【活動レポート・ブログ】ダボス会議を受けて:気候変動の危機は水・衛生の危機

on
19 February 2020
WaterAid/ DRIK/ Habibul Haque

今年の「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会2020)の雰囲気は、イギリスのウェールズ公(チャールズ皇太子)が基調講演で宣言したように持続可能性を意識することへの移行を感じさせるものでした。しかし、ウォーターエイド・イギリスのCEO、ティム・ウェインライトは、「水・衛生セクターは気候変動の課題にもっと貢献できる」「ビジネスリーダーや政治家は、その決断によって、持続可能な未来づくりの機会を作ることができるのでは」と指摘します。ダボス会議を受けたウェインライトのメッセージを紹介します。

 * * *

今年のダボス会議で多くの出席者が話題にしたテーマは、「気候変動」でした。メディアではスウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥンバーグさんとアメリカのドナルド・トランプ大統領との「冷戦」がよく取り上げられましたが、参加者の間では、はるかに大きなコンセンサスがありました。会議は、環境をはじめ、企業が果たすべき責任について新たな宣言をまとめて閉幕しました。

気候変動に対する緊急の行動を求める人々の中に、ウォーターエイドの会長であるウェールズ公も含まれていました。ウェールズ公が前回、ダボス会議に出席してから30年以上、環境に関する最初のスピーチをしてから50年がたっています。ウェールズ公のメッセージは厳しく、挑戦的なものでした。それは、このようなものでした。

「気候変動への対応は緊急を要するものです。それは人々と地球のための新たな取り決めであり、現在の経済のあり方を見直すものに、ほかなりません」

気候変動が経済のあらゆる部分に影響を与えることから、気候変動に関する議論は徐々に、どれほどの規模の行動が必要なのかに移りつつあります。世界経済フォーラムは、世界で起こり得る危機と起きた場合の影響が大きな危機をランク付けしていますが、水の危機は2012年以降、毎年、その5位以内に位置づけられています。

今後10年間で起こり得る危機(出典:世界経済フォーラム報告2020)
World Economic Forum
今後10年間で起こり得る危機(出典:世界経済フォーラム報告2020)

気候危機は水危機の深刻さを何倍にもする

フォーラムを通して、私はずっと1つのことを考えていました。それは「世界で最も貧しい状況にある人々にとって、気候変動による危機は水の危機でもある」ということです。気候変動はビジネスや経済に長期的な影響を与えます。しかし、気候変動はすでに、気候変動の原因を作ってはいない人々の生活に深刻な影響を与えています。これは、生存と尊厳、そして正義の問題だと言えます。

洪水や嵐、干ばつは、人々が清潔な水を得られるかどうか、どうやって清潔な水を得られるかに影響を与えます。これらの災害の被害は、より頻繁かつ極端になりつつあり、気候変動の傾向が続く限り、さらに深刻になると予測されています。これは現在、水へのアクセスが不安定な世界の何十億もの人々の状況を悪化させるでしょう。

気候変動は、水・衛生に関する既存の障壁を何倍にもするものとして機能し、さらに過去の取り組みを水泡に帰してしまいます。

一方で、変化する気象パターンや予測のつかない降雨、塩水の侵入、病気、水・衛生への影響を検証することによって、より効果的な対策を講じられるようになるでしょう。

もし、水の供給源が浅い帯水層で、そこに海水が侵入してきたら、もはやその水は飲用には使えません。しかし、給水システムの立案者がこの脅威を考えたら、例えばより深い帯水層を利用することができるでしょう。そうすれば住民たちは、引き続きその地域に住み続けることができます。トイレや衛生システムが洪水に耐えるようにつくられていれば、浸水があってもコミュニティ全体が人間の廃せつ物で汚染されるようなことにはならないでしょう。

 

水・衛生セクターとして気候変動適応に貢献

持続可能な水供給システムは、貧困削減や、産業、経済の発展につながります。公的部門、民間部門とも、そのための投資やイノベーションをもっと増やして良いと思います。ビジネスリーダーや政治家がそのような決断をすれば、持続可能な未来を作り出す機会が生まれます。 水・衛生セクターには、緊急に求められるグリーンインフラ、サービス、雇用の提供を通じて、気候変動がもたらす最悪の影響を緩和する適応策を提示できる可能性があります。それにより、気候変動への適応という課題に貢献することができるでしょう。

パキスタン気候変動省のハッサン・ナジル・ジャミイ長官(右)と議論するティム・ウェインライト
WaterAid/ Sibtain Haider
パキスタン気候変動省のハッサン・ナジル・ジャミイ長官(右)と議論するティム・ウェインライト

水・衛生は持続可能な未来の中核

昨年私は、残念な思いを感じながら、ダボスを後にしました。気候変動がすでに世界の水と衛生の状況に深刻な影響を与えていること、そして教育や健康、生産力、開発に対する壊滅的な影響を与えていることについて、理解や議論が少ないと感じたからです。

今年は、私たちが直面している課題について理解が非常に深まっていると感じることができました。そして課題に対し、緊急に、積極的に取り組まなくてはならないという意志を感じることができました。企業は、関心を表明するだけではなく、解決策を見出そうとしていました。

そうしたこともあってウォーターエイドは2020年、ウェールズ公とも緊密に連携しながら活動していきます。

3月にはイギリス・ロンドンで、公共セクター、民間セクター、援助団体が参加するハイレベルの会合を開催します。会合では、気候変動との闘いの一環として水・衛生の問題を位置付け、持続可能な未来をすべての人々に約束するための解決策を探ります。

6月には、ルワンダのキガリでイギリス連邦首脳会議が開かれ、11月にはイギリス・グラスゴーで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開催されます。年間を通じてウォーターエイド全体で取り組みを継続し、さまざまな場面で気候変動との闘いの一環に水・衛生の問題が位置付けられるように理解を求めていく予定です。

ウォーターエイドが、今後10年間の世界の方向性を考えることに貢献し、最も貧しく、最も疎外された人々にとって、世界がより公平なものとなることを願っています。

 

このレポートは、ウォーターエイド・イギリスのティム・ウェインライトCEOがダボス会議を受けて発表したレポートを、ウォーターエイドジャパンが翻訳・編集したものです。オリジナル(英文)はこちら