東ティモールの地域課題を把握し、それを解消する
ウォーターエイド・東ティモールは、さまざまな制約が数多くある環境で、水、衛生設備、ならびに衛生習慣に関するサービスおよび維持管理を全面的に改善しようと活動を続けています。さらなる持続可能性の向上をめざし、「地域全体で取りくむアプローチ」(District-Wide Approach: 地方政府と連携しながら、特定の地域(県、郡など)全体を対象に、その水・衛生の普及を阻む課題を解消し、水・衛生の普及率100%を実現するアプローチ))をどのように活動プログラムのなかに組みこんでいるのか、東ティモール担当代表のアレックス・グランブリーが解説します。
ウォーターエイド・東ティモールは、持続可能な水・衛生関連のサービスについて、また、地域全体で取りくむべき有効なアプローチとは何か、ずっと検討してきました。
東ティモールは山の多い小さな国で、人口120万人の大半が農村部で暮らし、自給農業を営んでいます。東ティモール政府は、これらの村ごとに、自発的な水利用者グループが結成され、村内の給水設備や衛生設備の維持管理を担っていくことを期待しています。そこで、ほかの多くの開発途上国と同様、政府がその水利用者グループのメンバーに対して、設備の修理方法を教える短期のトレーニングを実施し、運営費を賄うための利用料を集めています。
しかし、このような村レベルの維持管理モデルについて検証した結果、期待通りには機能していないことが明らかとなりました。東ティモールでは多くの場合、こうした「サービス」の実施状況は悪く、給水設備は修理されないまま放置されたり、故障つづきで安定的に動かなかったりしています。もしこのような状態が続けば、2030年までにすべての家庭の蛇口から信頼できるきれいな水が出るようにし、安全な水の供給率100%をめざすというグローバル目標6は達成できそうにありません。
地域の課題を把握し、それを解消すること
ウォーターエイド・東ティモールは2005年の活動開始以来、プログラムを充実させていくなかで、活動の重点はしだいに、農村部の給水・衛生設備を持続させること、ならびに、多くのイニシアチブを通じて地方政府と村をつなぐことへ変わっていきました。そして活動の一環として、水利用者グループ連合会の立ちあげを支援、さらに、村内の給水サービスを記録するスコアカードを導入しました。村の人々と、水利用者グループが、村の給水サービスについてカードにスコアを記入し、改善が必要な場合は、村の人々と水利用者グループが話し合って、改善のための計画を立てることが可能になりました。
この水利用者グループ連合会は、複数の水利用者グループ(=メンバー)を代表する統括組織へと発展していきました。連合会のメンバー同士によるサポート体制(ピア・サポート)を構築、また、地方政府がサービス運営にあたって必要な最新情報の収集に協力したり、各水利用者グループと地方政府との橋渡し役を常時務めたりしています。
水利用者グループ連合会が日常的に行っている業務の1つに、利用者グループが活動を停止してしまった給水設備を見つけ、地方政府職員の協力のもと、グループが再始動するためのトレーニングを実施する、ということがあります。多くの利用者グループは、給水・衛生設備の初期計画や建設の段階で結成されたために、運営やメンテナンス、利用料徴収といった地道な仕事がはじまると関心を失うことが分かってきました。
地方政府は、その地域の給水サービスの改善に向けて活動する利用者グループ連合会の活動に協力し、その働きを評価していますが、その活動資金はウォーターエイドに依存しているのが実情です。いつかウォーターエイドがこの地域の活動を終えて去るときには、連合会がメンバーの会費と政府からの補助金によって成り立つつようになること、そして給水・衛生サービスが持続するために、連合会が、メンバーの利益の実現のために活動すると同時に、地方政府と連携しながら、メンバーのニーズを把握して対応するようになることを、私たちウォーターエイドは願っています。
村内の給水サービスについて、得点をつけて評価するスコアカードを導入したことは、地方政府や水利用者委グループなどのステークホルダーが、給水・衛生サービスを持続させることの重要性を理解し、そのためのアクションを引き出すためには、とても有効な方法でした。また、スコアカードの導入によって、ウォーターエイドとパートナー団体は、村の人々が期待する給水サービスのレベルと現在の給水サービスのレベルについて把握することが可能になり、ひいては給水サービスを改善するための具体的な活動計画を水利用者グループとともに作りあげ、その実施プロセスを追跡することも可能になりました。
地域の持続可能なサービスに向けた取り組み
水利用者グループと村の人々の間で合意に至った今後の計画は次のようなものです:
・水の利用者(村の人々)は利用料を滞りなく納め、給水設備をより丁寧に扱うこと
・水利用者グループは資金の運用に関して透明性を保ち、説明責任を果たすこと
・水利用者グループは村のリーダーたちとの連携を強化すること
・政府の現場担当者はより頻繁に村を訪問すること
将来的にはこの計画が村議会で扱われ、村全体の水・衛生サービスの評価および最新計画が、議会の場で議論されることを目指しています。
水利用者グループ連合会の立ち上げとスコアカードの導入という2つのイニシアチブは、ウォーターエイド・東ティモールが地域全体で取りくんでいる活動の一部であり、互いに影響を受けつつ、進化発展をとげてきました。そして、今後もウォーターエイドが政府や水利用者グループを支援しながら、持続可能な水・衛生サービスを届けるなかで、さらに進化しつづけるはずです。さらに情報が欲しい方は、ハロルド・ロックウッドのケーススタディ(英語)をご覧ください。
ウォーターエイド・東ティモール 現地代表 アレックス・グランブリー