【活動レポート・ブログ】新型コロナウイルス感染症に関する世界の状況とウォーターエイドの対応:2020.08.24版
世界の状況
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界で確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は約2,320万人となりました。感染者は215の国と地域で確認されています。
感染者数を国別にみると、米国が約560万人、ブラジルが約360万人、インドが約300万人と報告されていて、引き続き、この3カ国で世界全体の感染者数の約半数を占めています。亡くなった人の数は、世界で80万4,444人と報告されています。ジョンズ・ホプキンス大学がデータの収集を開始して以来、約1,490万人が新型コロナウイルス感染症から回復しています。
世界的には新規感染者数の増加が続いていますが、南アフリカとブラジル、そしてインドでは増加のペースが少し緩やかになっています。
ウォーターエイド活動国の状況
ウォーターエイド活動国の大半では、6月末から新たな感染者が出ていない東ティモールを除き、新型コロナの感染者の増加が続いています。ミャンマーでは1カ月以上にわたって国内感染の報告がありませんでしたが、今週は8人の帰国者の陽性が確認されました。パプアニューギニアは、1カ月前にはほんの一握りの症例しか報告されていませんでしたが、首都の病院での感染発生に続き、現在300人以上の感染者が報告されています。
インドは、直近2週間、毎日のように、1日で確認された新規感染者数が世界最多を記録しました。政府は毎日1万人の検査を実施しています。感染から回復した人の割合が高く、死亡率は低い傾向が見られます。
バングラデシュ(感染者数29万4,598人)とパキスタン(同29万2,765人)では感染者が増加していますが、その増加のペースは遅くなっています。パキスタン政府はホテルや娯楽施設の制限をすべて解除し、9月15日にはすべての学校を再開する予定です。
感染者数が3万1,935人に増えたネパールでは、8月31日から国内線・国際線の運航が再開されます。しかし、カトマンズバレーでは、クラスターの発生により、地方自治体は必要不可欠なサービス以外の業務を停止しました。
アフリカの感染者数は、2週間前の100万7,000人余りから118万人余りに増加し、亡くなった人は27,610人になっています。南アフリカは、感染はピークに達したとし、アルコールやタバコの購入制限を解除しました。アフリカのすべての国で制限が緩和され、国際線も再開されています。しかし、ウォーターエイドは、各国政府が経済を開放しながら予防対策を実施することが可能なのかという懸念を表明しています。
ウォーターエイドの各国での活動
ハイネケン・アフリカ財団とのプロジェクトが始動
ウォーターエイドは、ハイネケン・アフリカ財団の協力を受け、ナイジェリア、南アフリカ、ルワンダ、モザンビークの4カ国で新型コロナに立ち向かうための緊急支援を実施します。
同財団は、母子保健と水・衛生の分野の支援に力を入れていおり、今回、手洗いが新型コロナに対する特に有効な対策であるにもかかわらず、サハラ以南のアフリカでは自宅で石けんと水を使った手洗いができない人が大半であることから、この分野への支援を検討。この分野をリードするNGOであるとして、ウォーターエイドが連携先2団体のうちの1団体として選ばれました。
ウォーターエイドは今回、100万ポンド(約1億4,000万円)の資金提供を受け、ナイジェリアの保健医療施設や公共施設に1,000基以上、モザンビークの保健医療施設や市場に320基の手洗い設備を設置します。ルワンダでは学校に石けんと手指消毒剤を提供し、南アフリカでは、石けんや消毒剤、生理用品などを脆弱なコミュニティや家庭に配布します。 モザンビークでは、農村部で大きな影響力を持つコミュニティラジオを活用し、正しい衛生習慣に関するメッセージを現地の言語で放送します。
ナイジェリアでは、6つの州でプロジェクトの立ち上げに注力。これにより400万人に支援を届けられることになります。南アフリカでは8月26日にプロジェクトが開始されます。
DFID・ユニリーバとのプロジェクトも各国で
イギリス国際開発省(DFID)とユニリーバが資金を提供する衛生習慣を変えるためのプロジェクト(Hygiene Behaviour Change Coalition project、HBCC)が進行中です。
このプロジェクトは、DFIDとユニリーバがそれぞれ5,000万ポンド(約66億円)を拠出し、世界中で10億人を対象に、手洗いの大切さを伝え、石けんを使ってこまめに手を洗う習慣を身に付けてもらうことが目的です。
このプロジェクトによる手洗い設備の設置が各国で進み、パキスタンでは46基、エチオピアでは26基、ザンビアでは50基の手洗い設備が設置されました。ネパールでは最初の100基が納入され、ガーナとタンザニアでは設計と契約が完了しました。
ガーナ、ネパール、ザンビアでは、政府とパートナー団体のスタッフを対象に、コミュニティにおける衛生習慣普及キャンペーンのためのトレーニングを実施しました。パキスタンでは、女性のコミュニティ代表が約2万件の家庭を訪問し衛生習慣の普及に取り組みました。 ガーナでは、公共の場所での衛生状況に関する迅速な調査を実施するため、パートナーを対象に、オンラインデータ収集ツール「mWater」の使い方に関するトレーニングを実施しました。
ザンビアでは、6つの郡の300の学校に、6万個以上の石けんと30万個以上の手指消毒剤を提供しました。
東アフリカ:ルワンダの病院で水道システムを整備
ルワンダ
1カ所の病院に水道システムと手洗い設備を設置しました。ルワンダ政府とユニセフと協力し、教師用の新型コロナに関するトレーニングツールの開発に取り組んでいます。
ウガンダ
保健医療施設における水・トイレ・衛生習慣に関するアセスメント調査を開始。今後、そのうちの3か所を対象に、水・トイレ・衛生の包括的な支援を実施していくことを目指しています。また、水・衛生を、次の選挙の争点の一つとするために、国会議員への働きかけを進めています。
西アフリカ:リベリアでIOMから手洗い設備の設置を受託
マリ
衛生習慣に関する注意などを盛り込んだポスターのセットを制作しました。しかし、クーデターの発生により、すべての取り組みを中断しています。
リベリア
ウォーターエイドが考案した手洗い設備が国際移住機関(IOM)に採用され、さらに15基の手洗い設備の設置について委託を受けました。
南部アフリカ:マラウイで回復者のインタビューを放送へ
南アフリカ
学校や、人口が密集しているコミュニティを対象とし、新型コロナ対策としての衛生行動の変容を促す教材が完成しました。
マラウイ
新型コロナの回復者のインタビューをコミュニティラジオやテレビで放送し、衛生習慣の変化を促進します。学校の再開に備え、教育省が学校での水・衛生の状況確認・調査を進めていますが、この取り組みを支援しています。
モザンビーク
著名な写真家マリオ・マシラウ(Mário Macilau)氏と協力して、水の重要性、特に新型コロナに関連した水の重要性に焦点を当てた写真展を、再開された現地の文化施設で開催しています。
マダガスカル
多くの人たちが訪れるマダガスカル中部のアンバニチェナの市場に、石けんを備えた非接触式の手洗い設備と、手洗いを促進するポスターを設置しました。また、学生が試験を受ける場所にも石けんを備えた手洗い設備を設置する予定です。
南アジア:ネパールで手洗い設備設置の成果を検証する報告書
バングラデシュ
コミュニティや公共の場所、家庭に、222基の手洗い設備を設置しました。首都ダッカの工場労働者を対象に、新型コロナの感染予防など衛生上の注意を促し、2万個の石けんを提供しました。
ネパール
非接触式の手洗い設備に関する成果と課題をまとめた報告書「Learnings and Reflections of Contactless Handwashing Facilities」を発表しました。
ウォーターエイド・ネパールは、他団体とも協力し、合わせて140基の手洗い設備を設置しました(内訳は、カトマンズバレーの市場33、病院13、官公庁15、その他4、隔離・検疫センター50、ラハンの市場12、病院1、官公庁9、寺院3)。調査は、このうちカトマンズバレーの3郡に設置した非接触式の手洗い設備を対象に実施し、その有用性、課題、持続可能性を高めるための課題を明らかにすることを目的にしました。
報告書は「非接触式の手洗い設備は、一般の人々に手洗いの機会を提供しているだけでなく、人々が衛生的な行動をとるように動機づける効果的な方法でもある」と指摘。また、「手指の衛生が最も重要な時期に、戦略的に適切な場所に設置することができた」としています。ウォーターエイドは今後、政府や関連機関と継続的な取り組みを続け、非接触式の手洗い設備の基準を策定するほか、政府が主体となって、非接触式の手洗い設備を他の地域にも横展開して設置していくよう働きかけていく予定です。
パキスタン
レキットベンキーザー社(イギリスに本社を置く日用品・医薬品・食品メーカー)による協力も得て実施していた新型コロナに関するプロジェクトが終了しました。プロジェクトでは、150の手洗い設備と5つの公衆トイレを設置。拡声器を通じた17万回以上のアナウンス、テレビでの12万回以上のメッセージの発信を行い、524の看板やバナーなどを掲出しました。また、1万セット以上の衛生用品や約9,000個の石けんの提供を行いました。これらを通じて約220万人の人々を支援することができました。
インド
清潔な水の確保に焦点を当てた取り組みを展開。県行政が雨水活用設備を設計することを支援したほか、ウッタル・プラデシュ州ラクナウ県のバクシ・カ・タラブの町による貯水池再生のための計画づくりを支援しました。
ミャンマー
ヤンゴンのラインタヤ郡区の2つの学校に70の手洗い設備を設置しました。
農村部では、ポリタンクなどに蛇口を取り付けて作る簡易手洗い装置「ティッピータップ」の普及を進めています。このため、各村ができるだけ多くのティッピータップを設置するコンテストを実施しています。以前からの地域に加え、マンダレーのチャウパダン郡区でも実施することにしました。村々は、8月末までにティッピータップの制作・設置を進めます。