【プレスリリース】11月19日は「世界トイレの日」:まもなく開催のサッカーW杯出場国において、すべての人が安全なトイレを利用できるようになるのは2159年

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WaterAid Japan
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18 November 2022
The old latrines at Kabre Primary school. Ghana, December 2019
Image: WaterAid/ Apag Annankra

11月19日の「世界トイレの日」に際し、ウォーターエイドは、まもなく開催されるワールドカップカタール大会出場国のすべての家庭で適切なトイレが利用できるようになるのは、2159年になると分析しています。カタールでは、W杯開催に向け、会場内外で巨大な資金が費やされている一方で、出場国であるガーナにおいて、すべての家庭が適切なトイレ(他の家庭と共有していない、改善されトイレ)を利用できるようになるのは2103年、カメルーンでは2159年になると推定しています。 

「世界トイレの日」とサッカーW杯カタール大会を前にしたこの分析は、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6「安全な水とトイレを世界中に」という目標への取り組みが、いかに遅れているかを示しています。 

現在の進捗ペースでは、アフリカに住むすべての人が家庭で適切なトイレを使えるようになるまでは平均136年、安全に管理されたトイレを利用できるレベルに到達するまでには217年かかることが明らかになりました。さらに、アフリカにおいて、野外排泄を余儀なくされる人をゼロにするまでには、平均22年かかると分析しています。 

また、アフリカの各国の状況を見てみると、このままでは、すべての人が基本的なトイレを利用できるようになるまでに、ブルキナファソでは204年、エチオピアでは323年かかるとみられています。リベリアでは、基本的な水サービスの提供は順調に進んでいるものの、すべての人がトイレを利用できるようになるのは2392年。今から370年後と推定されています。 

これらの数字の算出は、気候変動の影響を加味していないため、未来のトイレ事情はさらに悲惨なものになる可能性があります。ウォーターエイドが最近モザンビークで実施した調査によると、2000年から2014年の間に、適切なトイレを利用できる人の割合は、人口の28%まで増加した一方、それ以降は、サイクロンや洪水によるインフラの破壊が主な原因で19%にまで低下していることがわかりました。 

このようなトイレの普及の遅れは、ドナー国、政府、民間セクター等による、衛生設備・トイレへの資金提供が不十分であること、さらに開発途上国においては、この課題に取り組む人材の不足、そしてこの課題への取り組みが全く優先されていないことが原因であると、ウォーターエイドは指摘しています。 

ウォーターエイドの衛生(サニテーション)分野のシニアポリシーアナリストであるアンドレアス・フエソ・ゴンザレスは、次のように述べています。「トイレは楽しかったり、ワクワクするようなものではありません。しかし、トイレは命を救うものです。トイレがなければ、病気がまん延したり、人々が命を落としたり、貧困の連鎖に陥ったりします。清潔で適切に管理されたトイレがあれば、学校で勉強することができ、仕事の生産性が向上し、ビジネスも上向きになります。女性は安心して月経の日を過ごすことができます。トイレが整っていなければ、コミュニティや経済全体に悪影響がもたらされるのです」 

他の国と比べて、トイレの改善が進んでいる国もあります。南アフリカでは、今後21年以内に、全世帯で適切なトイレが利用できるようになると見込まれています。すべての人がトイレを利用できるようになるまでに100年、200年かかるという推定には、政府が今後トイレの課題を優先的に取り組んだり、改善を大幅に加速化させたりする可能性が考慮されていません。もし各国政府が必要な策を講じ、取り組みを進めれば、すべての人が適切なトイレを利用できる状態になるまでにかかる期間は劇的に短縮される可能性があります。 

低中所得国において、トイレ・衛生設備に関する政策や計画の推進が遅れている原因の一つは、財源の不足にあります。世界保健機関(WHO)が主導する最新の調査(Global Analysis and Assessment of Sanitation and Drinking-Water)において、トイレに関する計画実施に必要な資金(少なくとも必要量の4分の3)があるかどうかを各国にヒヤリングした結果、トイレに関する計画実施のために十分な資金を有しているのは、中所得国では22%、低所得国では15%に過ぎないことが判明しました。 

ドナー国の取り組みも十分とは言えません。衛生設備に向けた政府開発援助(下水処理などの大きなインフラを除く)は、2015年から2019年にかけては横ばい、そして2020年には世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により22%減少しました。2021年にウォーターエイドジャパンが実施した調査によると、日本政府による衛生設備向けODA(2014年~2018年)において、低所得国向けが占める割合は数パーセントのみということがわかっています。  

ウォーターエイドは、各国に対し、衛生設備への予算、衛生設備への援助予算を直ちに倍増するよう呼びかけています。また、設備・インフラへの資金拠出だけでなく、人的資源、専門知識、そして衛生サービスを今後長期的に維持するためのシステムや政策にも資金を充てるべきであると主張しています。 


ウォーターエイドは、WHOとユニセフの共同モニタリングプログラム(JMP)を用いて上記の分析を行いました。予測数値は、2015年、2020年の進捗状況を元に計算されています。 

世界の衛生設備(トイレ)の達成レベルは下記の通り分類されています。

  • 安全に管理された衛生設備(トイレ):42億人(54%) 
  • 基本的な衛生設備(トイレ):24億人(24%) 
  • 限定的な衛生設備(トイレ):5億8,000万人(7%) 
  • 改善されていない衛生設備(トイレ):6億1,600万人(8%) 
  • 野外排泄:4億9,400万人(6%) 

出典:JMP (2021) Progress on household drinking water, sanitation and hygiene 2000-2020: five years into the SDGs