【活動レポート・ブログ】カンボジア:給水サービス向上のための説明責任強化

※本記事は2025年3月12日に一部修正を加えました。3月11日に配信したメールマガジンでも誤った記載がありましたことをお詫び申し上げます。
ウォーターエイドは、カンボジアの農村地域で、清潔な水をより多くの人々に届けるための活動を行っています。この取り組みでは、水の供給において責任の所在が不明確であり、利用者の不満につながることが多いという、水供給セクターが抱える課題に焦点を当てています。
カンボジア政府は、2025年までにすべての農村住民に安全な水を供給することを目指しています。最近のデータによると、農村地域に住む人々のうち、約82.7%が、安全な水を利用することができています。多くの人々が井戸や手押しポンプを利用している一方、約15%の人々は、給水システムから安全で良質な水を手頃な価格で得ることができています。人々は入浴や洗濯といった活動のために水を利用しており、給水システムへの依存度は高まっています。
しかし、農村地域における給水システムを維持・管理するためには、複雑な政策や規制の網のなかでかじ取りする必要があります。また、責任がさまざまな政府機関に分散しているため、監督や連携において不備が生じ、問題に対する効果的な解決を妨げています。
ウォーターエイドは、2020年からカンボジア水道協会と連携し、こうした課題の解決に取り組んでいます。カンボジア水道協会とともに、説明責任の強化を図り、農村地域における給水サービスを向上させるための戦略を策定してきました。
この取り組みは、国の法律や政策で定められた役割と責任を明確にすることから始まりました。ウォーターエイドは、郡当局、コミューン(郡の下の行政区画)評議会、および認可を受けた水事業者に対し、それぞれの具体的な役割を示すため、ポスターをはじめとした誰でも理解しやすい資料を作成しました。
また、重要な取り組みのひとつとして、スコアカード制度の導入が挙げられます。この制度は、給水サービス提供者、地方当局、そして地域住民が、それぞれの法的義務に基づいて互いのパフォーマンスを評価できるようするものです。ウォーターエイドは、5つの郡で会合を実施して、参加者がそれぞれのパフォーマンスについて議論し、課題に対処するための行動計画を立案できる機会を設けました。
また、ウォーターエイドは障害のある人を支援する団体と連携することで、弱い立場に置かれがちな人々が意思決定のプロセスに参加できるようにしました。これにより、障害のある人が評価基準の作成や向上に貢献したほか、給水サービスをより良くする方法について意見交換が行われ、障害のある人の視点が活かされました。
2020年から2024年のプロジェクト成果
- 給水サービスの向上:
地域住民からのフィードバックを受け、水事業者や郡当局は、給水サービスに問題が生じた際の利用者とのコミュニケーションの改善や、設備が故障した際の迅速な対応方法の整備など、給水サービス向上に向けた積極的な取り組みを実施しました。 - 給水サービス利用者の満足度向上:
スコアカード制度の導入後、給水サービスに対する地域住民の満足度は70%から85%に上昇し、サービスの質の向上が確認できました。 - 予算の増加:
自治体や水事業者は、明らかになった地域のニーズに対応するための予算を調整し、給水サービス改善に取り組む姿勢を示しました。 - 地域投資:
参加した21の自治体すべてが、社会福祉予算の少なくとも30%を、給水サービスと衛生環境の改善に充てました。ある地区では、最貧困層や障害のある人を対象に、給水システムに新たに接続するための補助金が支給されました。 - 財政支援:
給水システムを運営する4つの水事業者が、最貧困層世帯を対象に接続料金を最大50%引き下げ、清潔な水を利用できる環境を整えやすくしました。 - 連携の強化:
郡当局と水事業者の間で、より定期的なコミュニケーションと調整が行われるようになりました。事業者は検査や品質調査をより積極的に受け入れるようになり、給水システムの安全性が向上しています。 - 影響力の拡大:
スコアカード制度の導入が成功し、給水サービス以外にも応用されるようになりました。例えば、トゥエクフォス郡政府は、他の公共サービスに関する説明責任の強化に向けて、類似のツールを導入しました。 - 責任の明確化:
給水サービスの関係者は、それぞれの役割と義務をより明確に理解しました。これにより、ライセンス契約の履行がしやすくなり、郡当局による事業者への抜き打ち検査が強化され、地域レベルで給水システムへの接続が進みました。
さらなる取り組み
ウォーターエイドは、こうした成果をもとに、パートナーや資金提供者の支援を得て、以下のようなさらなる取り組みを進める予定です。
- 説明責任の持続的な実践:
ウォーターエイドが直接関与せずとも、給水システムの関係者が問題を特定し、解決できるしくみをつくります。 - 規模拡大:
スコアカード制度を活用したアプローチを、他の地域における事業者にも展開していきます。 - 政策への影響:
カンボジア水道協会と密に連携して得られた教訓を、実務マニュアルやコミュニケーション資料、研修マニュアル等の作成を通じて、政府の政策やガイドラインに組み込みます。 - 能力向上:
技術面や経営面など、給水システムを運営する事業者が直面しがちな課題に対処できるようにするためのプログラムを作成します。 - テクノロジーの活用:
水道メーターやモバイルアプリなどのスマート・テクノロジー導入の可能性を探ることで、スコアカード制度を強化し、給水サービスの提供者と利用者間のコミュニケーションを改善します。
ウォーターエイドは、こうした取り組みを継続することで、カンボジア農村部における給水サービスの持続的な改善を目指し、人々の暮らしを良くする活動を続けていきます。
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