【活動レポート・ブログ】マラウイ:地元委員会と連携してコミュニティ主導の保健医療センター改善へ

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Image: WaterAid/ Lis Parham

マラウイの何百万人もの人々は、清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣が満たされない医療環境に耐えています。住民たちによって構成されている保健センター管理委員会は、この環境の改善を求めています。ウォーターエイドは、マラウイ南部で、管理委員会と連携して、ヘルスケアセンターの水・衛生設備を整備するプロジェクトを始めます。

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ウォーターエイドが改善に取り組むのは、4つのヘルスセンター。そのうちの1つ、チクウェウォの保健センターの管轄地域の住民たち98,000人を代表しているのが、保健センター管理委員会で、メンバーはボランティアとして活動しています。ウォーターエイドは委員会と連携して活動していますが、プロジェクトが動き出す前から委員会はさまざまな変化を生み出しています。

マラウイでは、3人に1人が清潔な水を使えず、半数以上が適切なトイレを使えません。保健医療施設も憂慮すべき状況で、診療や治療にあたるすべての場所に水や石けんを使える手洗い設備を備えている保健医療施設は全体の3分の1以下です(*)。患者や医療従事者は危険な感染症にかかるリスクにさらされています。

マラウイは、世界で最も母子死亡率が高い国の一つです。母子が亡くなるケースを減らすため、出産は、適切な訓練を受けた医師や看護師、助産師など(熟練した分娩介助者、Skilled Birth Attendance)の下で行うように法律で決められています。そのため、出産を控えた妊婦は不安があっても、出産予定日の少なくとも1カ月前には、チクウェウォ保健センターのような施設に来なければなりません。

ウォーターエイドと保健センター管理委員会との話し合い
ウォーターエイドと保健センター管理委員会との話し合い
Image: WaterAid/ Dennis Lupenga

地元の委員会との協力はプロジェクトに不可欠

保健センター管理委員会は、県の呼び掛けに応じた周辺の村の代表者で構成され、コミュニティと保健医療従事者との懸け橋となっています。もめ事の解決から医薬品の在庫の確認まで、さまざまな役割を引き受け、状況や課題を保健省に報告しています。

ウォーターエイド・マラウイのコミュニケーションスペシャリスト、クリフトン・カワンガは「保健センター管理委員会の主要な役割は、状況を伝えること」と話します。「保健センターの状況は、なかなか伝わってきません。委員会が間に入って状況を伝えることで、コミュニティが状況を理解できるようになり、患者とセンタースタッフとの良好な関係が維持されます。委員会がなければ、センターのスタッフはセンターの水・衛生の状況や、薬や医療機器が足りないことなどをうまく伝えることができません。そのような事態になれば、コミュニティとセンターとの間で緊張が高まってしまいます」。

保健センターの改善プロジェクトに取り組むウォーターエイドにとっても、委員会と協力することは重要です。コミュニティとの協力がなければ、コミュニティの人々にとって何が本当に必要なのかわかりません。女性のニーズを見逃さないことも重要なので、委員会のメンバーは、少なくともその4割を女性にすることになっています。

コミュニティが最初からプロジェクトについての意思決定に関わることで、プロジェクトはコミュニティに合ったものとなり、コミュニティの人々は「自分たち自身の取り組み」と感じるようになるでしょう。

マラウイ・チクウェウォ保健センターの産後病棟。女性は通常、出産後48時間滞在。水・衛生環境が整わないと感染症のリスクが高まります。
マラウイ・チクウェウォ保健センターの産後病棟。女性は通常、出産後48時間滞在。水・衛生環境が整わないと感染症のリスクが高まります。
Image: WaterAid/ Lis Parham

40キロを歩いてくる妊婦、夜中に離れた市場で水くみ…

女性が出産するときには、必要となる水を家族らが持参しなければなりません。施設内で水が使えないチクウェウォのセンターから一番近い水くみ場は、徒歩で10分ほど歩いた先にある市場の中です。夜中に出産した場合は、誰かが危険を冒して市場まで水をくみに行くか、女性が体を清潔にすることもできないまま朝まで待つしかありません。それは、ここで続く苦しみの一部です。

そういう状況であっても、このセンターは地域にとって欠かすことのできない施設です。センターで出産するために、40キロ以上の道のりを歩いて来る女性もいます。

実は、センターで水が使えないこの状況は、健康と安全に関する国の基準を満たしていません。この状況が続けば、閉鎖されてしまう可能性もあり、改善は急務となっていました。

すでに起きつつある変化

2018年7月に委員会が設立されて以来、委員会はコミュニティと連携し、さまざまな取り組みをしています。村々の村長たちと連絡を取って委員会の存在感を高めたり、レンガやセメントの購入・製造のための資金を住民から集めたりもしてきました。その結果、女性は出生前のケアを受けられるようになり、ワクチン接種を受けるケースも増えてています。

委員会は、医療スタッフに対しては、より一貫したケアを求め、コミュニティに対しては、どのような協力が求められているかを伝えてました。こうした取り組みから生まれる相互理解は、スタッフと患者の間の緊張を和らげ、開業時間からサービスのレベルまで、どのような問題があるのかを明らかにしてきました。

清潔な水やトイレが母子の命を救います

今後、プロジェクトが進み、センターで清潔な水が使えるようになっても、委員会の仕事は終わりではありません。委員会は、水・衛生の設備がしっかり維持管理されているか、その確認を続け、患者たちに水・衛生設備の正しい使い方をうまく伝えてくれるでしょう。

センターの中でシャワーが使えるようになります。委員会のメンバーたちは、女性がセンターの床で寝ることもなくしたいと考えています。感染予防の対策が採られ、センターの中で命が守られるようにしたいと考えています。そして、感染予防の方法を知った女性が家に戻り、家庭でもその大切な取り組みを続けてほしいと期待しています。

こうした状況になれば、女性は危険な自宅出産を選ぶことなく、保健センターに来て子供を生みたいと思うようになるでしょう。それにより、法律も守られ、母子の命も救われるでしょう。

未来へのビジョン

「委員会は、保健医療のプロジェクトの成功に不可欠です」とカワンガは言います。 「これらのコミュニティは遠隔地にあります。委員会の情報と意見は、私たちが、何が必要かを理解し、他の機関と協力しながら、効果的で持続可能なプロジェクトを設計するために役立ちます。私たちは、委員会の協力がなければ、コミュニティと一緒に活動することはできません。彼らは常に挑戦と実践を続け、重要な指摘をしてくれます」

ウォーターエイドは、今後も各地でコミュニティと協力しながら、水・衛生の改善を進めていきます。

このプロジェクトは、Scottish Government International Development Fundの協力も得て、実施される予定です。

(*)The WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme (JMP) 2019 「WASH in health care facilities : Global baseline report 2019」

 

このレポートは、ウォーターエイド・イギリスのリス・パーハムによるレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルのレポートはこちら