【ニュース】世界水の日で報告書:気候変動の脅威と、立ち向かう取り組みを紹介

Posted by
WaterAid Japan
on
20 March 2020
In
水/Water
Maimouna Dembele, 70, president of the Benkadi women's group, standing next to shrubs in the bush in the village of Kakounouso, Samabogo, Circle of Bla, Segou Region, Mali, February 2019.
Image: WaterAid/ Basile Ouedraogo

国連が定めた3月22日の「世界水の日」を前に、ウォーターエイドは2020年3月19日、報告書「気候変動の最前線 2020年 世界の水の現状」を公表しました。世界で最も貧困に苦しむ国の人々が清潔な水を使うことを、気候変動がいかに困難にしているかについて調査し、バングラデシュやマリなど7カ国の実情を紹介しています。報告書はまた、気候変動の影響に対処するために、現在、これらの国々が受け取っている資金(気候変動ファイナンス)の金額が、あまりに少ないことに焦点を当てています。

 

バングラデシュ:気候変動の影響で地下水の塩分濃度が急上昇

バングラデシュは、気候変動に対する脆弱性が高い国のひとつに数えられています。ノートルダム・グローバル適応力指数(Notre Dame Global Adaptation Index)により、気候変動に対し最も脆弱で適応力がない国のランキングで第36位に位置付けられています。人口の3分の2は海抜5メートル以下の土地に暮らしていて、常に河川の氾濫や大潮による冠水被害の危険にさらされています。

バングラデシュ西南部、クルナ県のマニクハリ村は、深刻な水不足のため日々の暮らしにも困窮しています。この村は気候変動の影響が特に大きく、海面上昇によって地下水の塩水化が進んでいるため、清潔な水の確保がますます困難になっています。水の塩分濃度の急激な上昇により、土壌の質や作物の収穫、沿岸部の生物の多様性、村の人々の健康が脅かされています。この水を避けようと思うと、病気になる危険を冒してでも保護されていない川などの水を飲み水に利用したり、遠くまで歩いて安全な水を探すしかありません。

ひび割れた土地の上を歩き、水くみに向かうバングラデシュの女性
ひび割れた土地の上を歩き、水くみに向かうバングラデシュの女性
Image: WaterAid/ Abir Abdullah

マリ:気候変動の影響を低減するため女性グループが活動

適応力指数で脆弱性が世界第9位とされているマリ。中南部の半乾燥地域にあるセグー州のカクヌソ村では、気候変動の影響でどんどん気象パターンが予測不能になっています。乾期が以前より長く続くようになり、気温も上昇しているために、農家の人たちは大きな打撃を受けています。一方で、その影響を低減する取り組みが動き出しています。

ウォーターエイドとパートナーの協力のもと、地域の女性たちのグループが組織されました。代表に就任したマイモウナ・デンベレさん(70歳)や他のメンバーは、村の水源の水位を正しく監視できるように、水管理技術の訓練を受けています。一度は水が干上がり作物も枯れ絶えてしまった土地で、現在は飲み水を確保できるようになり、女性グループは地元の農園で販売用の作物を栽培・収穫しています。

 

開発途上国が気候変動対策のために受け取る資金はわずか

すべての人が、生きていくために水を必要とします。増大する気候変動の脅威から人々を守るには、何よりもまず天候に左右されない安全な水源が必要です。極端な干ばつ、海面上昇、洪水の頻発、強烈な嵐など、気候変動の直接的で広範な影響の多くは水に関連する災害や気象現象として表れ、そのすべてが人々の安全な水へのアクセスを脅かします。

エチオピアは、適応力指数で脆弱性が世界第23位。そのエチオピアが、気候変動の緩和策(二酸化炭素排出量の削減など影響の軽減)および適応策のために受け取っている資金は1人当たり年間約0.39ドル(約40円)です。開発途上国は気候変動を引き起こす二酸化炭素などの排出量は非常に少ない一方、その影響への備えは極めて脆弱で、そうした国々が受け取る支援の金額もわずかです。西アフリカのニジェールは、同じ指数で第2位ですが、気候変動対策のために受け取っている資金は1人あたり年間0.82ドル(約90円)です。

手掘り井戸で水くみの順番を待つエチオピア・アムハラ州、ゴラド村の人たち
手掘り井戸で水くみの順番を待つエチオピア・アムハラ州、ゴラド村の人たち
Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

その他の報告書のポイント:

  • 世界の国の半数は、気候変動に対処するために受けている資金(気候変動ファイナンス)の額が年間1人当たり5.20ドル(約550円)未満です。
  • 気候変動への適応を支援するために支出されている資金の金額は、気候変動ファイナンスの総額の5%です。気候変動に対し最も脆弱な国々に対する支出も、清潔な水へのアクセスのような重要なサービスへの支出も少なく、何十億もの命が危険にさらされています。
  • 10%以上の人々が家の近くで水にアクセスできない国の半数は、水・衛生サービスの気候変動適応のために受け取っている資金が年間1人当たり84セント(約90円)未満です。
  • 自宅の近くで水にアクセスできる人が最も少ない10カ国は、水・衛生サービスのために気候変動ファイナンスから平均で年間1人当たり1ドル(約110円)を受け取っています。人口の半分近くが自宅近くで水にアクセスできないマダガスカルが受け取っているのは、年間1人当たり17セント(約20円)です。
  • アフリカの二酸化炭素排出量は、全世界の排出量の4%未満です。3分の2以上のアフリカの国は、清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣に関し、気候変動ファイナンスから受け取っている金額が年間1人当たり1ドル(約110円)に達しません。

 

報告書「気候変動の最前線 2020年 世界の水の現状」は、こちらから