【支援の現場から】タンザニア:水料金のプリペイド式電子決済や民間との連携で給水設備を改善

on
28 August 2020
in
Water
Lessons_from_Sangara_Village_Tanzania
Docta Ulimwengu

農村部の給水サービスに関して、切り離すことのできない大きな課題が2つあります。設備の持続可能であることと資金の確保です。ウォーターエイドは、タンザニア北部のマニャラ州で自治体やパートナー団体と協力し、新技術や運営モデル、資金調達の手法をパイロット的に導入し、この2つの課題の解決を図りました。

タンザニアの農村地域では、水を利用できる人の割合が約65%にとどまっています。水・灌漑(かんがい)省による「水セクター開発プログラム(WSDP II)」は、2021年までにこの割合を85%にすることを目標にしています。達成期限までに残された期間はわずか、さらに農村地域の給水サービスは課題を抱えており、目標達成のペースが鈍化している状況でした。

設備の持続可能性と資金という大きな課題
水・灌漑省のデータによると、農村地域の給水設備の約35%は稼働していません。したがって、資金は給水設備システムを拡大するためではなく、修理に充てられます。また、給水設備が使用できない間、住民たちは、数キロ離れた場所にある、かつ安全ではない水に頼らざるを得なくなります。そして、WSDP IIが掲げる目標を達成するためのもう一つの課題は資金です。給水の改善に向けて資金が大幅に不足していました。

新技術や新たな運営モデル、革新的な資金調達手法を導入
こうした課題を解決するため、ウォーターエイドは、新たな技術や運営モデル、革新的な資金調達手法の構築に取り組みました。マニャラ州ババティ県のサンガラ村でプロジェクトを実施するため、2018年から、給水設備のプリペイド式電子決済システムを運用している企業「eWATERpay」や、マイクロファイナンス機関「Unit Trust of Tanzania Microfinance Institution」(UTT-MFI)、NGOハビタット・フォー・ヒューマニティ、ババティ県議会と連携。

eWATERpayが運営するプリペイド式電子決済を導入し、給水設備の利用者から簡単に水利用料金を徴収できるしくみを構築したほか、、太陽光発電によるポンプシステム、マイクロファイナンス機関による村への資金貸付などの革新的な取り組みを実施し、より多くの人々が衛生的な水を使用できる環境づくりを目指しました。

community-member-asha-kimoro-uses-her-ewater-token-to-collect-water-from-a-new-distribution-point-which-is-part-of-the-wateraid-project-sangara-village-tanzania
Docta Ulimwengu
タンザニア・サンガラ村のアシャ・キモロさんはウォーターエイドなどが整備した給水施設で水をくみ、eWATERpayの決済システムで利用料を払う

2,000人で使用していた6つの手押しポンプ式の井戸
プロジェクトが始まるまで、サンガラ村で清潔な水が使える人の割合は全体の20%未満で、タンザニア平均の85%を大きく下回っていました。約2,000人々が、ウォーターエイドが15年以上前に設置した6つの手押しポンプ式の浅井戸を使用していました。住民たちは、広くて起伏のある村を抜け、長い道のりを歩いて水をくみにも行っていました。5キロも歩く住民もいましたが、井戸にたどり着いても、そこにも長い行列が待ち受けていました。水をくんで帰ってくるだけで3時間かかることもあり、農作業や家の仕事をするための時間はほとんど残されていませんでした。住民たちはこの井戸の水を無料で使っていたため、井戸をメンテナンスするための資金はほとんどなく、水くみ場を増やすための資金もありませんでした。

太陽光発電利用のポンプ・水利用料の電子決済・マイクロファイナンスの貸付
今回のプロジェクトでウォーターエイドは、深さ120メートルの井戸を掘削。掘削井戸の水は太陽光発電を利用したポンプでくみ上げ、高所に設置した容量10万リットルのタンクにためるようにしました。太陽光発電を利用したシステムはディーゼル式のポンプよりメンテナンスの手間もかからず、より長期間、使用し続けることができ、費用対効果が高くなります。タンクにためられた水は、重力を利用して村内に新たに設置した6カ所の給水設備へ送られます。

給水設備ではeWATERpayのプリペイド式電子決済システムが採用されており、住民たちは水20リットルに対し、約1.38円を支払います。住民が支払った水の使用料はコミュニティの給水組織 (Community Owned Water Supply Organisation)が管理するオンラインの銀行口座に振り込まれます。

こうした設備とシステムを整備するための資金調達手法も革新的なものでした。本プロジェクトで採用した給水設備・システムの導入には1,000万円近い費用が必要であったため、住民たちが検討し、費用の50%を返済不要の助成金で、そして残りの50%をUTT-MFIからローンで資金調達し、給水設備・システムの設置を実現しました。さらに今回の資金調達・運用モデルでは、水の利用料を集めることによって得られた収益をコミュニティに再投資し、コミュニティ全域に給水サービスが行き届くまで継続するという方式(リボルビングファンド)を採用しています。ウォーターエイドは、UTT-MFIに対し、給水サービスへの投資はビジネスの機会ともなると働きかけ、その結果、UTT-MFIはプロジェクトに賛同し、参加することとなりました。

コミュニティの関与で「水は無料」の意識が変わった
水の供給状態が改善されることで、住民たちの生活が明らかに改善されました。そして、水の利用料の支払いやローンに対する姿勢や考え方に変化が表れました。これはプロジェクトの重要な成果です。

水の利用料の支払いについて、住民たちは当初、否定的でした。しかし、なぜ利用料を導入する必要があるのか、集まったお金をどのように使用するのか、理解が深まるにつれ、住民たちの考えは徐々に変わっていきました。村の代表者たちは住民たちと何度も話し合い、誰でも負担可能な料金に決めました。

さまざまな分野の企業・団体とパートナーシップを組むことで、持続可能性に優れた給水サービスのモデルを農村地域で導入することもできました。こうしたサービスの提供にあたって、民間セクターによる行政のサポートが大きな鍵となることも示されました。住民がしっかり関与することで、住民たちも有料の給水システムに賛同し、料金徴収により、持続可能性を確保し、水の供給エリアの拡大を図れることも証明されました。

プロジェクトでは、ウォーターエイドが以前設置した、無料で水をくむことのできた給水施設を新たなシステムに接続し、給水設備にはプリペイド式決済システムを導入する計画です。これにより、給水設備のメンテナンスと増設に充てる費用を増やすことができます。

ウォーターエイドは今後もババティ県議会と協力し、他の資金調達方法も検討しながら、給水サービスが届いていない地域の改善も進めていきます。

 


このレポートは、ウォーターエイド・タンザニアのコミュニケーション・戦略マネージャーのプリヤ・シッピーとポリシー・マネージャーのセベリン・アルーテ、ウォーターエイド・イギリスのコミュニケーション・ボランティアのエマ・ウィリアムズによるレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。

オリジナル(英文)はこちら https://washmatters.wateraid.org/blog/involving-the-private-sector-in-rural-water-services-lessons-from-sangara-village-tanzania