【活動レポート・ブログ】カンボジア:ユースグループの活動で保健医療現場の衛生習慣を変える

Medical students from Battambang Regional Technical School for Medical Care pose for a picture at their exchange visit to a health centre.
Image: WaterAid/You Sokmeng

世界中に新型コロナウイルス感染症が広がる中、感染防止のための手洗いの力と水・衛生の大切さがあらためて注目されています。ウォーターエイドは以前から正しい衛生習慣の普及に取り組んできましたが、カンボジアでは、ユース(若者)グループの創造力とエネルギーを生かしたキャンペーンで成果を上げています。

保健医療従事者は、人々が最も困難な状況にあるときにそうした人々に直接向き合い、必要なケアを提供してくれる存在です。しかし、カンボジアの保健医療施設では、清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣が行き渡ってはいません。保健医療従事者が自分の手や周辺の機器、医療施設などを衛生的に保つことができなければ、母親や赤ちゃんの命も感染症の危険にさらされます。

ウォーターエイドは、清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣を通して、新生児と子供たちの健康と栄養の改善を目指す世界的なキャンペーン「ヘルシースタート」を続けてきました。カンボジアでは、若者たちの取り組みが、このキャンペーンを支えました。

 

手指衛生の徹底につながるソリューションを

保健医療従事者が手を衛生的な状態に保つことを「手指衛生」(hand hygiene)といいます。保健医療施設が衛生的な状態に保たれるためには、施設で働くすべての人々が手指衛生についても理解していることが重要です。手指衛生は保健医療の日常的な手順の一つですが、カンボジアでは実際にはきちんと実践されないこともあります。そして、行動や習慣を変えるのは、なかなか難しいのです。

カンボジアの保健医療従事者の行動変容を促し、手指衛生を強化するためにウォーターエイドが考えた方法が、ユースグループと連携して活動を起こすことでした。

 

2017年からユースグループとともに「ヘルシースタート」

 2017年2月に立ち上げた最初のキャンペーンでは、3組のユースグループを選定しました。それぞれのグループが保健医療従事者や医学生に働きかけ、母親と新生児のための保健医療施設の改善を目指す草の根の取り組みを始めました。

それぞれのグループは、より多くの保健医療従事者や医学生の行動変容につながるよう手法を工夫、保健医療センターでドキュメンタリーを撮影したり、影絵芝居を取り入れたりしました。プノンペンとバッタンバン州では複数のキャンペーンイベントを実施しました。彼らのキャンペーンは3カ月間でプノンペンとバッタンバンの4つの医科大学に在籍する約300人の研修医、看護師、助産師に届くものになり、ネット経由でさらに2,000人に届きました。

翌2018年のキャンペーンは、医学生をメッセンジャーに設定し、医療従事者と医学生の間で手指衛生の実践を推進しました。

プノンペンとカンポット州の医科大学から、別の3組のユースグループが加わり、マルチメディア・キャンペーンを展開しました。オリジナルの歌をつくり、短編のサイレント映画を制作。手指衛生に関するライブパフォーマンスと合わせて、5月5日の「手指衛生の日」に保健省で披露しました。プノンペンやその他の州の200人を超える医療従事者、医学生にメッセージが届きました。

さらにワークショップやキャンペーンを通じて、プノンペン、コンポンチャム、カンポットの医療関係の研修生約1000人にもメッセージを伝えることができました。

「手指衛生の日」に保健省で手指衛生の歌を披露する保健科学大学のグループ
「手指衛生の日」に保健省で手指衛生の歌を披露する保健科学大学のグループ
Image: WaterAid / Hoky He

ユースグループの力を活用したキャンペーンは2020年も継続する計画で、プノンペンの保健科学大学と協力し、同大学の国立保健技術者学校の看護・助産学生を対象とする方針が固まっていました。

 

長年の衛生習慣を変えていく

キャンペーンの重要な推進力となったのは、全国から参加したさまざまな立場の多くのユースです。地元のコミュニティで積極的に活動し、電話をかけ、ソーシャル・メディアで注目を集めるようにしました。ときには直接、家々のドアをたたき、すべての人が健康的な生活の始まりを手にするために水と衛生がいかに重要なのかを話しました。

こうしたエネルギーと創造力は、何ものにも代えられません。彼らはなぜ、それほどの情熱を注いで変化を生み出そうとするのでしょうか。あるグループは、その目的を次のように話してくれました。

「医学生が、清潔で衛生的な水と、出産との重要な関係について、知識と理解を得ること。ソーシャルメディアからアイデアと意見を集め、政府と協力して、清潔で衛生的な水の利用を促進することです」

カンボジアでも、新型コロナウイルスの感染が危惧されることから、ウォーターエイドは現在、感染防止のための手洗いの徹底などの呼びかけや、手洗い設備の設置などに力を入れています。これまでのキャンペーンの成果が、新型コロナウイルスの感染防止にもつながることが期待されます。

 

このレポートは、ウォーターエイド・カンボジアのホーキー・ヒー(キャンペーン・オフィサー)、ダラ・チェア(元ユース・エンゲージメント・キャンペーン・インターン)のレポートをウォーターエイドジャパンが編集したものです。オリジナルはこちら(英文)