企業による水・衛生の取り組みの強化へ調査レポートを公開中

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15 May 2019
in
Water
WaterAid/ Tom Greenwood

水と衛生の危機が最も深刻な開発途上国の中小企業や農場で、最大13億5,000万人が雇用されています。持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6、「2030年までにすべての人がすべての場所で水とトイレを利用できるようにする」の達成のためには、企業の取り組みも重要です。また、水・衛生の改善のために投資すると、それ以上の収益が期待できます。ウォーターエイドでは、国際的にビジネスを展開する企業の事例やさらに効果的な対策についてまとめたレポートを作成し、公開しています。

世界保健機関(WHO)の2012年の報告によれば、水と衛生に1ドル投資することで、生産性の向上によって平均4ドルの利益が生まれます。本人や家族が病気になって働けなくなったり、女性であれば月経のために出勤できなくなくなったりすることもあるのです。WHOはまた、サハラ以南のアフリカに住む人々に水と衛生設備を提供することによって生じる経済利益は、年間235億米ドル(約2兆5,000億円)に達するとも試算しています。

多くの多国籍企業は、従業員が水と衛生を利用できるよう配慮することのメリットを意識し始めています。

ウォーターエイドと、「持続可能な開発のための世界経済人会議」(WBCSD)、国連グローバル・コンパクトから生まれたCEOレベルの企業間同盟「CEOウォーター・マンデート」は2017年、HSBCウォータープログラムの支援を受けて、Water Witness Internationalに委託し、調査レポート「Corporate engagement on water supply, sanitation and hygiene」(水・衛生に関する企業の取り組み)をまとめました。調査は、コカ・コーラやGAP、ネスレなどの多国籍企業の協力も得て行われました。

ウォーターエイドの民間部門アドバイザー、ルース・ローマーは、このレポートのポイントについて、3つの点を指摘します。

第1は、水・衛生に関して先進的であると考えられている多国籍企業でさえ、職場で水やトイレを確保することに関して、望ましいレベルを満たす優れた取り組みの共有などが必要だということです。中でも注意が必要なのは、トイレが労働者に近い場所にあるかどうかは、農家や月経中の女性にとって、とくに重要です。

2つ目は、企業がサプライチェーン全体で、水・衛生に関する要素を含む行動規範(codes of conduct)などをまとめる必要性が確認されたことです。そして、それは、「労働者が水と衛生設備を利用できるようにしなければならない」というだけではなく、より効果的で具体的な指針が必要だということです。

「フェアトレード」や「ベター・コットン・イニシアティブ」(BCI)などの組織は、認証の基準や仕組みの中に水・衛生に関する要素を組み込むことも奨励されています。

望ましいレベルの水・衛生環境の定義を定め、既にある基準を強化し、より包括的な行動規範を実施することで、会議室でも工場でも農地でも、環境の改善を後押しできます。調査レポートは、企業がサプライチェーン全体で水・衛生改善に取り組む際に考慮すべき最善策も示しています。

3つ目は、企業が清潔な水・衛生設備を従業員に提供するメリットに関して、信頼性の高いデータの必要性が確認されたことです。企業はこうしたデータを、職場の水・トイレ・衛生設備を改善するための前例とすることができます。

ウォーターエイドジャパン事務局長の高橋郁は「海外に拠点を持つ企業はもちろん、海外との取引を行う企業も取引先の企業の水・衛生環境に関心を持ち、その改善を働き掛けることで状況は大きく変わり、生産性や履歴の向上にもつながります」と話しています。

民間部門アドバイザーのローマーはまた、企業が取り組む次のステップとして、以下のポイントを挙げています。

  1. 職場でWBCSD の水・衛生の基準に署名し、実施する。すべての従業員が、職場で水と衛生を利用できるようする。
  2. 国際労働機関(ILO)の「職場における水・衛生自己訓練ハンドブック」を従業員に提供し、水と衛生に関する従業員や会社の理解を広げ、深める。
  3. サプライヤー規約を更新する(サプライチェーンにおける最適な水・衛生供給基準のひな形を公開しています)。
  4. 企業の業務やプロジェクトにおける水・衛生の取り組みに関する事例を提供することによって、ビジネスにおける水・衛生の取り組みの強化に貢献する。
  5. 水・衛生の課題に取り組むために、さまざまな代理店、企業、開発パートナーと協力しながら、職場での水・衛生の状況を改善する取り組み(WASH4Work)について学ぶ。

調査レポート「Corporate engagement on water supply, sanitation and hygiene」(水・衛生に関する企業の取り組み)は、こちらからご覧いただけます(英文)

※このレポートは、ウォーターエイドのルース・ローマーによるレポートをもとに、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルのレポートはこちら(英文)