【支援の現場から】エチオピア:水・衛生改善とともに演劇や音楽を取り入れた衛生キャンペーンを展開

on
7 May 2020
Audience member Gishu Jafar, 28, taking part in a handwashing demonstration during a hygiene behavioural change campaign which combines theatre, music and demonstrations in the marketplace of  Jara, Bale, Oromia region, Ethiopia, March 2019.
WaterAid/ Genaye Eshetu

人口の93%が適切なトイレを使えず、92%が水と石けんを備えた手洗い設備を使えない深刻な状況にあるエチオピア。新型コロナウイルス感染症への対応でもウォーターエイドが力を入れている国の一つです。エチオピアの中でも清潔な水を使える人が少ないオロミア州バレ県のゴロルチャ郡で、ウォーターエイドは、2017年から3年間のプロジェクトとして、給水やトイレの状況改善とともに、正しい衛生習慣の普及を強く推進しました。その中では演劇・音楽などのパフォーマンスを取り入れたキャンペーンも展開しました。

バレ県は、標高が4,000メートルを超える場所もある山岳地域です。ゴロルチャ郡は、人口が約13万人。衛生への意識がないわけではないのですが、トイレの清掃、食べ物の衛生的な準備や貯蔵、水の貯蔵や処理などについての知識はあまり普及していませんでした。

ウォーターエイドは、オロミア州と協力し、H&M財団からの支援も受けて、持続可能な水・衛生システムの実現や正しい衛生習慣の普及を目指すプロジェクトを実施することになりました。このプロジェクトが直接貢献する人数は約3万人と想定されました。

水・衛生に関わるシステム全体の強化を図る

ゴロルチャ郡では、48%の世帯が清潔な水が使える設備を備えていましたが、機能していない設備が多いため、実際に清潔な水を使える世帯は19%にとどまっていました。水と石けんを使うことができる手洗い設備がない世帯が全体の75%でした。また、学校のうち、水が使えるのは全体の17%で、保健医療施設でも水が使える施設は全体の4分の1でした。

ウォーターエイドのプロジェクトが始まる前、ジャラ村に住むアスネケ・ハイルさんと妻のチギスト・テフェリさんの生活は過酷でした。アスネケさんは、穀物などの荷運びの仕事をしていますが、収入のほとんどは水の購入と家賃にあてられていました。巡回業者から、およそ1日分、20リットルの水を買う値段は、首都 アディスアベバの1カ月分の水道料金とほぼ変わらず、しかもポリタンク入りは衛生的ではなく、それを飲んでいるときはたびたび病気になりました。

敷地内に蛇口はありましたが、「そこから水を出るのを見たことがない」とアスネケさん。トイレもありましたが、屋根は低いために使いづらく、チギストさんは妊娠中、実家に戻って用を足すしかありませんでした。

敷地内に蛇口はあるが「水が出たことを見たことがない」と話していたアスネケさん(左)と妻のチギストさん。収入のほとんどが水の購入と家賃に消えると話していた=2017年
WaterAid/ Behailu Shiferaw
敷地内に蛇口はあるが「水が出たことを見たことがない」と話していたアスネケさん(左)と妻のチギストさん。収入のほとんどが水の購入と家賃に消えると話していた=2017年
囲いもなく、屋根も低いトイレ。妊娠中だったチギストさんは、用を足すときは実家に帰っていた=2017年
WaterAid/ Behailu Shiferaw
囲いもなく、屋根も低いトイレ。妊娠中だったチギストさんは、用を足すときは実家に帰っていた=2017年

こうした状況を改善し、長期にわたって効果が持続するように、ウォーターエイドが取り入れたのは、水・衛生に関わるシステム全体を強化することでした。これは、ウォーターエイドが、エチオピアのほか、ウガンダ、パキスタン、カンボジアでも実施している「SusWASH」(持続可能な水・衛生)という取り組みです。内容は、各国・地域の実情により違いがありますが、この地域では以下のようなことに取り組みました。

  • 政府主導のOne WASH National Plan(統一的な水・衛生計画、OWNP)の支援
  • 水・衛生分野の関係機関の調整、計画づくり、管理の改善
  • 新設された郡の水・衛生チームが機能するための助言
  • 水・衛生の設備とサービスの状態の評価 ・長期的なシステム維持の費用を含めた郡レベルの計画・予算づくりの強化
  • 水・衛生サービスを維持するために必要となる予算増額の働きかけ
  • 市民社会との協力によるコミュニティでの議論や市民の声の発信の強化

この結果、公平で、誰もが使うことができる水・衛生サービスの提供や、正しい衛生習慣の普及を盛り込んだモデルやアプローチができました。家庭、学校、保健医療施設それぞれを対象とした戦略も盛り込まれました。

戦略・計画に基づいて取り組みが進められ、太陽光発電も活用して地下深くから水をくみ上げる設備の新設や、新たな水源を既存の給水網への接続させることなど、水・衛生の状況の改善が進んでいます。また、コミュニティレベルの新たな水・衛生委員会も設立されています。

システム全体を強化する大切さについては、以下の動画もご覧ください。

トレーニングを受けた演劇人らがオリジナル劇で正しい習慣を伝える 正しい衛生習慣の普及について、プロジェクトでは、とくに以下の6つの点に焦点を当てました。

  • 必要なときに石けんで適切に手を洗う
  • 清潔なトイレの使用
  • 適切なキッチンの使用
  • 食品や調理器具の衛生的な準備と保管
  • 水の適切な管理と処理
  • ゴミの適切な処理

衛生に関する習慣に変化をもたらすためのキャンペーンを展開し、その中で、演劇や音楽と手洗いの実演を組み合わせたパフォーマンスを郡内3カ所の市場で実施。合わせて2,800人(推計)の住民が集まり、楽しみながら正しい衛生習慣を学びました。

パフォーマンスを見せた10人のメンバーは、事前に、アートを通じて衛生習慣を変えることをテーマにした1週間のワークショップに参加しました。

衛生をテーマにしたパフォーマンスを演じるアユーブさん
WaterAid/ Genaye Eshetu
衛生をテーマにしたパフォーマンスを演じるアユーブさん

アートクラブのメンバーで、短編劇の主役や脚本を担当したアユーブ・ウメル・ムハンマドさんは次のように話します。

「ワークショップでは、これまで知らなかった多くのことを学びました。特に衛生に関する行動を変えるためのメッセージをどのように生み出すかを学びました」

また、個人的にも学びがあったといいます。

「たとえば、食事のとき、石けんで手を洗うことが多いですが、以前はそうではなかったことに気づきました。また、コロ(大麦から作られるエチオピアのスナック)などを食べるとき、手を洗うことはあまりないことに気づきました」

アユーブさんが関わった短編劇は3つ。そのうちの1つは、衛生について認識している家族とそうでない家族が登場します。「私は衛生について気にしない、こっけいな父親を演じました。その役は、食べる前やトイレの後でも手を洗わないなど、地域社会で一般的な非衛生的な行動を示しています。その結果、妻は病気になり、娘が家族に水や衛生の大切さを伝えます。そして最後に、家族は非衛生的な行動を変えるのです」。

他の劇では、ゴミを捨て続けることで近所とトラブルが生まれる話や、路上での放尿をめぐって繰り広げられる会話が盛り込まれました。これらの劇はすべて、地元のオロミファ語で演じられ、ジャラ村では1,500人が集まりました。

パフォーマンスの一場面
WaterAid/ Genaye Eshetu
パフォーマンスの一場面

演劇や音楽の効果について、アユーブさんは次のように話します。

「衛生習慣を変えるためには、演劇などの創造的な手段を採用することが非常に重要です。人々は話しを聞くだけでなく、目で見て理解することもできます。映像は心に残り、行動につながる傾向があります。演劇や音楽を使うと、人々は目で見て、耳を傾け、笑ったり楽しんだりして、その後で衛生的な行動をとるようになります」

水・衛生の設備、予算、それに新型コロナウイルス感染症への対応など、多くの制約はありますが、ウォーターエイドは今後も、現地の文化や習慣を理解しながら、水・衛生の改善を進めていきます。