【活動レポート・ブログ】ウガンダ:給水管の材質変更で井戸の稼働率アップへ

Handpump mechanics getting ready to install UPVC plastic pipe in a handpump, Kisindizi Primary School, Masindi District, Uganda, July, 2019.
Image: WaterAid/ James Kiyimba

アフリカでは、各国政府や援助団体が井戸や給水設備の整備を進める中、設備の設置後、あまり時間がたたないうちに設備が使えなくなってしまうことが大きな課題となっています。その原因の一つが給水管のさびの問題です。ウォーターエイドはウガンダで、耐久性とコストのバランスの取れた新たな給水管の改善研究を進めています。

ウガンダ水・環境省の調査報告によると、ウガンダの農村部の給水設備の稼働率は85%にとどまっています(*1)。この稼働率を引き上げることができれば、清潔な水を使うことができる人は増加します。

現在、ウガンダで給水管として広く使われているのは、亜鉛メッキ鋼管。亜鉛メッキ鋼管は、材質が強靭な反面、施工も容易な特徴があり、そのため日本でもかつては広く使われていました。しかし、給水管の腐食やさびにより白濁や赤水が発生する問題があるため、日本での使用は減少し、1992年以降は上水(飲用)には使えないことになりました(*2)。

さびついてしまった亜鉛メッキ鋼管。キシンディジ小学校のハンドポンプで使われていた
さびついてしまった亜鉛メッキ鋼管。キシンディジ小学校のハンドポンプで使われていた
Image: WaterAid/ James Kiyimba

亜鉛メッキ鋼管の代わりに望ましいものの一つがステンレス鋼管ですが、これは非常に高価な上、重いため、ウガンダでの使用には購入にも維持・管理にも難しさがあります。

そこでウォーターエイド・ウガンダでは、日本などでも使われている硬質ポリ塩化ビニル(UPVC)のパイプ(塩ビ管)を代わりに使うことを想定し、改善研究を始めました。3メートルのステンレス鋼管の価格は約5,000円ですが、塩ビ管は約850円と大きな差があり、期待が寄せられています。調査はウガンダ中西部のマシンディ県内の6つのハンドポンプ(手押し井戸)を選び、塩ビ管に交換して1年間、実証調査を行います。結果が問題なければ、他の地域にも普及を図る方針です。

 

「朝は、黄色や茶色の混じった水が出ます」

約440人の児童が通うキシンディジ小学校には、児童や地域の住民が利用するハンドポンプがあります。このハンドポンプの管理者でもある、同校のムシングジ・マイケル副校長は、その水について、こう話します。

「朝は、黄色や茶色の混じった水が出ます。しばらくくみ上げ続けると、水はいつもの色に戻ります。設置以来、大規模な修理をしたことはなく、水の色が変わるのは、給水管のさびではないかと思っています」

学校では、色の着いた水は、教室やトイレの掃除に使っていました。住民たちが朝、水をくみに来て、子供たちが休憩時間に水を飲むころには水は透明になっていましたが、問題の解決は朗報です。今回、ウォーターエイドの改善研究の一環として、このハンドポンプの給水管も交換され、マイケル副校長は水質改善を期待しています。

給水管の交換の終わったハンドポンプを見つめるムシングジ・マイケル副校長(右)
給水管の交換の終わったハンドポンプを見つめるムシングジ・マイケル副校長(右)
Image: WaterAid/ James Kiyimba

さびず、値段も手ごろで、扱いやすい新素材に整備士も期待

ベビエシザ・ピーターさんは、マシンディ県のハンドポンプ整備士として働いています。担当する地域では「自分を知らない人などいない。友人も多い」とピーターさん。ハンドポンプの整備士として30年以上の経験を持つピーターさんは、次のように話します。

「ウガンダでは、ほとんどのハンドポンプが、腐食すると穴が開く亜鉛メッキ鋼管を使っています。井戸を使い続けるためには、給水管を定期的に交換しなければなりません。給水管がさびると、さびが水に混じって、変色します」

「塩ビ管は、さびす、値段も手ごろで、設置も容易」と話すベビエシザ・ピーターさん
「塩ビ管は、さびす、値段も手ごろで、設置も容易」と話すベビエシザ・ピーターさん
Image: WaterAid/ James Kiyimba

ピーターさんはこれまで、亜鉛メッキ鋼管を使った修理の経験しかありませんでしたが、ウォーターエイドの改善研究に参加することになったため、塩ビ管を使った修理技術も身に付けました。

「塩ビ管は、さびず、値段も手ごろで、設置するにも重くないので、よいと思います。摩耗した部分だけを交換すればいいので、修理も簡単です。水漏れを防ぐための設置方法も学びました」

 

費用とメンテナンスは無視できない課題

キシンディジ小学校ではハンドポンプの利用と維持のため、児童は学期ごとに約14円、地域の住民は年間に約140円の費用を負担しています。

ピーターさんは、住民からハンドポンプの修理の依頼を受けると、設置場所に出向き、問題を特定して、修理します。そして、出張費、作業費用、修理にかかった部品・材料費を請求します。しかし、「住民たちは、出張費と作業費用は払いたくないのです」とピーターさんは言います。ときには、先に修理をし、住民にお金ができたときに費用をもらうこともあります。

硬質プラスチックの給水管を設置する技術者たち。設置には注意が必要だ
硬質プラスチックの給水管を設置する技術者たち。設置には注意が必要だ
Image: WaterAid/ James Kiyimba

こうした背景がある中、比較的安価で、現地でも容易に調達することができる塩ビ管の活用、普及ができれば、水の課題の解決に前進となります。1年の期間が過ぎた後には、使用したパイプを引き上げて状況の確認なども行う予定です。

※この改善研究は、The Conrad N. Hilton Foundationの協力も得て実施しています。

(*1) The Uganda Ministry of Water and Environment Sector Performance Report 2017/18

(*2) 参考:「給水装置の材料」(「給水装置工事の手引書」、北九州市上下水道局、2020)など