【活動レポート・ブログ】インド:北部にあるビハール州でコミュニティの人々と共に水質汚染の課題に取り組む現地スタッフ

ウォーターエイドでは、水・衛生プロジェクトを実施する国や地域で現地スタッフやパートナー団体のスタッフがコミュニティの人々とともに活動することで、水・衛生の改善に取り組んでいます。
そのようなスタッフの1人、ウォーターエイド・インドのフィールド・コーディネーターであるルビは、水・衛生だけでなく、公共政策やジェンダー平等に至るまでさまざまな分野で調査やコミュニティ担当として長年働いてきました。
現在、ルビが担当しているのは、インド北部にあり、水質汚染が深刻なビハール州、ブクサール県とバーガルプル県のプロジェクトです。本プロジェクトでは、浄水システムを構築することで5,000人が安全な水を得られるようになること、そして10か所の村で水質管理トレーニングを行うことで、コミュニティ中心で水質の維持管理を運営し、さらに3,000人が安全な水を使えるようになることを目指しています。
プロジェクトの一環として、ルビはコミュニティの人々を対象に、手押しポンプ式井戸からくんだ水の水質、特に味や色についてのヒアリングを1年以上かけて行ってきました。ルビは、ビハール州の38県すべてで、手押しポンプ式井戸からくんだ水を飲んだことがあると言い、「水を一口飲めば、水質が悪化していることが分かります」と話します。
現場に出て、コミュニティの人々と直接関わることで見えてくる課題がある、とルビは言います。例えばブクサール県はビハール州でも特にヒ素汚染被害が深刻な地域のひとつであるにもかかわらず、ほとんどの住民たちは地下水にヒ素が含まれていることを知らなかったと言います。鉄分が多く含まれた水は悪臭や金属的な味、水を入れた容器が黄色くなるので汚染されていることが目に見えて分かりますが、ヒ素を含めそれ以外の汚染物質のほとんどが無味、無臭、無色であるため、汚染について人々に理解してもらうことは簡単ではありません。
また、訪れた村々では、長年にわたるヒ素汚染によってがんの罹患率が徐々に上がっており、「亡くなった人もいれば、がんであることを認めたくない人もたくさんいました」と言います。手のひらや足の裏に病変やほくろのような変色した斑点が見られるヒ素性角化症に苦しむ人もいます。「目に見えて悪化している人もいました。足の裏の病変のために歩行が困難になると、その部分を刃物で切っていました」と、実際に目の当たりにした深刻な状況を振り返り語ります。
ヒ素がほぼ完全に取り除ける新しい浄水フィルター装置を試験的に20家庭に配布し、使い方や掃除方法に関するトレーニングを実施すると決まったときの興奮を今でも思い出すと言います。長年、ヒ素汚染による健康被害を心配する人々を目の当たりにし、十分な支援ができないことに落ち込むこともあった分、喜びはひとしおでした。ウォーターエイドが配布したフィルターを設置後、ヒ素汚染による皮膚疾患や消化器疾患に苦しんでいた人々に改善傾向が見られたと言い、フィルターの設置を希望する人が増えていると言います。
州都パトナにあるがん研究機関の調査により、この地域で生産された野菜などの食物にもヒ素が含まれていることが明らかになるなど、課題は尽きません。しかし、解決策を見いだし、それを自分のような現場スタッフがコミュニティに広めていくことにルビは希望を抱いています。「私の仕事によって、コミュニティの人々の暮らしに改善がもたらされていることを嬉しく思いますし、やってきてよかったとやりがいを感じます」
ウォーターエイドジャパンはこの夏、深刻な水・衛生危機に直面しているインドの人々の「夢」を叶えるため、皆さまにご寄付を呼びかけています。安全な水を切に願う人々に水と希望を届けるため、夏募金に、どうかご協力をお願いします。