【支援の現場から】バングラデシュ:手洗い設備の普及へマニュアル作成

on
17 July 2020
Workers at a ready-made garment factory wash hands to prevent COVID-19 having learned about importance of handwashing through hygiene behaviour training. Narayanganj, Bangladesh. 2020
WaterAid/Drik/Parvez Ahmad

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は手洗いについての人々の考え方を大きく転換させました。地方の市場でも、保健医療施設でも、役所の中でも、家に帰った後も、人々は手を洗うようになりました。これは間違いなく前向きな変化ですが、途上国では流水で手を洗うことができない人々が大勢います。また、水くみ場や手を洗う場所で感染が広がるリスクも下げなくてはなりません。

バングラデシュでも、「こまめに、20秒間以上、手を洗う」というメッセージが広く発信され、政府もメディアも、感染予防対策として、石けんで手を洗うことを呼びかけています。これは正しいことですが、問題は流水で手を洗うことが前提だということです。バングラデシュの人口のうち63%以上が農村部に住んでいて、その多くが手押し井戸や共同水栓に依存しており、流水で手を洗うことは困難です。

こうした課題に対処するため、ウォーターエイド・バングラデシュでは、パートナーNGO、ソーシャルワーカー、地元の起業家の支援を受けて、公共スペース用、家庭用のさまざまなタイプの手洗い設備を設計し、それらをまとめたマニュアルを作成・公開しました。いずれも安価な費用で設置することができ、流水で手を洗うことができるものです。

新型コロナウイルスの感染が続く中、ウォーターエイドはこれらの手洗い設備の導入を呼びかけ、都市部でも農村部でも、社会的に最も取り残されがちなコミュニティでも、流水で手を洗うことができる環境づくりを進めています。

ウォーターエイド・バングラデシュが制作した各種の手洗い設備とその費用を紹介するマニュアル
ウォーターエイド・バングラデシュが制作した各種の手洗い設備とその費用を紹介するマニュアル

ウォーターエイドは長い間、手洗いの大切さを訴え、パートナー団体や各地の人々とともに、革新的でできるだけ費用もかからない手洗いのための設備や装置の工夫を続けてきました。

ポリタンクなどに蛇口を取り付けて作る簡易手洗い装置「ティッピータップ」も、そうした工夫の中から生まれました。

 

簡易手洗い設備「ティッピータップ」を紹介する動画「バングラデシュの農村部の生活を変える蛇口」(英語)

 

今回、作成したマニュアルでは、人々がそれぞれの環境に最も適した設備を選ぶことができるように、費用も合わせて紹介しています。大半の設備は、費用を抑えるために、地域で手に入れられる資材を使っています。

 

非接触式の手洗い設備やアクセシビリティへの配慮も

新型コロナウイルス感染症が広がる中で導入されたウォーターエイドの設備の中で、最も革新的なものの1つは、蛇口に触れることなく手を洗うことを可能にする非接触式の手洗い設備です。足でペダルを踏むと水が流れるしくみで、これにより新型コロナウイルスをはじめとする感染症のリスクを最小限に抑え、さらに節水にもつながります。

足踏み式のペダルを使い、子供や障害者が容易に使うことができるタイプの手洗い設備も紹介しています。

足踏み型手洗い設備についてのより詳しい説明書の一部
WaterAid Bangladesh
足踏み型手洗い設備についてのより詳しい説明書の一部
 

マニュアルでは、小さなタンクに蛇口を付け、使用済みの水を受け止めるために土鍋やプラスチックのボウルなどを使い、それらを泥で固定する手洗い設備も紹介しています。これなら、都市部から離れた農村部に住む人々が、自分の家の庭に作ることができます。また、ティッピータップは、バングラデシュの農村部でも有効です。

工夫して作った手洗い設備を利用するバングラデシュ農村部の女性
WaterAid
工夫して作った手洗い設備を利用するバングラデシュ農村部の女性

ウォーターエイドはこれらのマニュアルを一般に公開し、水・衛生の活動や支援に関わる団体や関係者と広く共有しています。このマニュアルに従って、さっそく手洗い設備の設計を始める人も団体もあります。また、公共の手洗い設備をよりよいものにしていくため、公共の手洗い設備に求められる仕様をまとめています。

 

バングラデシュで使用されている足踏み型の手洗い設備を紹介する動画

 

手洗いは費用対効果に優れた取り組み

新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界を揺るがしています。その広がりを防ぐ最も有効な対策の一つが、石けんと水でこまめに手を洗うという非常に基本的で簡単な行動です。

世界保健機関(WHO)によれば、手洗いを広める活動に3.35ドルを使った場合の保健衛生上の効果は、トイレを作るために11ドルを使った場合や、家庭の水道設備のために200ドルを使った場合に相当すると推定されています。これらの数字は、衛生へのわずかな支出がいかに大きな変化を生み出すかを示しています。しかし、これまでは、個人のレベルでも地域でも、関係機関や政策立案の現場でも、衛生習慣改善への意欲は高くはありませんでした。

石けんによる手洗いは、下痢の発生率を最大40%減少させ、呼吸器疾患の発生率を最大21%減少させるとの試算もあります。それによる経済的利益も小さくありません。

ウォーターエイドは、これらのマニュアルが広く活用され、新型コロナウイルスだけではなく、多くの感染性疾患の拡大防止、人々の健康維持につながることを期待しています。

マニュアル「HANDWASHING STATIONS : An easy-to-use technological and context-based Handwashing Stations manual」

マニュアル「Pedal operated handwashing station responding COVID-19 pandemic」

 

このレポートは、ウォーターエイド・バングラデシュのハシン・ジャハン代表、水・衛生のテクニカルアドバイザーであるゴラム・ムクタディール、戦略サポートオフィサーであるザリフ・イフテカール・ラスルの3人によるレポートを、ウォーターエイドジャパンが編集したものです。オリジナル(英文)はこちら