【活動レポート・ブログ】ルワンダ:学校の水・衛生の状況を改善する②

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Image: WaterAid/ James Kiyimba

ウォーターエイドは2018年~2021年、ルワンダのブゲセラ郡とニャマガベ郡において、学校を対象とした3年間の水・衛生プロジェクトを実施しました。本プロジェクトによって、雨水貯留タンクの設置、または既存の給水網との接続を通じて、50校で清潔な水を利用できるようになりました。また、3年間で30校に新しいトイレ棟を設置したほか、82校において生徒主導による衛生習慣の促進に取り組みました。前回の記事で、学校における雨水貯留タンク、トイレ、月経衛生ルームの建設についてご紹介しました。今回の記事では、学校で実施した衛生習慣促進キャンペーンやラジオドラマについてご紹介します。

キャンペーンを通じた衛生的な習慣の浸透

ウォーターエイドは、プロジェクト開始時、ブゲセラ郡とニャマガベ郡の学校82校に衛生クラブを立ち上げてトレーニングを実施し、その学校に通う計5740人の生徒たちが適切な衛生習慣を理解して実践できるようにすることを計画しました。プロジェクト開始から半年で、さっそく82校に衛生クラブを立ち上げ、これらの学校の先生たち164人に基本的な衛生習慣と月経衛生について研修を行いました。そしてプロジェクト期間3年間で、無事、5740人の生徒たちを対象に衛生習慣を促進することができました。

2020年11月、新型コロナウイルス感染症が落ち着き、学校が再開されると、各校の衛生クラブは、手洗いなどの適切な衛生習慣と感染症対策を学校、そしてコミュニティに広めるために欠かせない存在となりました。学校の先生たちは、学校が閉鎖されていた7カ月間の学習を取り戻す必要があったため、授業時間は学業に集中し、衛生クラブによる衛生キャンペーン活動は休憩時間や放課後に行なわれました。

プロジェクト開始当初から、学校の水・衛生関連の活動に熱心に取り組んできたクレアさんは、次のように話します。「学校でマスクの着用が不十分な人や、手を洗わずに水道のそばを通る人を見つけると、自分も他人も守ることが大切なんだよ、と声をかけています。時には消毒液を分けてあげたりして、手を清潔にするように促しています。」

クレアさんは、プロジェクト開始時に衛生行動変容に関するトレーニングを初めて受けて以来、適切な衛生習慣を積極的に広めており、仲間、特に初等教育の年少の子供たちに衛生関連の行動変容について伝えるようにしてきた、と話しました。

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学校に新設された雨水貯留タンクから水をくむクレアさん(写真右)
Image: WaterAid/ James Kiyimba

さらに、こうした衛生クラブの働きかけによって、ブゲセラ郡・ニャマガベ郡では、学習環境を清潔に保つため、また、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、多くの生徒たちが休み時間を利用して教室や学校の敷地を清掃するようになりました。

ラジオドラマを通じた呼びかけ

若い人々は、衛生習慣について新たな知識を得ると、それを家族や友人と共有するため、コミュニティ全体に長期的な成果がもたらされます。このプロジェクトの根底にあるのは、「若者には『チェンジメーカー』になる力がある」ということ。そこでウォーターエイドは、ルワンダ最大のラジオ局の一つであるラジオ・イシンギロと連携し、生徒たちによるラジオドラマの制作をサポートしています。このドラマの中で、生徒たちは自分たちが直面している水・衛生に関する問題を演じ、ドラマを通じて衛生管理の重要性を多くの人に伝えています。

ヴァリーンさんは、セント・アルベルト・リリマ・カトリック学校の衛生クラブのメンバーです。2018年、ヴァリーンさんたち衛生クラブのメンバーは、清潔な水やトイレ、衛生習慣について学び、その学んだことをより多くの生徒・住民たちに伝えるために、ラジオドラマを制作。それをラジオ・イシンギロが放送しました。

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ラジオドラマの収録中のヴァリーンさんたち
Image: WaterAid/ James Kiyimba

「今日収録したラジオドラマでは、私はある家庭の母親役を演じました。トイレや手洗いなどの衛生習慣に消極的な家庭の母親です。ドラマの中で、私は村の会合に出席し、良い衛生習慣の利点について学びました。帰宅後、このことを夫に話したところ、夫はとても辛そうにしていました。ドラマの後半で、変わることを躊躇していた夫が、茂みで排泄しているところを通行人に見つかり、村のリーダーに報告されました。彼は恥ずかしくなり、自宅にトイレを作ることに同意したのです。」

ヴァリーンさんは主役の一人として、重要なメッセージを楽しく伝えることをとても喜んでいました。
「両親は私がラジオで演技をしているのを初めて聞いたとき、とても喜び、同時に驚いていました。まさか私がラジオ番組でしゃべるとは誰も思っていなかったのです。家ではみんなが聞いてくれて、一緒に楽しんでいます。私はいつのまにか村の有名人になっていたようです。」

その後もラジオドラマの制作・放送は続いています。衛生クラブのメンバーは、昨年度だけで、48本ものラジオドラマを制作。これらはすべて、ラジオ・イシンギロの協力で、地元のラジオで放送されました。特に新型コロナウイルス感染症によるロックダウン中に放送された際には、多くの人々がラジオドラマを楽しむと同時に、手洗い等の衛生習慣の重要性を理解しました。

ルイーズ・ムカンタゲングワさんも、2019年当時、セント・アルベルト・リリマ・カトリック学校の衛生クラブの会長として、ラジオドラマを制作したり演じたりした1人です。学校を卒業した現在は、ラジオ・イシンギロのレポーターとして活躍しています。ラジオドラマを振り返って、彼女はこう語っています。
「(最近)ラジオのレポーターとして、新型コロナウイルス感染症とは何か、この感染症から身を守るにはどうしたらよいかを地域住民に呼びかけました。学校での活動を振り返ると、社会や学校で、水を利用できない影響について演じた劇のことを本当に誇りに思っています」。

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現在、ラジオ・イシンギロでレポーターとして活躍するルイーズさん
Image: WaterAid/ Bernard Abu. Mutijima

「学校に衛生クラブができる前、私は緊張して人前に立つことも、授業で話すこともできなかったので、ウォーターエイドのプロジェクトは、個人的にもとても大きなインパクトがありました。衛生クラブが始まってからは、自分たちで作った劇に役者として参加するようになり、少しずつ自信が持てるようになって、今に至っています。

ウォーターエイドのプロジェクトが始まる前、学校の校舎は、プラスチックや紙、汚物で汚れていましたが、ウォーターエイドのプロジェクトが始まって、水が使えるようになる、衛生クラブの立ち上げをサポートしてくれてからは、その違いが目に見えてわかるようになりました。

私は今、ジャーナリストとして、衛生は命であることを強く意識しています。ですから、常に清潔を保ち、衛生習慣を身につけることの重要性を、人々やコミュニティ全体に伝えることが私の最優先事項であると考えています。

ウォーターエイドは私だけを助けてくれたわけではありません。きれいなお皿で食事ができるようになった生徒や、水を汲むために歩いていた距離が短くなったという生徒など、学校全体が変わり、コミュニティにも影響を与えています。このプロジェクトについて、私はたくさんのポジティブなことを話すことができます。」


さらに本プロジェクトでは、ラジオドラマを補完するために、生徒たちを対象に、「水・衛生ジャーナル」の制作について研修を実施しました。プロジェクト期間中、生徒たちは、水・衛生ジャーナルを32号まで制作し、印刷した水・衛生ジャーナルが、多くの学校に配布されました。特に最近では、新型コロナウイルス感染症予防の重要性を強調しており、2020年9月にニャマガベ郡の学校の生徒が制作したジャーナルでは、同郡の多くの学校に手洗い設備がないこと、そしてそれが学校の再開に与える影響について特集しています。

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生徒たちが制作した「水・衛生ジャーナル」
Image: WaterAid/ Bernard Abu. Mutijima

ブゲセラ郡とニャマガベ郡で活動を始めてからの3年間で、学校が水・衛生へのアクセスをさらに重視するようになりました。ブゲセラ郡とニャマガベ郡のより多くの学校が、インクルーシブな給水設備・トイレの設置に予算を確保しました(ニャマガベで1.3%、ブゲセラで6.6%の増加)。また、プロジェクト開始以降、水・衛生に関する郡や国レベルの会議に、この2郡の学校がより積極的に参加するようになりました。特にブゲセラ郡では、これらの会議に出席する学校の割合は、プロジェクト開始時は55.2%だったところ、プロジェクト完了時には76.5%に増加しました。

このことは、学校に給水設備やトイレを設置し、衛生習慣を改善する、という活動と合わせて、その成果を学校や郡の政府に示し、より積極的に学校の水・衛生状況の改善に取り組むよう働きかけていくーこのようなウォーターエイドの活動、そして生徒や先生たちの活動が成果をあげた証と言えます。

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