【プレスリリース】世界では10人に1人が清潔な水のない保健医療施設を利用していることが明らかに

2024年10月、世界保健機関(WHO)とユニセフ(国連児童基金)の共同モニタリングプログラム(JMP)が、世界で10人に1人が清潔な水のない保健医療施設で治療を受けているという深刻なデータを示す報告書を発表しました。このことは、約8億人が、本来健康状態を改善するために訪れた場所で、予防可能な感染症にかかるリスクにさらされていることを意味しています。保健医療施設に清潔な水がなければ、医師や看護師は手洗いなしに治療や出産に対応するしかなく、こうした環境が保健医療施設で感染症が拡大する要因となっています。
今回の報告書によると、2023年時点で、世界の保健医療施設では7億4200万人(世界人口の9%)が清潔な水を利用できず、6億6000万人(8%)がトイレを含む衛生設備を利用できず、7億2200万人(9%)が治療を行う場所またはトイレの近くで手を洗うことができません。
政府が治安や保健医療、教育などの基本的サービスを提供することが困難、または市民の権利を守ることができないなど「脆弱な状況にある国」の状況は特に深刻です。アフガニスタンやコンゴ民主共和国など「脆弱な状況にある国」の60国か国では、約20億人が水・衛生の状況が悪い保健医療施設を利用せざるをえません。こうした国にある保健医療施設では、2023年の時点で、7億1700万人(37%)が清潔な水を、11億人(54%)が基本的な手洗い設備を、そして16億人(81%)が基本的なトイレを利用できずにいます。
また、今回の報告書は、保健医療施設における水・衛生のデータモニタリング自体が困難である点も指摘しています。保健医療施設の水・衛生関連のデータが利用可能な国は、2022年の16か国から増加したものの、2024年時点で29か国にとどまっており、グローバルレベルの統計をまとめるには不十分であるとJMPは結論づけています。水・衛生の現状を正確に把握し、課題を解決するためにも、こうしたデータは極めて重要です。
ウォーターエイドのグローバル・アフェアーズ・ディレクターであるキャサリン・ナイチンゲールは次のように述べています。
「JMPの最新報告書は、世界中の保健医療施設において水・衛生が不十分であるために、予防可能な病気で数百万人もの命が失われていることを明らかにしました。これは悲劇であり、各国のリーダーたちの失策を象徴するものです。
保健医療施設において手洗い設備と適切なトイレ、清潔な水を確保することは、最も効果的な感染症予防策ですが、国際的な保健の議論では幾度となく後回しにされ、命を守ることに直結したこうした予防策の価値が軽んじられてきました。このような状況を放置するわけにはいきません。
2024年9月に開催された国連総会では、水・衛生に深刻な課題を抱える国々が、薬剤耐性感染症の拡大を防ぐため、保健医療施設の水・衛生を改善するための支援を開発パートナーに求めました。世界のリーダーたちはこうした訴えに耳を傾け、すべての保健医療施設に清潔な水と衛生環境を確保するため、即時に行動を起こすべきです。何もしないという選択肢はありません」
この新たな統計は、清潔な水、手洗い設備、廃棄物管理など必要な設備が欠如している保健医療施設内で罹患した敗血症や尿路結石などの感染症により、年間で推定約950万人が命を落としていること、そしてその3分の1は子供であることを明らかにしたウォーターエイドの最新の調査結果に基づいています。ウォーターエイドの調査によって、特に出産する女性と新生児が、保健医療施設内での感染(院内感染)に対して脆弱であることが明らかになるなか、安全かつ尊厳を持って出産するためには、清潔な水と衛生環境が不可欠です。さらに、保健医療施設内での感染によって、女性の健康への負担、ならびに主に女性が看護・介護を担う負担といった経済的損失も生じています。
ウォーターエイドが低中所得国132か国の保健医療施設のデータを分析した結果、保健医療施設で感染症に罹患した女性たちは、それがなければ、早くに退院できていたはずであることもわかりました。こうした憂慮すべきデータにもかかわらず、水・衛生分野への政府開発援助(ODA)は、近年減少しており、ウォーターエイドは各国政府に対し、低中所得国の保健医療施設における水・衛生に優先的に取り組むよう強く求めています。