【活動レポート・ブログ】mWaterを活用し、パプアニューギニアで水・衛生の情報マップづくり

WaterAid field work
Image: WaterAid/Saskia van Zanen

水とトイレが利用できる場所が不足している国では、行政機関がこの問題に取り組むときに、どのように優先事項を決めるのでしょう。パプアニューギニアでは、人口の63%以上が必要最低限の給水さえ受けられていません。一方、パプアニューギニアでは問題解決のための意思決定において政治と文化が特に大きな役割を果たします。特定の一族や地域とのコネ、あるいは陳情があったことなどを理由に特定の地域が優先させることは珍しくありません。

このような状況で必要なのはそのような慣習を断ち切るもの、例えば、信頼性の高いデータです。行政機関とその職員が各地域の格差について明確に把握しているなら、彼らは住民のために事実に基づいて計画を推進させようとよりよい意思決定を行い、データをうまく活用するでしょう。

ウォーターエイドは、オーストラリア国際開発庁の支援による5年間の「女性のための水(Water for Women)」プログラムの一環として、パプアニューギニア、ウェワク地区の自治体職員を対象に、管轄地域内の水・衛生設備に関する基礎データ収集を支援する研修を行っています。公共サービス事業の提供者が、信頼性の高いデータに基づいて整備を優先すべき地域などを的確に決定できるようになることが目的です。このデータ収集にはオンラインデータツール「mWater」を活用し、長期的には、ウェワク地区の約107,000人の生活の向上を図ります。

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Image: WaterAid/Saskia van Zanen

ウェワクで今回の取り組みを始める数週間前、ウォーターエイドの水・衛生設備モニタリング技術責任者のティム・デイビスは当時の状況をこう話していました。「現在のところデータはまったくありません」。

「自治体職員はウェワク地区の地図を広げてみても、どのコミュニティが給水・衛生設備を利用できて、どこのコミュニティが利用できないのかを正確に示すことができないのです」

今回の基礎データ作りによって自治体はウェワク地区を構成する366のコミュニティに関する水と衛生設備についてのデータを得るだけでなく、各コミュニティが直面する生活環境の問題をより正確に捉えられるようになります。「道路がある地域もあれば、ない地域もあります。ボートに乗り、それから長距離を歩かないと行けない地域もあります。また、電気が利用できたり、医療施設が利用できたりする地域もあれば、学校へは何日も歩いて行かなければならないような地域もあります」とデイビスは地域の格差について話します。「各コミュニティの抱える問題は大小さまざまですが、このデータが明らかにしてくれるでしょう」。

地区と、地区を構成するコミュニティの自治体職員を対象としたウォーターエイドの研修は、mWaterを使って行います。mWaterには、飲料水の主水源、水・衛生設備の利用が可能な住民の数、学校や医療施設までの距離などの情報を集積でき、各コミュニティの調査を効果的に進めることができます。調査で判明したデータは地図にひもづけられ、自治体とウォーターエイドはこれらの情報をもとに、政策やプロジェクト、優先する地域や内容などを決定できます。

mWaterの地図では、小さな水滴の形をしたアイコンは各コミュニティの位置を表し、水滴の色は公共サービスがどの程度利用できるかを示しています。ウェワク中に広がる赤色の水滴は、多くのコミュティが囲いすらない掘っただけの井戸に水源を頼っていることを示しています。一方、少数の青色や緑色の水滴は、家の中や庭などにある水道管から直接給水を受けていることを示しています。

mWater mapping

研修には自治体の職員ら40人が参加し、簡単な検査キットを使って大腸菌を検出する方法も学びます。技術を身につけた自治体職員がデータ収集を主導し、ゆくゆくは366の地方コミュニティ、90の学校、30の医療施設のすべてで調査が実施されるでしょう。

ただし、これは最初の一歩にすぎません。データが収集されたら、ウォーターエイドはウェワク地区の自治体と協力して自治体の最優先事項を定めた五か年計画を策定し、給水サービスの管理継続とそれを担う人材の育成を図ります。そして、ウェワク地区をモデル地区とし、他の地区にも同様の取り組みが広がることが期待されています。

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Image: WaterAid/Saskia van Zanen

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