【プレスリリース】国連のAMR(薬剤耐性)に関する政治宣言、水・衛生の喫緊ニーズを見落す

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1 October 2024
Image: WaterAid/Wimbledon Foundation/Dennis Lupenga


2024年9月26日、国連総会にてAMR(薬剤耐性)に関する第2回ハイレベル会合が開催され、政治宣言が採択されました。今回採択された宣言は、AMRによる危険を回避するうえで、水・衛生への取り組みが果たす重要な役割を正しく認識し、2030年までにすべての国のすべての保健医療施設で基本的な水とトイレの利用、そして廃棄物処理を実現することを確約するものです。

一方で、宣言の大部分が研究や開発などの分野に重点を置いています。研究開発は極めて重要であるものの、予防よりもはるかに多くの費用がかかるうえ、事後的な対応となりがちであるため、ウォーターエイドは、この政治宣言が、ARM拡大を防ぐ手段として水・衛生に重点を置くよう、働きかけてきました。

ウォーターエイド・イギリスのCEOティム・ウェインライトは、次のように述べています。

「今回のAMRに関するハイレベル会合での宣言は、この極めて深刻な健康への脅威に対する国際的な取り組みにおいて非常に重要な節目となります。しかしながら、今回もまたAMRに対する第1の防御策である水と衛生への取り組みは、すぐに活用できる状況にあるにも関わらず、その重要性が見落とされています」

「宣言では、水・衛生がAMRによって引き起こされる命の危険を回避するために果たす役割を強調することに欠けており、治療と並行して予防の利点を示す明確な証拠があるのにも関わらず、基本的な感染予防にもっと重点を置くべきだという低所得国からの緊急要請を無視しています」 

「時が経つほどに耐性は進んでいきます。国連加盟各国の首脳は水と衛生に関する行動と財政支援を早急に約束し、前進させなければなりません。そうしてこそ、世界中のコミュニティの健康を真に守り、再び世界的な大流行を避けることができるのです」 

今夏、医学論文雑誌ランセットにて、2050年までに新薬によって1100万人の命を救える一方で、保健医療や感染予防を改善することは9200万人の命を守ることにつながることが報告されました。また、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)は、水・衛生のような予防措置への投資は、AMRに関連する死亡例をアフリカで毎年20%を回避できる可能性があると注目すべき報告をしています。

しかし、世界の半数近い保健医療施設では、今も基本的な衛生サービスを利用できません。そのため、感染症の温床を作り出し、世界的なAMR対策に深刻な影響を与えています。

ウォーターエイドは、国連加盟国に対して、今回のAMRに関する政治宣言で約束されたことを実現するため、緊急財政支援を可能にするよう呼びかけています。

  • すべての国が、すべての保健医療施設で、基本的な水・衛生、そして廃棄物サービスを利用できること
  • 2030年までに、90%の国で、WHO(世界保健機関)による最低限の感染予防管理プログラム(IPCプログラム)のすべてを満たしていること

これらの目標を実行するためには、以下のことが重要です。

  • 低中所得国の政府は、国家行動計画や予算の中で保健医療施設における水・衛生に優先的に取り組むべきです。
  • 国際開発金融機関を含むドナーは、保健医療施設の水・衛生サービスに必要な資金と維持に必要な資金を確保し、利用可能にする責任があります。
  • 国連加盟国は、今年11月に開催される第4回AMRに関する世界ハイレベル閣僚級会合に先立ち、水・衛生に関する行動を約束し、進展させなければなりません。

今回の国連総会で、ウォーターエイドは、気候変動からAMRに至るまで地球規模の主要課題に取り組むNGOとして、水・衛生を優先することの重要性を訴えるために、加盟国と連携して、複数のサイドイベントを開催しました。

国連総会にて、マラウイの保健大臣、クムビゼ・カンドド・チポンダ氏は以下のように述べました。

「国際社会は、保健医療システムを守るための取り組みを強化し、マラウイのように不均衡な影響を受けている国々において、AMRの対策を加速させる具体的な計画を立てなければなりません。深刻さを増すAMRの危険性に立ち向かうことも、悪化の一途をたどる脆弱な立場の人々への影響を軽減することも、マラウイだけではできません」

また、南アフリカの水・衛生大臣であるペミー・マジョディナ氏は、次のように述べました。

「南アフリカでは、水を手に入れることは基本的な権利であり、憲法にも明記されています。水がなくては、経済成長も、健全な社会もあり得ません。しかし、政府だけでそれができるのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。だからこそ、民間セクターと強固な連携を構築する必要があるのです。電気がなくても、ガスや薪で即席の調理ができます。しかし、もし水がなければ、水は他のものに置き換えることができません。水は代替できないのです。保健医療分野において、水がなければ何もできません。水は命、そして衛生は人々の尊厳です」