【活動ブログ・レポート】ルワンダ:日本NGO連携無償資金協力の助成を受け、東部県ブゲセラ郡で水・衛生プロジェクト開始
このたび、ウォーターエイドのルワンダ共和国におけるプロジェクト「東部県ブゲセラ郡における水・衛生環境改善事業 」が、外務省の令和5年度日本NGO連携無償資金協力事業として採択され、2024年3月1日、福島 功 在ルワンダ日本国特命全権大使とウォーターエイドジャパンとの間で贈与契約書が締結されました。ブゲセラ郡のニャルゲンゲ・セクター(セクター=郡の下の行政区画)において水・衛生プロジェクトを実施し、住民11,400人が清潔な水を使えるようにするほか、学校3校と保健医療施設2か所にトイレ等を建設、さらに住民を対象に衛生習慣促進キャンペーンを実施し、地域の衛生環境を改善します。
1. ブゲセラ郡ニャルゲンゲ・セクターの水・衛生の状況
「千の丘の国」と呼ばれるルワンダは、アフリカ東部に位置する内陸国です。内戦からの復興において、ルワンダは目覚ましい発展を遂げ、経済は急速に成長しています。一方、こうした発展は都市部に集中しており、農村部では今も多くの人々が、清潔な水とトイレを利用することができずにいます。このような状況を改善するために、ルワンダ政府は、2024年までにすべての人々が水・衛生サービスを利用できるようにする、という目標を立てています。
ブゲセラ県はルワンダ南東部、首都キガリの南部に位置しています。15のセクター、72のセル(セル=セクターの下の行政区画)、581の村があり、55万人を超える人々が生活しています。ルワンダ国家統計局によると、ルワンダにおいて安全な水を利用できる人々の割合は9割近い一方、東部県は82.6%とルワンダ5県のなかで最も低く、さらに東部県の7郡のうちブゲセラ郡は77.5%と最も低い状況にあります。ブゲセラ郡では近年、大型浄水場が2か所設置されたものの、給水網が敷かれていない地域が残されており、そうした地域に住んでいる住民は、家の近くで安全な水を得ることができません。ニャルゲンゲ・セクターも、そうした地域のひとつであり、安全な水を利用できる住民は30%にとどまっています。60%の人々は、水をくむために1km以上歩く必要があり、また、10%は川・湖などからくんできた不衛生な水を使うしかありません。
ブゲセラ郡では、他の地域に比べて、衛生的なトイレの普及も遅れています。特に、学校において、トイレが不衛生、生徒数に対してトイレの数が足りない、といった課題が多くみられます。これによって子供たちが頻繁に下痢に感染したり、下痢に起因する発育阻害に陥ったりしています。また、保健医療施設でもトイレ・手洗い設備に不備があり、保健医療施設が病気の感染源となる危険性があります。
さらに、ルワンダではごみ捨て・手洗い等の人々の衛生行動にも課題があります。ブゲセラ郡では、近年の人口増もあり、住民が家の敷地内または近隣の茂み・空地などに捨てる大量のごみが地域の衛生環境を悪化させています。ブゲセラ郡ではごみの回収率は1%のみで、7割近くの人々が、ごみを周りの茂みなどに捨てています。
ウォーターエイドは、過去10年間ブゲセラ郡を重点地域として活動してきました。ウォーターエイドが活動を始めた当初、清潔な水を利用できる人口の割合は25%以下でしたが、現在では77.5% に達しています。本プロジェクトでは、ブゲセラ郡政府と協議したうえで、同郡のなかでも特に開発が遅れているニャルゲンゲ・セクターの水・衛生の状況を改善することを目指します。
2. 給水システムの建設
今回、ニャルゲンゲ・セクターに清潔な水を届けるために選んだ方法は、既存の浄水場の給水網を拡張するというものです。ニャルゲンゲ・セクターには、ンゲンダ・セルに浄水場があり、その周辺に給水網があるものの、その給水網はすべての地域をカバーできていません。本プロジェクトでは、給水網がない3つのセル(ンゲンダ、ムラビ、ルガンド)に水を届けるため、浄水場とつながっている既存の給水網からパイプ網を28km延長、また、2基の貯水槽を建設します。ンゲンダ・セル、ムラビ・セル、ルガンド・セル内の27か所に水くみ場を新設するほか、同地域の既存の給水網とつながっている水くみ場10か所を修復することで、住民11,400人が、家の近くで清潔な水を得られるようになります。
また、2022年度と2023年度に実施したプロジェクト同様、建設した給水システムが、持続して適切に維持管理されるよう、維持管理の体制・しくみも構築します。本プロジェクトでは、住民が参加する「水利用組合」が、給水システムを定期的に確認し、不備・故障を見つけた際に、住民の窓口となって民間事業者に連絡するよう、研修を実施します。
3. 学校、ヘルスポスト、コミュニティの衛生環境の改善
学校3校にトイレ棟を建設します。各トイレ棟には、8基のトイレを設置し、そのうち1基は手すりなどが付いたインクルーシブトイレを導入します。トイレを設置した学校では、生徒たちが参加する「衛生クラブ」を立ち上げ、生徒たちが中心となってトイレの適切な維持管理や生徒の衛生意識向上のための活動に取り組むようサポートします。
ルワンダでは、コミュニティレベルで保健サービスを提供する施設として「ヘルスポスト」が設置されており、水くみ場を設置する3セルには、ヘルスポストが15か所あります。一方、地域の保健医療を担う場所であるにもかかわらず、これらのヘルスポストでも、トイレが足りない、子供や障害者のニーズに合った仕様ではない、手洗い場が足りない、といった課題があります。郡政府との協議のもと、ウォーターエイドは、水・衛生のニーズが高い2つのヘルスポストを選定。これらの施設でインクルーシブトイレを含むトイレ8基と、手洗い場を設置します。
また、コミュニティにおいても、「コミュニティ衛生クラブ」 を立ち上げます。トレーニングを受けた「コミュニティ衛生クラブ」のメンバーは、住民がトイレを設置または改善し、清潔で安全なトイレを利用し続けるよう、また、ごみを削減したり正しく廃棄したりするよう、家庭訪問などを通じて働きかけていく役割を担います。さらに、地域のごみ回収・処理を担う民間業者を対象に、ごみ回収業者の役割・責任、ごみによる公衆衛生への影響などに関する2日間の研修を実施し、適切なごみ回収が実施されるようサポートします。