【活動レポート・ブログ】ルワンダ:日本NGO連携無償資金協力の助成を受け、東部県キレへ郡・ブゲセラ郡で水・衛生プロジェクト開始

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Image: WaterAid Rwanda 2023年に実施したプロジェクトで設置した水くみ場

2025年2月、ウォーターエイドのルワンダ共和国におけるプロジェクト「東部県キレへ郡およびブゲセラ郡における水・衛生環境改善事業」が、外務省の令和6年度日本NGO連携無償資金協力事業として採択されました。

ウォーターエイドはこれまで、東部県キレへ郡とブゲセラ郡の2つの郡で事業を実施してきました。2025年2月に採択された新たなプロジェクトは、3年間にわたって両郡の水・衛生の改善に取り組むもので、ウォーターエイドにとって初めての複数年事業となります。プロジェクト1年目となる2025年度は、キレへ郡のナショ・セクター(セクター=郡の下の行政区画)における給水システムの建設、両郡の学校と保健医療施設でのトイレ建設、キレへ郡の住民を対象とした衛生習慣促進キャンペーンを実施します。

キレへ郡とブゲセラ郡の水・衛生の状況

ルワンダは、アフリカ東部に位置する内陸国で、内戦終結から目覚ましい発展を遂げ、首都キガリや都市部では、進んだ都市生活が可能です。しかしながら、農村部では、今なお多くの人々が清潔な水とトイレを利用することができません。

「千の丘の国」と呼ばれるルワンダでは、文字どおり標高差の大きい地形によって、水源から住民の居住地域まで給水施設を整備することがとても困難です。プロジェクトを実施する東部県もこの課題に直面しており、国全体で安全な水を利用できる人口の割合は89.2%であるのに対し、東部県は82.6%と全国5県の中で最も低い割合です。

中でもキレヘ郡は山がちな地形であるために、給水施設の整備が進んでいません。ブゲセラ郡においても整備が遅れており、人口の2割が川や池などの表層水を利用しています。また、ルワンダの水資源委員会によれば、2つの郡は、国内で最も水不足が深刻な郡に該当しています。

衛生的なトイレを利用できる人口の割合は、全国平均が92.1%、一方でキレへ郡は74%、ブゲセラ郡は69%とかなり下回っています。適切なトイレのある学校の割合はルワンダ全体で70%、保健医療施設はわずか6%です。手洗い設備がある学校は67%、保健医療施設は65%にとどまっています。

学校のトイレや手洗い設備の不足は、子供たちの下痢症と発育阻害を引き起こしているばかりか、女子生徒が月経中に通学を避けたり中退したりする要因となっています。保健医療施設に適切なトイレと手洗い設備が不足していることで、医療従事者や乳幼児、妊産婦が感染症のリスクにさらされています。

本プロジェクトでは、このようなキレヘ郡とブゲセラ郡のコミュニティ、学校、保健医療施設を対象として、水・衛生の改善に取り組みます。

キレへ郡での給水システムの建設

2025年1月、ウォーターエイドジャパンの木藤と杉山は、ウォーターエイド・ルワンダおよびルワンダ政府の水衛生公社のスタッフとともに、キレへ郡のプロジェクト予定地を視察しました。キレへ郡は首都キガリから車で約3時間の距離にあり、給水システムを建設するナショ・セクターは、山間部からチャンブエ湖岸の平地まで、起伏に富んだエリアにあります。

本プロジェクトでは、既存の給水システムの水源を整備したり、給水パイプラインを拡張したり、水くみ場や貯水槽を新たに建設したりすることで、ナショ・セクターの住民15,916人が清潔な水を利用できるようにします。既存の給水システムの水源は、合計4カ所あり、本プロジェクトで、すべて整備する予定です。この日は、山間の道路脇の斜面を下り、バナナ畑を抜けた先にある水源のひとつを視察しました。現在は水くみ場が設置されていますが、給水網の拡張に合わせて、さらに十分な水量が得られるよう、集水設備として改修します。

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水衛生公社スタッフとともに道路から水源に向かう
Image: WaterAid Japan
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水源のある斜面に立つ水衛生公社のスタッフ
Image: WaterAid Japan

給水パイプラインは、山間部にある水源から平地の村までの約30㎞拡張する予定です。そのパイプラインの間に、大小合わせて5基の貯水槽を建設し、高低差を利用した自然流下で水くみ場まで配水。また、新しい水くみ場を20カ所建設し、既存の6カ所を改修します。さらに、完成した給水システムを維持管理するしくみとして、水くみ場を設置する26の村で、住民が参加する水利用組合を結成します。水利用組合は、給水システムを定期的に確認し、不備や故障を発見した場合は、維持管理を担う民間業者に連絡する役割を担います。住民みずからがそうした点検や連絡ができるよう、研修も実施する予定です。

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既存の水くみ場
Image: WaterAid Japan

学校、ヘルスセンター、コミュニティの衛生環境の改善

本プロジェクトでは、キレへ郡とブゲセラ郡の2つのセクターの学校5校にトイレ棟を建設します。また、キレへ郡のヘルスセンターにトイレ棟と手洗い場を建設します。

トイレ棟は、これまでのプロジェクトと同様、手すりが付いたインクルーシブトイレ1基を含む8基の男女別のトイレを設置します。トイレを設置した学校では、生徒たちが参加する衛生クラブを立ち上げて、生徒たちがトイレの維持管理や手洗い等の衛生行動の促進に取り組むようサポートしていきます。今回の整備によって、5校の生徒10,436人が衛生的なトイレを使い、適切な手洗いを実践できるようになります。キレへ郡のヘルスセンターにも、インクルーシブトイレを含むトイレ8基と手洗い場を設置します。衛生環境が改善されることで、ヘルスセンターのスタッフとヘルスセンターを利用する住民43,200人のの感染予防に役立つことが期待されます。

さらにナショ・セクターの21の村で、住民5名からなるコミュニティ衛生クラブを立ち上げます。衛生クラブのメンバーは、ウォーターエイドが実施する研修を受けた後、コミュニティでトイレの設置と利用を促進したり、手洗い等の衛生行動やごみ削減・捨て方に関する意識向上の活動を主体的に行っていく予定です。また、キレへ郡全体での衛生習慣促進キャンペーンとして、地元のアーティストと一緒に歌や語りを通じて、衛生行動の改善と定着を呼びかけていきます。

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2023年に実施したプロジェクトにおける衛生習慣促進キャンペーンの様子
Image: WaterAid Rwanda