【活動レポート・ブログ】ルワンダ:東部県キレヘ郡ガハラ・セクターで、日本NGO連携無償資金協力の水・衛生プロジェクトの引渡し式開催
ウォーターエイドジャパンは、外務省の令和4年度日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて、ルワンダ共和国東部県キレヘ郡にあるガハラ・セクターにおいて、水・衛生環境改善プロジェクトを実施しました。2024年2月、ウォーターエイドジャパンの柴田と木藤が現地に入り、施設の完成の確認とともに、現地政府への引渡し式に参加しました。
キレへ郡は、首都キガリから車で3時間強の山岳地にあり、34万人が居住しています。給水設備の整備が遅れ、多くの住民が川や湧き水から水をくんでいます。ガハラ・セクター(セクターは、郡の下の行政区分)では、自宅で水を利用できる家庭は1%、適切なトイレを利用できるのは48%、給水設備がある学校は7%と、さらに深刻な状況です。
プロジェクトでは、2023年3月から2024年3月の1年間に、約19キロのパイプ網からなる給水システムの建設、17カ所の水くみ場の設置、学校3校でのトイレ整備と衛生クラブの設置、住民を対象としたトイレと手洗いの普及促進、給水システムの維持管理研修などを実施しました。給水システムの建設によって、8,621人に安全な水を供給し、学校3校でのトイレ設置により、5,507人の生徒と学校関係者の衛生環境を改善することを目指しました。
「私たちは水・衛生習慣を誇りにしていく」
引渡し式は、2月29日に開催されました。それに先立ち、在ルワンダ日本大使館、ウォーターエイドジャパン、ウォーターエイド・ルワンダ、水衛生公社、建設工事を担ったアヤテケスター社の関係者一同で、キレへ郡庁を訪問しました。庁舎の正面には、ルワンダ語で「私たちは水・衛生習慣を誇りにしていく」と書かれた横断幕が掲げられていました。ブルーノ・ランギラ郡長が一同を前に、プロジェクトによって多くの住民の生活環境が改善されると厚く謝辞を述べられました。日本からルワンダまで飛行機で丸1日を要しますが、そのような距離を越えて、直接に対面で言葉を交わすことの重みや温かみをまざまざと感じた瞬間でした。
通行の厳しい山間の村に給水する施設の完成
完成した施設を確認するため、貯水槽が建設されたチャスサ村に向かいました。チャスサ村には、郡庁から未舗装の土道を通って、緑の濃い山間部を奥へ奥へと入ります。前日までの雨で道はぬかるみ、滑りやすく、ゆっくりしか進めません。丸太を並べただけの木橋を渡る際には、思わず緊張します。アクセスの容易ではない山間部で給水施設が整備されてこなかった事情が理解できたように思いました。
貯水槽は、村の中心から少し離れた高台に位置し、眼下には木々の緑と畑、簡素な家が広がります。山間部での建設は、資材の積降ろしや掘削で人力が中心となる箇所も多く、難しい工事でしたが、無事故で完了しました。工事を行った現地の建設会社アヤテケスター社の担当者やウォーターエイド・ルワンダのプロジェクト・マネージャーに、難しい工事にもかかわらず、無事故、かつ遅れることなく素晴らしい施設が完成したことに感銘を受け、感謝の気持ちを伝えると、「よくぞ言ってくれた」とのこと。みんなで握手を交わしました。
プロジェクトでは12村の17カ所に水くみ場を設置しました。訪問したチャスサ村にも水くみ場が新しく設置され、この日、テープカットとともに、はじめてのその蛇口を開ける作業が行われました。蛇口をひねると勢いよく水が流れ、ポリタンクを満たしていきます。この水くみ場の完成によって、村の553人の人々は、重労働の水くみや不衛生な飲み水から解放され、いつでも安全で清潔な水を得ることができます。
トイレを建設したカバゲラ村の学校も訪問しました。生徒1,650人が通うカバゲラ校に、合計8基の男女別のトイレを設置しました。アクセスに配慮してスロープを設けたほか、8基のうち1基は、障害のある生徒など多様な生徒が使用できるインクルーシブトイレとして、車いすが入れる広いスペースを確保し、手すりも設置しました。日本の教育施設では、ごく当たり前に備わっているトイレですが、ここガハラ・セクターに限らず、多くの学校では、トイレの数も質も十分ではありません。トイレが不衛生、かつ足りなければ、特に女子生徒は月経中、学校を休まざるをえないという問題があります。安全かつ適切なトイレが利用できることによって、生徒たちは安心して通学し、授業に専念することができます。
水と衛生に対する力強いコミットメント
キレへ郡政府への引渡し式は、チャスサ村の広場で、約200人近くが参加して開催されました。在ルワンダ日本大使館やウォーターエイドの祝辞のほか、ユースグループによるダンス、衛生習慣を題材にした寸劇が披露されました。
式典に参列していて、はっとしたのは、首都から3時間以上離れた山間の村であっても、大勢の若者がいることです。冒頭で述べたように、キレへ郡の人口は34万人です。ウォーターエイドジャパンのある東京都墨田区が27万人ですので、その1.25倍です。プロジェクトの対象地であるガハラ・セクターには、4万人を超える住民が居住しています。それだけの規模の人々が住む土地でも、今も清潔な水と衛生が行き届いていない人々がいます。言うまでもなく、人間として尊厳ある生活に、水は欠かせません。人々の暮らしとともに、地域とその文化が豊かになる上でも、水は不可欠なものです。ユースグループの若々しいダンスを見ながら、地域社会の担い手である若い世代が誇りを持てることは、とても大事なことだと痛感しました。
そして、私たちは、今使っている有限な水を、将来の世代が不自由なく使えるようにしていかねばなりません。そのためには、森林を保護して水源を守ること、汚水やゴミを適切に処理して環境汚染を防ぐことなど、取り組まなければならないことがあります。式典の挨拶の中で、私はそのことに触れました。
給水システムの完成を祝って、参加者全員でダンスが行われました。皆で手を振り、ステップを踏み、声を出しながら、身体を動かします。ダンスが熱を帯び、感動も最高潮に達します。水のある喜びは、生きる喜びでもあると身をもって感じました。大事なことは皆で体に刻んで記憶する、これもこの地に住む人々の知恵だと思います。
式典の最後には、ブルーノ・ランギラ郡長が登壇され、今後は、完成した施設のすべてを、自分たちがしっかりと維持管理していくという力強い表明とともに、水・衛生環境の改善には、すべての人々のパートナーシップが重要であると強調されました。村の人々も皆、しんと聞き入ります。不思議なことに、郡長の挨拶で式典が終了したとたん、風が吹き、大粒の恵みの雨が降り始めました。
ウォーターエイド・ルワンダのプロジェクト・マネージャーによれば、ガハラ・セクターの人々は、今回のプロジェクトで日常的に清潔な水が得られ、それによって生活が変わるとともに、自分たちの行動も変わったと肌で感じており、日本政府、ウォーターエイドの協力に大変感謝しているとのことです。キレへ郡のプロジェクトでは、現地政府や現地企業、住民など、地域の人々が主体となって、地域の水・衛生の改善に取り組んできました。ウォーターエイドは、この事業がモデルとして、キレへ郡の他のセクターにも広がっていくよう、今後も関係者と協働していきます。
ウォーターエイドジャパン プログラム・コーディネーター 木藤