【プレスリリース】G20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けて:最貧国の保健医療施設に水・衛生を

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7 April 2021
Rhoda Phandama, 30, nurse and midwife, washing her hands at Katimbira Health Centre, Nkhotakota, Malawi, April 2019.
Image: WaterAid/ Dennis Lupenga

4月7日夜(日本時間)、G20の財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、新型コロナウイルス感染症のパンデミックについて議論されます。ウォーターエイドは、同会議に参加する世界のリーダーたちに対し、包括的な債務救済措置、そして世界の保健医療施設、特に最貧国の病院や診療所において、清潔な水とトイレを利用でき、手洗いを実践できるようにするために、12億ドル以上の新規の資金拠出が必要であると呼びかけています。 

新型コロナウイルス感染症の拡大以降、富裕国は平均でGDPの10%[1]近く、20.6兆ドルの莫大な資金を自国の経済を支えるため、また、パンデミックからの回復のための施策に投じてきました[2]。上記のとおりウォーターエイドが現在、水・衛生の改善のために呼びかけている資金は12億ドル。これは20.6兆ドルと比較すると非常に小さい割合です。12億ドルの資金によって、保健医療施設の水・衛生の状況を改善することができ、将来的なパンデミックに備えることも可能になります。

世界では、18億人の人々が、給水サービスがない保健医療施設で働く、またはそのような施設を利用しており、新型コロナウイルス感染症や他の感染症に対して脆弱な状況に置かれています。保健医療施設において、医師や看護師、患者が、水と石けんで手洗いすることは、感染症の拡大を抑えるために不可欠です。それにもかかわらず、世界では、4分の1の保健医療施設に清潔な水がなく、3分の1に治療する場所に手洗い施設がなく、10分の1に適切なトイレがありません。世界の最貧国に絞ってみると状況はさらに悪く、保健医療施設の半数で清潔な水を使うことができません。

G20による資金拠出が実現すれば、感染症によって命を落とす人々の数を減らすことにつながります。石けんで手を洗うことは、新型コロナウイルス感染症の拡大を3分の1に減らすだけでなく[3]、薬剤耐性菌の拡大を抑えることにもつながります。清潔な水や石けんを利用できない保健医療施設では、感染症の予防や治療のために抗生物質の過剰投与や誤った使用が行われており、抗生物質が感染症に対して効かなくなるという憂慮すべき状況が起きています。

世界保健機関(WHO)によると、この資金拠出は、1年で「元がとれた」状態になり、1年後からはリターンが得られる状態になります[4]。しかし、最貧国は、債務危機に直面しており、基本的な水道サービスに投資することもできない状況にあります。例えば、ザンビアが2019年に返済した債務は20億ドル以上であり、これは、国民総所得の11%にあたります。パキスタンは同年、110億ドルの債務を返済。これは、後発開発途上国のすべての保健医療施設に給水設備とトイレ、手洗い設備を設置するのにかかる費用の3倍分に相当します。 

ウォーターエイドが委託し、YouGovが実施した、日本、英国、ブラジル、ナイジェリア、米国を含む15か国18,000人を超える成人を対象とした世論調査では、調査対象者の4分の3(75%)が、最貧国(民間債権者を含む)の債務返済を一時停止し、それらの国の限られた資金を新型コロナウイルス感染症に対応するための水や石けんなど必要なものに使えるようにすべき、と考えていることがわかりました。日本では、調査の回答者の80%が、最富裕国や民間債権者が最貧国の政府からの債務返済を一時停止すべきである、と賛同しました。

ウォーターエイド・イギリスのCEO、ティム・ウェインライトは次のように話します。 

「保健医療施設の水・衛生に12億ポンドを投じることは、悩ましい投資ではありません。今起こっている新型コロナウイルス感染症から命を救うだけでなく、将来のパンデミックとそれが引き起こす困窮から人々を守ることにつながります。昨年、新型コロナウイルス感染症対応に費やされた金額に対して少しの資金を費やすことで、清潔な水がない保健医療施設で治療を受けるしかない何百万人もの人々に、大きな変化をもたらすことができます。 

次のパンデミックが起きる前に、すべての保健医療施設で清潔な水と石けんを使えるようにするためには、これを緊急で取り組むべき課題ととらえ、資金を探す必要があります。最前線の医療従事者が手を洗えない、病院に適切なトイレがない -これでは、病院は病院ではなく、病気の温床となってしまいます。」 

 


[1] 9.7% according to a UNCTAD study and Statista has Japan as largest at 20.9% of its GDP.

[3]Beale S, Johnson A, Zambon M, null n, Hayward A, Fragaszy E. Hand: Hygiene Practices and the Risk of Human Coronavirus Infections.

[4] p3 UHC Day Action Plan, WHO 2020 「Combatting Antimicrobial Resistance through water, sanitation and hygiene and infection prevention and control in health care」より