【活動レポート・ブログ】パキスタン:洪水で汚染された不衛生な水を飲むしかなく、下痢などの感染症が蔓延するリスク高まる

ウォーターエイドの活動国のひとつであるパキスタンでは、6月中旬から続く豪雨によって各地で洪水が発生し、多くの市民が命を落とし、甚大な被害に見舞われています。国連人道問題調整事務所(OCHA)の発表(9月8日時点)によると、この豪雨と洪水により、パキスタンでは3,300万人が被災。496人の子供を含む1400人以上の住民が犠牲となりました。被害を受けた家屋は117万棟、倒壊した家屋は56万6千棟近くにのぼります。特にシンド州の被害が大きく、被災・倒壊した家屋の約88%(152万棟以上)は、シンド州にあると見られています。
このようななか、被災した住民は、洪水で汚染された不衛生な水を飲むしかなく、また、安全で清潔なトイレを利用すること、手洗い等の衛生習慣を実践することも困難であるため、下痢や赤痢などの感染症が蔓延する深刻なリスクに直面しています。
ウォーターエイド・パキスタンの現地代表アリフ・ジャバー・カーンは、同国の洪水は長期化し、かつ以前に比べて激化していると話します。また、被害が深刻なシンド州を訪れ、次のように報告しました。
「現在パキスタンでは、洪水で汚染された水源の水を飲まざるをえないため、健康危機に直面しており、すでに下痢や皮膚病などの病気が数多く発生しています。マラリアの感染者数も急増しており、ある県の保健当局によると、患者数が多すぎて、治療どころか検査をすることさえできなくなっているとのことです。」
「私が見た仮設トイレはほとんど覆われておらず、女性が月経に対応するために必要なプライバシーが確保されていません。すべてを(自宅に)置いたまま避難したため、不衛生な布を生理用品として使わざるをえない状況です。」
ウォーターエイドは、これまで活動してきた地域が大きく被害を受けていること、また、被災した人々の健康と命を守るために、水・衛生が不可欠であることから、南部のシンド州バディン県、中部のパンジャブ州ラジャンプル県、北部のハイバル・パフトゥンハー州スワート県において緊急支援を展開しています。各地での9月12日までの活動状況は以下の通りです。
シンド州バディン県
- 避難キャンプ等に設置を予定している緊急用トイレ85基のうち、62基の設置を完了しました。
- 避難キャンプ等で29回の衛生行動促進講習会を実施し、合計4000人が参加しました。
- 6966人を対象に、衛生キット1108セットを配布しました。
- 冠水している地域の水位を低下させるために、3か所で排水作業を実施しました。
- 現地パートナーが7か所で水の浄化剤を配布しました。
- 排水のニーズが高く、特に保健医療施設の排水に優先的に取り組む必要があります。
ハイバル・パフトゥンハー州スワート県
- 合計55回の衛生行動促進のための講習会を実施し、1273人が参加しました。
- 921世帯を衛生キットの配布対象として登録しました。
- 衛生啓発活動の広報物を作成しました。
- 305世帯を対象に、衛生キット、ならびに水を運んだり保存したりするためのポリタンクを配布しました。
- 水・衛生インフラ(給水設備やトイレなど)の修復が必要な学校20校について、政府関係者とミーティングを行いました。
パンジャブ州ラジャンプル県
- 16回の衛生指導を実施し、1058人が参加しました。
- 仮設トイレ5基設置しました。
- 給水車を使って、村に住む800人に水を届けました。また、より多くの人々に給水できるよう、給水車に代わる方法を検討しています。
- 5か所で排水作業を開始しました。
- 地域のすべての給水システムが汚染され修復が必要な状況であるため、給水システムの調査・点検を開始しました。
- 衛生キット配布先として220世帯を特定し、衛生キット1100セットを調達しました。
パキスタンは、これまでも干ばつ、洪水など、気候危機の影響にさらされてきました。ウォーターエイドは、今回の洪水は、「気候危機の最前線」からの警鐘であり、何百万人もの人々が避難を強いられ、さらに感染症の拡大など公衆衛生面での「災害」が迫ってくるという「最悪の危機の始まり」に直面していると訴えています。
避難している何百万人もの人々が清潔な水、衛生、住居、食料などのサービスを利用できるよう、国際社会や各国政府は支援を強化することが重要です。また、今後、こうした気候変動の影響による災害がますます増えていくことが予測されるなか、COP27まで残り2か月、先進国は開発途上国のぜい弱なコミュニティに対する資金援助を少なくとも2倍にするという公約を実行に移す必要があります。