の能力強化のための活動を開始する予定です。サフィさんはこう話します。
「この活動を持続可能なものにするために、私たちはコミュニティを巻き込んでいきます。水を適切に利用し、水源を守るために、さまざまなトレーニングを行います。また、コミュニティが水・衛生委員会を立ち上げるのを支援します。水・衛生委員会のメンバーは、水・衛生に関するトレーニングを受け、給水システムの維持管理や気候変動の影響についてコミュニティの意識を高めることができるようになるでしょう。」

(このプロジェクトは英国政府からの一部資金援助を受けて実施しています。)