【活動レポート・ブログ】コロンビア:ラ・グアヒラ県 の取り残されがちな人々に、清潔な水・衛生を届けるための革新的なアプローチ

Image: WaterAid/ Keoma Zec

南アメリカ大陸北西部に位置するコロンビア。その北部、乾燥した砂漠地帯の半島に位置するラ・グアヒラ県では、農村部の人口の16%しか清潔な水を利用できず、4%しか基本的なトイレ(他の世帯と共用ではない改善されたトイレ)を利用できません。

ウォーターエイドは、2016年よりコロンビア ラ・グアヒラ県で活動を開始しました。402のコミュニティで給水システムの建設や修理、トイレや手洗い設備の設置、それらの維持管理や衛生習慣を促進するためのトレーニングを実施し、これまで62,706人に清潔な水やトイレを届けてきました。また、9,000人以上に衛生行動を呼びかけたほか、新型コロナウイルス感染症が拡大した時期には、30,000人以上を対象に感染症拡大を防止するための衛生行動促進キャンペーンを実施しました。ウォーターエイドは、これらの活動を現地政府や他組織と連携して実施することで、より広範で持続可能な水・衛生サービスの提供を実現しています。現地政府や他組織との連携は、水・衛生に関する啓発活動や政策提言の効果を高め、国レベルでの協力関係を強めていく可能性を秘めています。

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水を得るために川岸で穴を掘るしかない親子

現在実施中のプロジェクト

コロンビア政府の住宅・都市・国土省は、ラ・グラヒラ県の農村部に散在するコミュニティで、給水システムや衛生設備を普及させることを目指しています。ウォーターエイドは、米州開発銀行(IADB)とパートナーシップを組んで実施している2つのプロジェクトを通じて、この取り組みを支援しています。

1. 地域に最も適した水・衛生設備を「モデル」として設置するプロジェクト

ウォーターエイドはこのプロジェクトで、ラ・グラヒラ県の農村部のなかでも取り残されがちな、住民が200人以下のコミュニティに対象を絞り、地域の特性に合った給水システムや衛生設備の設置に取り組んでいます。ラ・グアヒラ県ウリビア市では、試験的に水・衛生サービスを導入・提供し、それを「モデル」として示すことで、政府や住民たちが同様の設備を他地域にも広めていくよう働きかけています。

2. 持続可能な給水システム構築のための能力強化プロジェクト

このプロジェクトでは、ウォーターエイドはラ・グアヒラ県ディブラ市において、水道システムの改善や浄水施設の導入を行うほか、設備の維持管理を行い給水サービスを持続可能なものにするため、研修などを通じた能力強化支援を行っています。

 

革新的なアプローチ

ウォーターエイドは、水・衛生設備の設置や修繕に加えて、コミュニティの人々の衛生行動を促進したり水・衛生設備の持続可能性を高めたりするための、革新的なアプローチも展開しています。

1. 6歳から16歳の子供たちを対象とした教材 “水・衛生への道”

ウォーターエイドは、ラ・グラヒラ県のなかでも取り残されがちな少数民族であるワユ族の文化に焦点を当て、学校における水・トイレ・衛生習慣の教育のための教材を開発しました。この教材は、入門ガイドと3つの教材から成り立つ「水・衛生への道」シリーズとして展開され、人形やトランプなどの小道具も付属しています。各教材には、6歳から16歳の子供を対象に手洗いなどの衛生習慣の定着を促すための6~8つのアクティビティが掲載されているほか、それらのアクティビティをより小さな子供向けのアクティビティに適応させる方法も記載されています。水・衛生をテーマに、多様なキャラクターとともにワユ文化を象徴する要素を教材に取り入れることで、ラ・グアヒラ県に存在するさまざまなコミュニティの文化を紹介しながらも、ワユ族の文化を広め存在感を高めることを目指しています。ウォーターエイドは、ラ・グアヒラ県の一部の学校で、教員たちと協力し、これらの教材をカリキュラムに組み込んでいます。

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ラ・グラヒラ県の学校における授業の様子

2. サッカーと水・衛生の融合

ウォーターエイドは、コロンビア・セレソン財団(FSC)と連携し、水・衛生教育を促進するための仕組みとして、ウォーターエイドが持つコミュニティや学校・保育園における水・衛生教育の知見と、コロンビア・セレソン財団が社会変革ツールとしてサッカーを活用してきた経験を、組み合わせて活用しています。ウォーターエイドはこの協働により、水、トイレ、衛生習慣、月経衛生をテーマに、サッカーのテクニックを用いたカリキュラムを開発し、現在ラ・グアヒラ県の7つのコミュニティで運用しています。また、このカリキュラムは指導者を養成するためのツールとしても機能するように設計されており、ウォーターエイドは、今後、このカリキュラムが他のコミュニティにも広がっていくよう働きかけています。

3. アートと水・衛生の融合

給水設備やトイレ、手洗い場の利用を促し、少数民族であるワユ族の文化を紹介するため、ウォーターエイドは、ワユ族の伝統やシンボルを水・衛生設備に描くなど、アートをインフラ設計に取り入れています。その結果、水・衛生設備に関心を持った人々が、これらの施設を利用するようになり、ひいては手洗いなどの衛生習慣が促進されたことで、人々の健康状態が改善しています。

a toilet block painted in artwork
アートが施されたトイレ棟
Image: WaterAid