【支援の現場から】水・衛生が影響を与えるSDGsの進展を加速するエントリーポイント

on
21 September 2020
Helene Jemussene carries her baby Agostinho, 3, on her back, as she gathers water from the river near M'Mele Village, Cuamba District, Niassa Province, Mozambique. May 2017.
WaterAid/ Eliza Powell

ウォーターエイドが取り組む水・衛生の課題と、持続可能な開発目標(SDGs)には深いつながりがあります。直接的なつながりは、ゴール6の「安全な水とトイレを世界中に」ですが、水・衛生はゴール6以外にも多くの目標に関わっているうえ、SDGsの目標自体も相互に関係し、SDGs達成のためには複合的なアプローチが求められています。その指針の1つが、国連事務総長が任命した専門家たちによる報告書「未来は今:持続可能な開発を達成するための科学」(The Future is Now: Science for Achieving Sustainable Development)です。この報告書で設定された、SDGsの進展を加速するための「エントリーポイント」と水・衛生について考えます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的な課題となる前から、各国政府がSDGsの達成に向かって、迅速、積極的に取り組んでいないという認識が世界的に広がっていました。進展が見られない分野も多くあります。とくに温室効果ガスの排出と環境に関しては後退すら見られるとされていました。ゴール6に関しては、このままのペースでは、2030年までの目標達成が厳しい状況です。

一方で、私たちはすでに迫りくる水の危機に直面しています。調査・研究活動に取り組む非営利組織であるWorld Resources Instituteによると、世界人口の4分の1が住む17の国では、使用可能な水がほぼ使い尽くされている状態で、非常に高い「水ストレス」(*1)にさらされています。このままいくと、2025年までに水の需要は50%増加し、18億人が絶対的な水不足を経験し、世界の人口の3分の2が水ストレスに苦しむことになると予想されています。

報告書は2019年秋に開催された国連のSDGサミットの参考資料として作成されました。国連事務総長により毎年作成されるSDGsの進捗報告書を補完するものとして、独立した専門家のチームによりまとめられました。専門家たちは、SDGsの目標の中でも特に強い関連性と相互依存関係があるエントリーポイントに関して行動を起こすことが特に効果的であり、人々の生活を改善する波及効果を生み出す可能性があると指摘しています。

 

水・衛生と関わりの深いエントリーポイント

水・衛生に関して、報告書「未来は今:持続可能な開発を達成するための科学」で指摘されているのは、以下のような内容です。

 

水・衛生にアクセスできない人々は、所得、健康状態、教育水準など、さまざま形の貧困に直面することが多いと、専門家たちは指摘しています。だとすると、貧困やその他の不平等は、資金だけでは解決できず、相互に重なりあった問題として対処することが必要な課題となります。貧困層や、女性・女の子、障害者、先住民などは、水・衛生などの基本的なサービスから取り残されがちです。各国の政府は、そうした人々も含め、すべての人の基本的なサービスへのアクセスを確保する必要があります。

すべての人が使うための配慮がされていなければ、障害者は水・衛生へアクセスするために、さらに大きな壁に直面します
WaterAid/ James Kiyimba
すべての人が使うための配慮がされていなければ、障害者は水・衛生へアクセスするために、さらに大きな壁に直面します

SDGsサミットに先立って開かれた国連の気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは、次のような明確なメッセージを発信しました。「これまで同様の経済活動を続け、制約のない経済成長を達成することはできません。温室効果ガスの排出や水、土地のことを考えれば、天然資源を際限なく使用することは、続けられません。持続可能で公正な経済とは、清潔な水と衛生に対する人々の権利を無視しない経済です」。

 

わたしたちが消費する食料をどのように作るか、しっかりと考える必要があります。世界では、淡水の約70%が食料生産(農業)に使用されています。水資源が限られている地域では、水の利用について、人々の飲料水や衛生サービスへのアクセスと農業との間でたびたび競合が発生します。水が不足する地域で農業用の水の使用量を制限することは、家庭で使うための水の使用を削減することよりもはるかに大きな影響をもたらす可能性があります。

 

都市部は大量の水を消費しています。都市部での水の消費量を土地の面積に換算すると、実際の都市部の面積の約20倍になります。また、不平等が最も顕著であるのも都市部です。水・衛生などの基本的なサービスへのアクセスは、誰も取り残されることのないよう、貧困層も考慮したものでなければなりません。すべての人に飲み水や衛生サービスを届けるための「最後の1マイル」(最後に残された場所・範囲)について考えれば、都市部は最も重要な地域の1つです。

インド・ニューデリーのサフェダ・バスティは、3,000人が生活するインフォーマルな居住地です。このような地域で、すべての人が清潔な水と適切なトイレを利用できるようにするのは大きな課題です
WaterAid/ Adam Ferguson
インド・ニューデリーのサフェダ・バスティは、3,000人が生活するインフォーマルな居住地(*2)です。このような地域で、すべての人が清潔な水と適切なトイレを利用できるようにするのは大きな課題です

大気、水圏、全球海洋、寒冷圏、極地、大規模な生物群系や、森林・土地・水・生物多様性のような自然資源は地球上で共有されている財産です。専門家たちは、水の危機や淡水の利用可能量の変化を環境悪化と関連付けました。つまり、土地を回復させることは、地下水位を上昇させ、地域が干ばつや水不足に対してレジリエンス(強靭さ・回復力)を高めるための方法の一つだということです。

 

(注)その他、報告書では、「エネルギーの脱炭素化とエネルギーへの普遍的アクセス」「持続可能な開発のための科学」「斬新的な変化ではなく抜本的な変革」についても言及されています。

(*1) 水ストレスとは、必要な量の水が使えず、水の需給がひっ迫している状態。人口1人当たりの最大利用可能水資源量(生活、農業、工業、エネルギーおよび環境に要する水資源量)が1,700 立法メートルを下回ると「水ストレス下にある」状態とされ、1,000 立法メートル未満は「水不足」、500立法メートル未満は「絶対的な水不足」の状態とされています。

(*2) インフォーマルな居住地(informal settlements)とは、国連人間居住計画(UN-HABITAT)の定義に基づくと、(1) 現住者が法的権利を 持たない、あるいは不法に占有されている土地に、住居群が建てられた地域、 (2) 住宅が現行法および建築法規に準拠していない、無計画な 居住区や地域 である。

 

報告書「未来は今:持続可能な開発を達成するための科学」(抄訳版)

報告書「未来は今:持続可能な開発を達成するための科学」全文(英文) 

 

このレポートは、ウォーターエイド・アメリカのアドボカシー・コーディネーター、ローリン・リウ(Laurin Liu)のレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)