【支援の現場から】インドにおける新型コロナウイルス感染症対応緊急支援

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2 July 2021
WaterAid/ Ronny Sen

インドにおける新型コロナウイルス第二波の影響

世界中で多くの人々が、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていますが、特に大きく影響を受けるのが、コロナ以前からの貧困層です。インドでは、新型コロナウイルスによって、貧困者数が著しく増加。人口の97%がより貧困になり、2021年5月の失業率は14.73%を記録したと言われています。

ウォーターエイドは、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大当初より、各国で、手洗いや咳エチケット、人との距離を保つことなど予防策の発信や、手洗い設備の設置に取り組んできました。インドでは、2020年4月、メディアなどを活用した大規模な「衛生キャンペーン」を実施。英語、ヒンディー語、カンナダ語など7つの言語で、感染予防のための正しい衛生習慣を呼びかけるデジタルポスター、ビデオメッセージ、音声メッセージを制作し、WhatsAppやコミュニティラジオ・テレビ、コミュニティのネットワークなどを使って、広めました。

しかし2021年3月~4月、インドの新型コロナウイルス感染者数は急増。ウォーターエイドのスタッフ複数人やその家族も感染が確認されたこともあり、4月20日から現地での活動を停止することを決断しました。

6月22日現在、新規感染者数が減少し、地域ごとに少しずつロックダウンが解除されています。一方、再開の目途が立っていない学校や母子保健センター、ロックダウンの影響を受けている地域では引き続き活動することが難しく、通常の水・衛生プロジェクトは、2~3か月の遅れが生じています。

今回の新型コロナウイルス第二波は、第一波の時とは異なり、都市部だけでなく、保健サービスが十分に整っていない農村部でも感染が広がっていると考えられています。農村部では検査することが容易ではなく、感染の実態を把握することが困難な状況にあります。

ウォーターエイドは、このような状況を受けて、水・衛生を専門の団体としてどのような活動を実施して、この状況の改善に貢献するのか、慎重に検討し、①保健医療施設の給水・手洗い設備の設置・修復、②水不足の地域への緊急的な水の供給、③衛生作業員の支援の3分野で緊急支援を実施することに決定しました。

 

①保健医療施設の給水・手洗い設備の設置・修復

新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大してから1年以上が経ちましたが、保健医療施設の水・衛生の状況は今なお深刻です。ウォーターエイドは、状況を把握するために、2021年1月、活動する地域の保健医療施設の給水設備とトイレ、手洗い設備の状況について調査しました。

インドの南部にあるアンドラ・プラデシュ州では、敷地内に給水設備がある保健医療施設は、わずか15%であることがわかりました。保健医療施設内に給水設備がないことで、看護師やスタッフが外に水くみ行かなければならず、本来患者の診察や治療にあてられるはずの時間が奪われています。

また、給水設備があったとしても、手押しポンプ式の井戸に依存している保健医療施設が多く、その割合はオディシャ州とビハール州のプライマリーヘルスケアセンターの31%、ビハール州のコミュニティヘルスセンターの33%にのぼります。パンデミックによって多くの人が保健医療施設を訪れるなか、保健医療従事者は、水を得るために手押しポンプ式井戸から水をくむ時間を作ることもできません。手押しポンプ式井戸に人が集まれば、適切な距離を保つことも困難です。

  • 手洗い設備

ウォーターエイドが調査した保健医療施設のうち、治療する場所に水が使える手洗い設備があったのは37%、石けんまたはアルコールがあったのは43%でした。都市部において、手洗い設備がまったくない、または 一部しか機能していない保健医療施設の割合は、ハイデラバードのスラムにある保健医療施設(basti davakhana)で46%、マディヤ・プラデシュ州 インドールの上位保健医療施設(UPHC)で60%にものぼりました。

  • トイレ

ウォーターエイドの調査によって、ビハール州の保健医療施設の41%、また、ウッタル・プラデシュ州の25%にトイレがありませんでした。また、オディシャ州とウッタル・プラデシュ州で調査した保健医療施設には、障害者が利用可能なインクルーシブなトイレがありませんでした。さらに、調査を行ったすべての州において、分娩室にあるトイレは清潔とは言えない状況でした。

これらの調査結果を踏まえ、ウォーターエイドは、保健医療施設の水・衛生の改善を緊急支援の第1の柱とすることに決定しました。今後3~4か月間、一次医療支援センター、プライマリヘルスケアセンター、およびコミュニティヘルスセンターなど50か所の保健医療施設の水・衛生の状況を改善し、保健医療施設が感染拡大の温床となることを防ぎます。

具体的には、給水設備の設置、水を保管するためのタンクの提供、また、水の浄化システムの導入などに取り組み、保健医療施設の敷地内で、安全な水を安定して確保できるようにします。合わせて、既存の不衛生なトイレを2槽式トイレに改築したり、セプティックタンクを取り付けたりし、保健医療施設で衛生的なトイレを利用できるようにします。

さらに、治療するスペースや出産病棟、防護服を脱ぐ場所でしっかり手洗いができるよう、必要な場所に手洗い設備を設置するほか、防護服や器具を安全に廃棄することができるよう、独立した廃棄場所を設置する予定です。現在も保健医療施設に多くの人が訪れていることをふまえ、これらの設置工事はできるだけ保健医療施設の敷地外で行い、保健医療施設の業務に支障をきたさないよう配慮します。

 

② 水不足の地域への緊急的な給水

近年、インドの水不足は深刻化しています。各地で井戸が干上がり、人々、特に女性たちは遠くまで水を探しにいかなければなりません。この水不足の背景には、手押しポンプ式井戸などの水源となる地下水の減少や水質汚染、給水設備の維持管理に関する課題があります。これまで給水システムの維持管理がきちんと行われてきた地域でも、維持管理に携わる人々やその家族が新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたことで、給水システムの小さな故障の対応さえできなくなったケースもあります。

ウォーターエイドは、活動地域のなかでも水不足が深刻な5州の232居住区を対象に、人々が、今後1~2か月間、飲用や調理用、手洗いに必要な水を確保することができるようにします。具体的には、水があるところから給水車を使って水を運んで配る緊急給水を実施するほか、既存の給水システムの改修・修理、他の水源(地下水、表流水など)から水を確保する給水設備を設置します。

 

③インフォーマルな衛生作業員(sanitation worker)を対象とした支援

「マニュアルスカベンジング」は、汲み取り式トイレの汲み取り作業を、適切な用具なしに手作業で行う仕事です。インドでは、マニュアルスカベンジングは法律で禁止されていますが、実際には多くの貧困層、特に女性が、現在もこの仕事に従事しています。機材や防護服などの安全対策もないまま、ときに人間の廃棄物に直接接触しながら作業し、さまざまな健康被害や病気にさらされてきました。

多くの市や自治体が、このような作業員の存在を否定していますが、ウォーターエイドが2年間実施した調査では、何千人ものマニュアルスカベンジング従事者がいることが明らかになりました。また、インドには、インフォーマルなゴミ拾い従事者も約400万人いると言われています。

マニュアルスカベンジングやごみの回収に従事する人々は、コロナ前より、脆弱な立場に置かれていました。コロナ拡大以降、人間の排泄物や、廃棄物に直接接することの多いこれらの人々は、高い感染リスクにさらされています。また、感染を恐れる人々がトイレの汲み取りやごみ回収を利用しなくなった結果、またそもそもロックダウンで外出ができなくなった結果、このような人々は仕事を失い、困窮をきわめています。

ウォーターエイドは、これまでも支援を実施してきた、手作業で汲み取り作業に従事する人々、ゴミ拾いに従事する人々が、コロナによって必需品も購入できないほど困窮している状況を鑑み、手作業で汲み取り作業に従事する女性1,000人、ならびにインフォーマルなごみ拾い従事者1,750人、そしてこれらの人々の家族に現金給付を行うことを決定しました。3か月間支援金を給付し、彼らがパンデミック時の必需品を購入できる状態を目指します。