【活動レポート・ブログ】同時にトイレを:カンボジアの農村コミュニティにおける生活の質の向上と野外排泄との闘い

thee people stand next to a river
Image: WaterAid/ Pov Panha

カンボジアは30年間、国全体で衛生的なトイレの利用を広める取り組みで目覚ましい成果をあげてきた一方、都市部以外ではまだ課題が残っています。現在、すべての農村部で野外排泄ゼロを実現するために、官民の協力による取り組みを進めています。

カンボジアの多くの農村では、深夜にトイレに行くことは、電気のスイッチを入れて廊下をふらふらと歩く、といったように私たちがやっているほど容易なことではありません。都市部以外では、トイレのない生活は不便であり、多くの人々が困難に直面しています。

トロ村に住むペク・スィーウォンさん(75歳)は、「以前は、あの壁の向こう側で排泄し、それを埋めて隠さなければなりませんでした。私は目が見えないので、他の人よりも大変でした。今はトイレがあるので、私や家族はとても生活しやすくなりました」と話しました。

全国では何百万人もの人々が適切なトイレ施設を利用できない生活しており、ここ数十年で国が成し遂げた経済的・制度的な発展に影を落とし、世界保健機関が 「病気と貧困の悪循環」と呼ぶ状況に置かれています。しかし、農村部での野外排泄ゼロ達成に向けた新たな取り組みが長い時間をかけて進歩を遂げ、首都圏以外の人々の生活の質も向上しています。

ウォーターエイドは、農村部の野外排せつゼロを実現するため、地方政府や他のNGOと連携。カンボジアの水・衛生の状況を改善するための「しくみ」を強化すること、そして適切な衛生習慣の重要性についてコミュニティの意識を高め、住民によるトイレ建設を促進することーこの2点に取り組んでいます。

ウォーターエイドが、水・衛生の「しくみ」強化の一環として力を入れているのが、地方政府の能力強化、ならびに州、郡、コミュニティレベルの水・衛生関係者間の協力体制の構築です。
ウォーターエイドは、組織の課題を特定し、地域社会のニーズに対応するために必要な技術的トレーニングを現地のリーダーに提供することができました。

ウォーターエイドの水・衛生システム強化プログラムのマネージャーであるソカ・モックは話します。「ウォーターエイドは、自分たちを『水・衛生セクターを組織化したり調整したりする役割』を担うと位置づけており、組織間の調整で大きな役割を果たしています。一方、私たちは、地方政府が住民に対して説明責任を果たす方法を改善したいとも考えています。そこで、住民が自分たちの水・衛生に関する課題や懸念を、政府や水・衛生サービス事業者に伝えることができるようにする活動も進めています。」

WaterAid_ Pov Panha
Image: WaterAid/ Pov Panha

例えば、住民が水・衛生に関する課題や懸念などを伝える場として、村の病院や寺院、学校、コミュニティの代表者が参加する「計画立案セッション」を開催。これについて、カンポンプーヌム村の事務官であるソカ・ラートさんは、参加者たちが、その村の水・衛生の状況に関する懸念や、水・衛生戦略に対する提案を政府担当者者に伝える機会になっていることを実感したと言います。「こういったミーティングに(病院、学校などの代表者や住民など)郡の多様な人々が参加するのは大切なことです。なぜなら、実際に問題に直面しているのは彼ら・彼女たちであり、現実を見ているからです。郡政府が郡のすべてを見ることはできないかもしれませんが、住民たちは何が必要であるかを知っているのです」

住民と地方政府が対話する機会をつくるすることは、水・衛生サービスを改善し、野外排せつゼロを達成するために不可欠です。一方、政府は、戦略を立てる前に現場の状況を詳細に把握しておくことも重要です。
「ウォーターエイドは、各コミュニティのなかに入って現地訪問を行っており、それによってどのようなプロジェクトを実施すべきか検討します。このような現地訪問は、調査や状況分析のために行っているのです。」カンダル・ストゥエン郡知事のサロウン・ウーチさんは話しました。

トロ村の住民である61歳のバンナ・ウーチさんは、各家庭が適切なトイレを利用しているかを調べるための戸別訪問調査の実施や、トロ村の野外排せつゼロの達成状況を示す詳細な地図の作成を担当しています。彼女のチームは、この地域の野外排泄ゼロ達成に向けた政府の取り組みに不可欠なデータを構築する上で役立っています。また、彼女にとっても単発の活動よりも深い達成感を得ることができる活動となっています。
「私は環境保護主義者なので、野外排せつゼロプロジェクトに貢献することは重要なことだと思います。以前は多くの人がトイレを所有しておらず、外の茂みで排せつしていました。今、こうして地域の人たちの役に立ててうれしいです」 とバンナ・ウーチさんは話しました。

カンボジアの各家庭の衛生環境を改善するためには、まだまだ多くの課題があります。今のところ、カンボジア全土の203郡のうち、野外排泄ゼロである、と宣言できるのは13郡のみです。一方、2019年から2020年の間だけでも、野外排泄ゼロの割合は全国で8%以上増加しており、データ収集、計画立案、組織間の協力の促進というウォーターエイドの戦略は、この取り組みに有効であることが証明されたといえるかもしれません。

ペク・スィーウォンさんは、こうした取り組みが生活を変え、農村地域がカンボジアの発展を共有し、同時にトイレを使用できる喜びに繋がっていると話しました。
「私たちは、村で一番最後にトイレを手に入れた家です。トイレがあることで、適切な生活環境を手に入れることができました。トイレが増えれば増えるほど、地域や人々のためになります。」