【活動レポート・ブログ】マラウイ:きれいな水が届く日、そこからすべてが始まる
この冬、ウォーターエイドは、「きれいな水が届く日、そこからすべてが始まる」をテーマに、マラウイのマンゴチ県におけるプロジェクトをはじめ、1人でも多くの人に希望を届けるための活動へご支援を呼びかけています。
マラウイで実施をするこのプロジェクトは、南部のマラウイ湖南端に位置するマンゴチ県のチンガンジ地域で実施されています。この地域には15の村々があり、人々は主にトウモロコシ、大豆、ささげ豆の栽培や稲作で生計を立てています。漁業や小規模な商売を営む人もおり、サツマイモのフライやドーナツのようなマンダジ、トマトを販売する屋台や、マッチや石けんなどの日用品を扱う小さな商店、自転車修理屋もあります。
マラウイ全土は現在、深刻な干ばつと洪水、さらに史上最悪のコレラの流行に見舞われています。これまでにコレラによって国内では1,770人が命を落とし、チンガンジ地域の多くの住民も大切な家族を失いました。コレラの流行は、清潔な水やトイレ、衛生習慣が行き届いていないことが原因とされています。
ウォーターエイドは2021年にチンガンジ地域での活動を開始。現地パートナーや住民と協力し、掘削井戸1基、給水タンク3基、水くみ場8基を設置しました。この取り組みにより、ナムウリ小学校の201人の生徒と、6つの村で786人が清潔な水を利用できるようになりました。
ナムウリ小学校に通うチソモさん
給水設備が学校に設置される前、子供たちは授業の合間を縫って交代で水くみに行かなければならず、学業に支障をきたしていました。しかし、給水設備が導入されたことで、その負担がなくなり、子供たちは遊ぶ時間を持てるようになり、喉が渇いても遠くまで水をくみに行く必要がなくなりました。チソモさんは学校生活を謳歌できるようになり、将来は看護師になりたいと考えています。水は依然として地域全体の課題ですが、清潔な水がすぐ近くで手に入ることは、チソモさん自身が水くみのために学校に遅刻せずにすむようになっただけでなく、地域全体にとっても良い影響をもたらしています。
毎朝、向こう側の井戸は水をくむ人が大勢来るので、順番待ちのせいで学校に遅刻してしまうんです。それに井戸水は塩味がします。学校に給水設備が設置される前は、お母さんたちのグループが学校に水をくんできてくれていましたが、お母さんたちが来られない日は、私たち自身で水くみに行かなければなりませんでした。でも、給水設備が設置されてからは学校での水くみから解放されました。
以前は誰がどの日に水をくみに行くか、校長先生が当番表を作っていました。当番の日には、クラスメートが授業を受けている間に水くみに行くので、それが勉強の妨げになっていました。遊んでいる最中に喉が渇けば、水を飲むためにとても長い距離を走っていかなければなりませんでした。今はすっかり事情が変わりました。遊んでいて喉が渇いたら、ちょっと走って行って水を飲み、また遊びの輪に戻れば良いだけなのですから。
給水塔管理人のジュリアスさん(59歳)
ジュリアスさん(59歳)は、2021年にウォーターエイドが設置した給水塔の管理人を務めています。2023年に水を求めてこの地域に移住し、給水塔周辺の土地を借りて農業を営みながら、近隣の土地を追加で購入しました。
私の最初の妻は1997年に赤痢の流行で亡くなりました。飲んでいた水が原因でした。当時は管理されていない水源が多く、多くの人が命を落としました。妻だけでなく義兄弟2人を失いました。加えて、私は腕を失うという大きな試練に直面しました。そのときは、人生が終わったと思いました。自分が役に立たない存在だと感じ、死にたいとさえ思いました。しかし、夢の中で励ましの言葉を聞きました。『心配しないで。あなたにはまだ人生で成し遂げられることがある』と。
清潔な水を利用できない人々がいるというのはあってはならないことです。その人たちが口にする水の質や、水を得るために歩かなければならない距離を考えてみてください。私はすべての人が清潔な水を利用できるようになることを願っています。
チソモさんやジュリアスさんのように、清潔な水が使えるようになった人々がいる一方、チンガンジ地域の9つの村では、今も清潔な水を得るために日々苦労している人々がいます。人々は干ばつの影響や需要の増加で頻繁に干上ってしまう浅井戸を使うか、近隣のいくつかの村にある掘削井戸まで長時間歩いて行かなければなりません。また掘削井戸の利用は有料である場合もあります。
ナムウリ小学校に通うヘイスティングさん
ヘイスティングさんは、ナムウリ小学校に通う生徒です。この地域では、通常、水くみは女性や女の子の役目とされていますが、ヘイスティングさんは母親とともに毎日、家族の水くみを担っています。学校に遅れないよう、毎朝4時に起きて水くみに行きます。ヘイスティングさんの夢は、家でも学校でのように、好きな時に水を使える生活を送ることです。
水くみには早起きして行くしかありません。朝まだ暗くて怖いからと水くみに行かなければ、僕たちはどうやって渇きをいやせばよいのでしょう。十分な水がない日には服を洗えなかったり、お風呂に入れなかったりします。今までで一番嬉しかったのは、学校に給水設備ができて清潔な水を使えるようになった日でした。
ハリエットさん(27歳)
ハリエットさんは、3人の子供を育てるシングルマザーです。現在、2人の子供と一緒に暮らし、最年長の子供は祖父母と住んでいます。ハリエットさんは遠くの水源まで歩いてくんできた水を塩素消毒して使っています。日雇いで草刈りやトウモロコシ栽培をしたり、手作りの食べ物を売ったりして生計を立てています。彼女の夢は、自分の庭を持ち、野菜を育て、清潔な水を利用しながら自立した生活を送ることです。また、子供たちが十分な教育を受け、良い仕事に就くことを望んでいます。
他の村の人々が清潔な水を利用できるのを見ると、本当に羨ましく思います。この世界は水を使える人たちのためのものであって、そうでない私たちはこの世の一員ですらないように感じます。もし家の近くに給水設備があったならば、生活は全く違ったものになっていたでしょう。だれかの農場で日雇いの仕事を探さなくても、自分の庭で野菜を育て、市場で売ることができるはずです。
皆さまのご寄付により、今も清潔な水を待ち望む、ヘイスティングさんやハリエットさんの暮らす9つの村にきれいな水を届けることができます。チンガンジ地域でのプロジェクトでは、小学校に設置された既存の設備から給水網を延長するほか、新たな給水システムを構築し、およそ1800人の人々が清潔な水を利用できるようになる予定です。加えて、皆さまからのご支援は、ウォーターエイドが活動する他の国や地域でさらに多くの人々に清潔な水を届けるために使われます。ウォーターエイドの活動を通じ、さらに多くの村や地域で、より多くの人々が清潔な水を使うことができるようご支援をお願いします。