【活動レポート・ブログ】マラウイ:水・衛生設備がない保健医療施設における妊産婦ケアの現状

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31 May 2021
WaterAid/Wimbledon Foundation/Dennis Lupenga

マラウイでは、保健医療施設の半数以上に手洗い設備がなく、3分の2近くには適切なトイレがなく、5分の1近くにはその場で利用できる清潔な水がありません。新型コロナウイルスの新規感染症が年間を通して確認されているなか、医療従事者は感染に対する基本的な予防策もないままパンデミックに対応しています。

特に、助産師など妊産婦ケアに携わる人々にとって、水・衛生のアクセスがないということは恐ろしいことです。水、トイレ、石けんがなければ、母親と赤ちゃんの命と健康を守るはずの保健センターが、感染症拡大の温床となってしまいます。

世界では毎年100万人の母親と新生児が、感染症によって出産直後に命を落としています。このような悲劇は、石けんと水というシンプルなもので防ぐことが可能です。

5月24日~6月1日に世界保健総会が開催されるにあたりウォーターエイドは、マラウイのンチシ県の医療従事者や患者、家族に話を聞きました。

マラウイのンチシ県病院(2021年4月)
WaterAid/ Dennis Lupenga
マラウイのンチシ県病院(2021年4月)

ンチシ県は、マラウイの中央部に位置する農村地域で、ンチシ県病院と、カンゴルワ、ムクンジ、クウィの保健センター、計4か所に保健医療施設があります。これらの施設には、適切な給水・衛生設備がありません。母親や赤ちゃんが感染症にかかる危険性があるなかで、スタッフは環境を清潔に保つことに苦労しています。ウォーターエイドは現在、ウィンブルドン財団と協力して、これら4つの保健医療施設に清潔な水、適切な衛生設備、正しい衛生習慣を届けるために活動しています。これにより、30万人の人々が安全な環境で医療サービスを受けたり、提供したりすることが可能になります。

クウィ保健センターで働くクリッシー・カオチェさんは、1日4回、保健センターから300メートル離れたコミュニティの井戸に水くみに行かなければなりません。井戸は混雑しているので、列に並ぶか、または「保健センターのために水をくみに来た」と説明して列の先頭に入れてもらうしかありません。

ンチシ県のクウィ保健センターで廊下を掃除するクリッシー・カオチェさん(2021年4月)
WaterAid/ Dennis Lupenga
ンチシ県のクウィ保健センターで廊下を掃除するクリッシー・カオチェさん(2021年4月)

クリッシーさんは、自分が水くみで病院を離れると、残された同僚が1人で何人もの母親と赤ちゃんの対応をしなければならないことを心配しています。患者が対応されないままになる、また、赤ちゃんと母親の両方に緊急のケアが必要なときでも、どちらか一方しか対応できない、といったことが起こりうるためです。どんな産科病棟でも、一瞬が命取りです。「病院を出て水くみに行く時間が、文字通り女性と赤ちゃんの生死を分けることになるのです」とクリッシーさんは話します。

新型コロナウイルス感染症やその他の感染症の予防策として手洗いがいかに重要であるかを保健センターのスタッフは知っていますが、手洗いを実践したり、病院内を清潔に保ったりするための水が、ただ足りていないのです。

新型コロナウイルス感染症の流行中、私たちは、人々が治療を受ける前に手を洗えるよう水を確保することに最善を尽くしてきました。が、多くの人が病院を訪れたため、水の確保が追いつきませんでした。

クウィ保健センターは、ンチシ県に向かう舗装道路に面しているため、多くの患者が訪れます。しかし、このセンターは、長年、水・衛生のアクセスが困難であり、今もその状態は改善されないままです。産科病棟では、出産後に体を洗う手段がない女性たちが、ベッドのマットレスの一部を切り取って生理用ナプキンとして使っています。

ンチシ県にあるクウィ保健センターの産後病棟。ベッドのマットレスには血液が染みついている。(2021年4月)
WaterAid/ Dennis Lupenga
ンチシ県にあるクウィ保健センターの産後病棟。ベッドのマットレスには血液が染みついている。(2021年4月)

カンゴルワ保健センターの産科病棟では、毎月40~60人の赤ちゃんが生まれています。産科病棟全体で使えるトイレは1つしかなく、しかも、それはしょっちゅう使えない状態になります。浴室は、水や血でいっぱいになってしまうため、1日1人の女性しか使うことができません。また、保健センターの反対側には、患者の世話をしに来ている家族が使える共同浴室があり、歩いてその共同浴室を使うように言われる妊産婦もいます。が、その浴室も頻繁に使えない状態にあります。

ンチシ県のカンゴルワ保健センターにて、コミュニティの助産師アシスタントであるステリア・ボトマンさん(33歳)が、エネレス・デヴィソニさん(18歳)とその赤ちゃんをサポートする。(2021年4月)
WaterAid/Wimbledon Foundation/Dennis Lupenga
ンチシ県のカンゴルワ保健センターにて、コミュニティの助産師アシスタントであるステリア・ボトマンさん(33歳)が、エネレス・デヴィソニさん(18歳)とその赤ちゃんをサポートする。(2021年4月)

コミュニティの助産師アシスタントであるステリア・ボトマンさんは次のように話します。

出産したばかりの女性に、出血している最中にこの施設の反対側まで歩いてもらうことを想像してみてください。胸が張り裂けそうになりますが、他に選択肢はありません。

ラヴネス・ソロシさんの孫は、前日にムクンジ保健センターで生まれました。出産したばかりの娘が回復できるよう、ラヴネスさんは保健センターのキッチンで食事や飲み水を用意したいと思うものの、近くに清潔な水がなければ困難です。

ムクンジ保健センターのキッチンで娘のために食事の支度をするラヴネス・ソロシさん(43歳)(2021年4月)
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ムクンジ保健センターのキッチンで娘のために食事の支度をするラヴネス・ソロシさん(43歳)(2021年4月)
この3日間、水の確保に苦労しました。特に、このキッチンには水道がありません。水を飲むためや、皿や鍋などの食器を洗うためだけでなく、病院にいる全員が使えるように、1日に何度も水をくみに歩かなければならないことを想像してみてください。簡単なことではありません。
ラヴネス・ソロシさんの生後1日の孫(2021年4月)
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ラヴネス・ソロシさんの生後1日の孫(2021年4月)
ンチシ県病院のデスクでメモをとるコミュニティの助産師ユニス・カリンビラさん(2021年4月)
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ンチシ県病院のデスクでメモをとるコミュニティの助産師ユニス・カリンビラさん(2021年4月)

コミュニティの助産師ユニスさんは、水道や衛生設備の整っていない病院は公衆衛生上の脅威となると断言します。

私たちの仕事には徹底した手洗いが必要です。水がなければ、手を洗うこともできません。人々は病院に入るときにさえ、水がないために手を洗っていないのです。患者はこの診療所で治療を受けるどころか、感染症にかかってしまうのです。水道がないからです。水は命です。水がなければ、私たちは絶望的です。

ンチシ県病院の産後病棟で働く看護師のアヴィス・チオコさん(29歳)は、パンデミックの中でも、断続的な水の供給により定期的な手洗いができない環境で働いています。アヴィスさんは、自分が患者に感染症をうつしているのではないかと心配しています。

この新型コロナウイルス感染症の時代、手洗いが課題になっています。この地域の病院や保健医療施設の多くに水道がありません。そのため、感染症にかかったり、患者さんに感染させてしまったりするリスクがあります。

2年前の世界保健総会で、すべての保健医療施設において、水・衛生のアクセスを確保することに、すべての加盟国が合意しました。実際にパンデミックが起きたことによって、これらの基本的なサービスが感染の抑制にいかに重要であるかが浮き彫りになりました。

世界保健総会で発表されたデータによると、世界中で約20億人の人々が基本的な給水サービスのない保健医療施設を利用しており、新型コロナウイルス感染症やその他の致命的な病気に感染するリスクが高まっています。昨年12月、世界保健機関(WHO)は、最貧国の保健医療施設に清潔な水、手洗い設備、適切なトイレを提供するために必要な資金は36億ドルであると試算しました。

世界では、保健医療施設の3分の1に、すぐに利用可能な手洗い設備がなく、最貧国の保健医療施設の約半数には清潔な水がありません。清潔な水がないことで、新生児や出産する女性たちが感染症の危険にさらされています。

ウォーターエイドは、各国の保健大臣や首脳に対し、保健医療施設の基本的な衛生管理を優先することや、新型コロナウイルス感染症への対応と復興のための戦略の中心として、衛生行動と公衆衛生への緊急的な資金を確保することを呼びかけています。

このレポートは、ウォーターエイド・マラウイのデニス・ルペンガによるレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルのレポートはこちら