【活動レポート・ブログ】モザンビーク:ニアサ州クアンバ郡において、保健医療施設の水・衛生を改善する

Filomena Fabiaõ washes some used medical utensils in the maternity ward at the health centre in Mecanhelas. Niassa Province, Mozambique, Jul 28, 2022.
Image: WaterAid/ Etinosa Yvonne

世界の最貧国のひとつであるモザンビーク北部のニアサ州では、60%の人々が貧困ライン以下で暮らしており、清潔な水を利用できるのは人口の38%、適切なトイレを利用できるのは27%にすぎません。クアンバ郡では、この数字はさらに悪化します。適切なトイレを利用できるのは人口の24%、そして4割もの人々が野外排泄をしています。

ウォーターエイドは1995年からこの地域で活動してきました。現地政府の努力もあって、現在、クアンバ郡の約半数の人々が清潔な水を利用できる状況にあります。とはいえ、今なお、半数の人々が不衛生な水を飲むしかなく、病気が蔓延しがちです。

郡の職員であるアブダラ・ムエメダ・サビテさん(37歳)は話します。
「この郡の最大の問題のひとつは、保健医療施設に清潔な水がないこと、そしてトイレもないことです。クアンバ郡全体のほとんどの保健センター・診療所には水道もなく、水洗トイレもありません。」

Abdala Muemede Sabite, 37, standing next to a handwashing station, Cuamba District, Mozambique. July 2022.
郡の職員アブダラ・ムエメダ・サビテさん
Image: WaterAid/ Chileshe Chanda

実際、クアンバ郡にある保健医療施設のうち、施設内で清潔な水が得られるのは、21%にすぎません。ウォーターエイドはこの冬、人々の健康と命を守る病院や診療所に清潔な水を届けるために、冬募金へのご協力をお願いしています。

 

診療所に水道がなく、患者が別の病気に感染することも

クアンバ郡にあるメリポ診療所。ここも、診療所の敷地内に水道がなく、質の高い医療サービスを提供するのに苦労している診療所のひとつです。ここで働くドゥルス・マーティンさんは、1年半ほど前から、予防医療専門家として、子供の予防接種プログラムを担当しています。これはドゥルセさんにとって、研修を終えてから初めての仕事です。

Dulce Martins, 22, a Preventative Medicine Technician innoculating a newly born baby at Meripo health centre in Cuamba District, Mozambique. July 2022.
赤ちゃんに予防接種を行うドゥルセさん
Image: WaterAid/ Chileshe Chanda

「メリポ診療所に来た当初、楽しいと感じたと同時に、新しい地域で言葉も違うので、少し大変でした。しかし、ここで以前から働く同僚たちが、私が新しい仕事に慣れるのを助けてくれました。歓迎してくれるコミュニティなので、ここで働くのが好きです。不満はありません。

この国では、病気を減らすためには、治療するよりも予防する方が良いということで、予防の仕事を選びました。予防をすることで、新型コロナウイルス感染症のような病気の流行を防ぐことができるからです。

医療従事者になろうと思ったきっかけは、人々の命を救いたかったからです。通常、病院には水道がなければなりませんが、ここには水道がなく、手押しポンプ式の井戸でくんだ水を使うしかありません。トイレや診療所の入り口でも、水道水がない代わりに、いたるところでバケツを使っています。もし水道があれば、蛇口をひねって手を洗うことができるのですが。病気を治すために診療所に来た人が、何らかの病気に感染して帰っていくこともあるのです。トイレを使った後に手洗いができる水がなければ、その後に何かを食べて下痢をする可能性もあります。

私は人々に、どのように病気を防ぐのか教えています。しかし、それを行うための設備がなければ、私が伝えたことを人々が実践することができません。清潔な水とトイレがなく、手洗いができないことで、私が果たせる役割が限られてしまうと感じています。」

この診療所で、同僚とチームとして働けることは素晴らしいことです。私は同僚を家族のように思っているんです。」

ドゥルセさんが信頼する同僚・仲間たちと一緒に安心してこの診療所で働き、「人々の命を救いたい」「人々に病気を予防してほしい」という想いを実現するためには、この診療所に清潔な水とトイレ、そしていつでも手洗いできる環境が必要です。

Ricardina Cavinga, 41, washing linen used by her daughter Isabel during delivery at Meripo health centre in Cuamba District, Mozambique. July 2022.
娘がメリポ診療所で出産したときに使っていたシーツを、診療所裏手で洗うリカルディナさん。本来は室内で洗濯したいが、設備内に水がないためここで洗うしかないと話す。
Image: WaterAid/ Chileshe Chanda

ウォーターエイドの活動

ウォーターエイドは2022年6月、この地域で3年間の新たなプロジェクトを開始しました。クアンバ郡で最も水・衛生が行き届いていない保健医療施設5か所を、清潔な水と適切なトイレ、安全な廃棄物処理設備、そして良好な衛生状態を備えた施設に変えていきます。また、この取り組みを「モデル」として、現地政府に対して、保健医療施設の水・衛生状況の改善に注力するよう働きかけていきます。

保健医療施設5か所では、2か所で給水システムを新設、3か所で既存の掘削井戸を使いやすい給水システムに改修します。また、すべての保健医療施設に手洗い場を設置し、廃棄物処理の設備としくみ、色分けしたゴミ箱を設置するほか、2か所で新しいトイレ棟を建設する予定です。

また、ウォーターエイドは、現地パートナーと連携し、コミュニティ組織や医療従事者を対象に、衛生トレーニングを実施します。さらに、保健医療施設で新設・改修する給水システムが持続可能であるよう、住民が参加し、給水システムの維持管理に責任を持つ「水委員会」を立ち上げます。

そして重要なのは、本プロジェクトを通じて、現地政府による水・衛生の取り組み強化を働きかけていくことです。ニアサ州では、水・衛生予算のうち95%が給水システムの運用、特に人件費にあてられており、給水システムの修理や新設には限られた予算しか残されていません。

ウォーターエイドは、現地政府と協力し、資金確保のためのトレーニングなどを通じて、水・衛生分野への資金を拡大するよう働きかけていきます。さらに、給水システムの持続可能性を阻む一因であるスペアパーツ(交換部品)を、各地域で入手することができるよう、関連するワークショップの開催、潜在的な業者への技術・資金・経営面でのサポート、村にあるスペアパーツ店の広報支援などにも取り組んでいきます。
 

水と衛生が届いた保健医療施設

ウォーターエイドの以前のプロジェクト(2018年~2021年)によって、施設内で清潔な水とトイレが利用できるようになり、手洗いが可能となったメカニェラス診療所では、そこで働く保健医療従事者や利用者たちが、大きな変化を実感しています。

清掃員のマリア・レオノアさんは話します。
「(以前は)大変でした。井戸から水をくんで、ここにあるバケツ全部を使って掃除をしなければならなかったのです。救急サービスに連絡する人、トイレを使用する人がどれだけいるか想像できますか?1日に7回も井戸に水くみに行かなければならなかったのです。でもそれはもう過去の話です。どの病棟も常に清潔なので、水くみで疲れるなんてことは考えもしません。蛇口からは常に水が出るので、汚れを見つけたらすぐに掃除しています。嬉しいですね。水は私にとってとても大切なものです。水がなければ生きることはできませんから。」

ヴァレリアさんは、メカニェラス診療所から歩いてすぐのところに住んでおり、自分や自分の子どもが病気になったときに何度も診療所を利用してきました。この診療所に水・衛生が届いた後、ここで行った出産について、ヴァレリアさんは、「素晴らしい経験だった」と語っています。

「水は命を救います。水のないところに命はないのです。お医者さんが、手洗いによって病気を防いでいるのだから、私もそうしないといけませんね。また、お医者さんが手を洗ってくれるので、その手によって感染が広がることがない、という安心感があります。」

Valéria Estêvão with her baby Pierpina, at the Mecanhelas health centre. Niassa Province, Mozambique, Jul 28, 2022.
「病院の先生が石けんで手を洗えるようになり、私は安心しました」と話すヴァレリアさん
Image: WaterAid/ Etinosa Yvonne

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