【活動レポート・ブログ】ルワンダ:日本NGO連携無償資金協力の助成で建設した給水システムの引渡し式開催

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Image: WaterAid Japan

2022年3月、ルワンダ共和国におけるプロジェクト「東部県キレヘ郡における水・衛生環境改善事業 」が、外務省の令和3年度日本NGO連携無償資金協力事業として採択されました。これによって、約16000人の人々に清潔な水を届ける給水システムと学校3校のトイレが1月末に完成。2月15日、キレヘ郡主催のもと、給水システムと学校のトイレの完成を祝い、またこの設備を郡政府に引き渡すセレモニーが開催され、ウォーターエイド・ルワンダのスタッフ、在ルワンダ日本国大使館、国際協力機構(JICA)ルワンダ事務所、ルワンダのインフラ省、水衛生公社(WASAC)等からの出席者とともに、ウォーターエイドジャパンから高橋・田川の2名も参加しました。

キレヘ郡視察_集合写真
セレモニー参加者の集合写真
Image: WaterAid Rwanda

 

東部県キレヘ郡の水・衛生の状況

ルワンダは、1990年代前半の内戦から復興を果たし、2010年以降、年平均7%以上の経済成長を維持するなど、著しい発展を遂げてきました。一方、農村部はこのような発展から取り残されがちで、都市部では、8割以上の人々が清潔な水を利用可能である一方、農村部で清潔な水を利用できるのは人口の56%です。

首都キガリから車で約3時間、山岳地帯に位置するキレヘ郡も、都市部からの距離や険しい地形などが原因で開発が遅れている地域の一つです。住民の多くが、不衛生な川の水に頼って生活しています。また、農村部では、3人に1人が適切なトイレを利用することができず、さらに多くの学校では、生徒数に対して、トイレの数が足りていませんでした。 

本プロジェクトでは、このような状況にある東部県キレヘ郡のキガラマセクター、ニャムガリセクターを対象に、22キロのパイプライン、貯水槽、7か所の水くみ場、3基の貯水槽などからなる自然流下式の給水システム、そして学校3校のトイレ棟を建設しました。また、給水システムが適切に維持管理されるよう、維持管理を担当する民間事業者、水利用者委員会、郡水衛生理事会等のトレーニングも実施。さらにコミュニティ衛生クラブを立ち上げてトレーニングを実施し、住民の衛生習慣改善にも取り組んでいます。

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完成した給水システムと学校のトイレ

2023年2月15日、朝7時に首都キガリにあるウォーターエイド・ルワンダ事務所を車で出発。「千の丘の国」と言われるほどの美しい丘の景色を眺めながら東部県キレヘ郡に向かいました。

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ルワンダの首都キガリの美しい風景
Image: WaterAid Japan

はじめに向かったのはキレヘ郡庁舎。ここで、在ルワンダ日本国大使館、国際協力機構ルワンダ事務所(JICA)、ルワンダのインフラ省、水衛生公社(WASAC)等の方々と合流し、キレヘ郡のブルーノ・ランギラ郡長と懇談しました。各メンバーから口々にあがったのは「パートナーシップ」という言葉。このプロジェクトを助成したのは日本政府、実施したのはウォーターエイドですが、キレヘ郡政府のリーダーシップ、コミュニティのオーナーシップ、さらには、キレヘ郡を拠点に活動する、水・衛生分野の経験豊富な民間企業であるアヤテケスターカンパニーが建設を担当したり、トレーニングにJICAが作成したマニュアルを活用したり、多くの組織・人々とのパートナーシップがあって実現したプロジェクトでした。

懇談の後、さっそくコミュニティへ移動。途中から舗装されていない坂道を走り、車ががくんがくんと揺れながら進んでいきます。そうして到着したのは、完成した貯水槽の横に設置された「イベント会場」。キレヘ郡が用意したスピーカーからは音楽が流れ、イベント参加者が座るパイプ椅子がテントの下に並べられていました。私たちが到着した頃には、コミュニティの人々も多く集まっていました。

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車が大きく揺れる坂道を登ってコミュニティに向かう道中
Image: WaterAid Japan
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イベント会場に設営されたテントと参加者たち
Image: WaterAid Rwanda


さっそくイベントを始める前に、完成した施設の見学です。まずは貯水槽。直径約5メートル、高さ3メートルで、50㎥貯水可能なタンクです。次に歩いて近くにある学校へ。ここはトイレ棟を建設した学校のひとつです。そこには、車いすでも利用可能なインクルーシブトイレを含む8基のきれいなトイレが完成していました。ちょうどその横には、古いトイレもあったのですが、そのトイレは暗く、臭いもありました。校長先生がやってきて、何度も「ありがとう」と言ってくれました。

貯水槽
本プロジェクトで建設された貯水槽
Image: WaterAid Japan
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本プロジェクトで建設されたトイレ棟
Image: WaterAid Japan

そのあと一行は、水くみ場に移動。柵で囲まれた水くみ場には、蛇口が2つ付いており、台の上にポリタンクを置いて水をくむことができます。この水くみ場の入り口にブルーのテープが張られており、キレヘ郡庁、在ルワンダ日本大使館、ウォーターエイド・ルワンダの現地代表、ウォーターエイドジャパン事務局長等が並んでテープカットしました。そして蛇口をひねると・・・・勢いよく水が流れ出しました!それをコミュニティの女性たちがさっそくくみにきてくれました。

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水くみ場でのテープカット
Image: WaterAid Rwanda

 

セレモニーで見た「水から始まる好循環」

施設を見学したあと、イベント会場に戻り、さっそくセレモニーが始まりました。出席者からの挨拶、そしてその合間にコミュニティの人々が素敵なダンスを披露してくれました。「以前は、丘を下ったところにあるアカゲラ川の水をくみに行っていた。水をくんでいる途中に川に落ちて、友人・知人が亡くなった」-これは、コミュニティの代表とスピーチしてれた女性の言葉です。不衛生な水によって体調を壊して命を落とすだけではなく、水くみそのものが命がけだったのです。

そしてもうひとつ、この女性は「この村に水が、トイレが来て、衛生習慣も理解しました。次は電気、そして雨期でも通行できるように道路が必要です」と話しました。たしかに、舗装されておらず、かつ山がちな地形のあの道では、雨が降ると通行はかなり難しいでしょう。そのことで病院に行ったり、市場に行ったり、生きるために必要なことを断念せざるをえないこともあったのかもしれません。

それに対してキレヘ郡長は、キレヘ郡政府が、道路を舗装する材料を提供し、住民がそれを使って工事作業をする、ということを提案。住民も合意しました。私たちウォーターエイドは、水・衛生のユニバーサルアクセスを達成するための重要な要素として、政府のリーダーシップとともに、住民が清潔な水を使えることは権利である、ということを理解し、その権利を要求することである、と考え、住民を対象にその権利を理解してもらうためのワークショップを開催することもあります。住民たちが、村で清潔な水とトイレを使えるようになったことで、自分たちで生活をよくしていくことができる、と考え、自分たちで郡政府に対して要望し、その要望が実現したシーンに立ち会い、「水からはじまる好循環」が目の前で起きていることをとてもうれしく、心強く思いました。

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歌や踊りで喜びを表現するセレモニー参加者とコミュニティの人々
Image: WaterAid Japan

今後、給水システムは郡が所有し、維持管理は政府が委託した民間事業者が担当。そして住民代表である「水利用者委員会」が、きちんと給水システムが維持管理されているかどうかをモニタリングしていくことになります。

このコミュニティであれば、もし給水システムに何かあったら、すぐに住民が声をあげてくれるだろう、そしてこれをきっかけに、道路や電気、さらに衛生状況も改善されていくだろう、とこのコミュニティがこれから変化していく様子が楽しみになった1日でした。

ウォーターエイドジャパン事務局長 高橋 郁