【プレスリリース】新型コロナウイルス対策で手洗い設備のない30億人に水・衛生を

Posted by
WaterAid Japan
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15 May 2020
Nurse Peu Aranhya, 30, washes his hands in clean water at a sink, Thmor Kol Referral Hospital, Battambang, Cambodia, August 2016.
Image: WaterAid/ Tom Greenwood

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に立ち向かうための最も基本的な手段の一つが、石けんと清潔な水で手を洗うことです。しかし感染が世界的に広がる中にあっても、最貧困層の人々は手洗いもままならず、取り残されたままです。自宅に石けんと水を使える手洗い設備のない人の数は世界で30億人に上ります。ウォーターエイドは、この状況の改善を求めています。

患者・感染者に対応する拠点となる保健医療施設についても、世界では5つの保健医療施設のうち2つで、医師や看護師、助産師らのための石けんや水が使える手洗い設備がありません。保健医療施設が、患者の命を救う場とはならず、医療従事者の命さえ危険にさらす場所となってしまっているのです。

感染症対策を議論するための最も重要な場の一つである世界保健機関(WHO)の年次総会が5月18日から19日まで、オンライン形式で開催されます。総会に先立ち、ウォーターエイドは各国に対し、国民と保健医療従事者の命と安全を守るため、すべての人々が石けんと清潔な水を手に入れられるようにすることを求めています。

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新型コロナウイルス感染症に対しては、確立された治療法やワクチンはなく、感染拡大の防止は手洗いなどの正しい衛生習慣に依存しています。緊急にワクチンや治療薬が必要なことが強く叫ばれる一方で、予防の基本となる水・衛生の問題が顧みられることはほとんどなく、日々、多くの命が危険にさらされています。昨年のWHO総会では、すべての保健医療施設で清潔な水が利用できるようにすることが決議されました。しかし、改善は非常に限られたものでした。

深刻な状況が明らかになっているにもかかわらず、衛生と清潔な水を使えることの重要性は、現在の危機においても、世界のリーダーたちに十分に認識されているとは言えません。各国政府は早い時期から手洗いなど正しい衛生習慣の実践を呼びかけました。しかし、水・衛生の課題に取り組まなければ、自宅で清潔な水と石けんを使うことのできない世界中の30億人の人々や、最前線に立つ何百万人もの保健医療従事者、保健医療施設の利用者たちにとって、手洗いは実践することのできない対策のままです。

これまでの情報によると、新型コロナウイルス感染症に関するWHO総会での議論は、ワクチンや治療法に関するものが中心となり、感染予防の基本である水・衛生アクセスの改善に関することや、水・衛生アクセスを確保するための計画については、あまり議論されない見込みとなっています。

新型コロナウイルス感染症への対策が議論される中、水・衛生へのアクセスの確保の重要性が認識されない状況は続いています。過去2カ間に各国政府や援助機関が表明した新型コロナウイルス感染症に対する緊急援助資金の多くが、水と衛生に関する対策を盛り込んでいません。各国政府や援助機関が表明した開発途上国に対する51件の主要な資金援助のうち、衛生に関して言及しているものは6件だけでした(*)。

マラウイ中部のヘルスセンターで看護師・助産師として働くパトリシア・ムウェネヘリさん。新型コロナウイルスへの不安を感じている
マラウイ中部のヘルスセンターで看護師・助産師として働くパトリシア・ムウェネヘリさん。新型コロナウイルスへの不安を感じている
Image: WaterAid/ Dennis Lupenga

マラウイ中部、ンチシ県のムザンドゥヘルスセンターで看護師・助産師として働くパトリシア・ムウェネヘリさんは、センターに石けんを備えた洗面台が2つあることで、自分は運がいいと考えています。しかし、新型コロナウイルスへの対応には不安を感じています。

「新型コロナウイルスに感染したケースが1例でも出れば、すぐに施設内に広がるでしょう。(感染拡大を防ぐために)必要なものが何もないからです。私は毎日、そのことを心配しています。私は新型コロナウイルス感染者の治療にあたっていた医療従事者たちが命を失っていくのを見てきました。だから私は心配なのです」

欧米などで感染が広がるなか、アフリカでの感染者数は比較的、落ち着いていました。現在、欧米などで感染者数が減少に転じるところが出てきていますが、アフリカでは逆に、ほぼすべての国で感染者数が増加しています。すでに 63,000件以上の症例が報告され、2,000人以上が命を落としています。WHOはアフリカで、1年間に19万人が命を落とすかもしれないとして警戒を強めています。ウイルスは拡散し続けており、世界のすべての国がその影響を受けます。

ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)のウェンディ・グラハム教授は次のように話します。

「1年前のWHO総会は、保健医療施設の水・トイレ・衛生に関する決議を採択し、清潔で安全なケアを提供するための課題の解決に取り組むことを約束しました。残念ながら、目標に対して、実際の進捗はごくわずかなものでした。基本的な衛生環境が整っていないことは、人類の危機であり、新型コロナウイルス感染症は、こうしたことに目をつぶってきたことを強く思い起こさせるものでもあります」

 

ウォーターエイドジャパン事務局長の高橋郁の話

「新型コロナウイルス感染症の対策として、ワクチンと治療法に関しては、議論や大きな資金拠出が続いています。その一方で、感染予防のために最も有効な手段の一つである石けんと水を使った手洗いを広めるための支援、手洗いを可能にするための水・衛生の改善のための議論は、残念ながらあまりなされていません。保健医療施設での水・衛生の改善もあまり進んでいません。私たちは、各国政府や援助機関、さまざまな人たちと協力し、水・衛生のアクセスや衛生習慣の改善について声を上げ、改善のための実践を続けていきたいと考えています」

 

ウォーターエイドのこの問題に関する考え方などは、以下により詳しくまとめています。

Hygiene: the missing first line of defence against COVID-19(英文)

 

(*)新型コロナウイルス感染症に関し、援助機関が表明した開発途上国に対する51件の主要な資金援助について、ウォーターエイドが調べたところ、衛生に関して言及しているものは6件にとどまりました。これは、各国政府や援助機関が公表したもののみについて確認した結果であり、開発途上国の政府が自国の対策として実施したものは含みません。アジア、アフリカ各国のウォーターエイドからの報告によれば、各国政府が、社会から取り残された人々に対する水・衛生サービスの拡充を優先的に進める動きはあまり見られていません。

 

特設ページ

ウォーターエイドの新型コロナウイルス感染症に関する取り組みは、以下のページからご覧いただけます。

手洗いで新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ

 

新型コロナウイルス感染症の流行を防ぐため、ウォーターエイドは、手洗いなど衛生習慣の普及促進の取り組みを拡大しています。この取り組みを継続、さらに拡大し、より多くの人々が手洗い習慣を実践できるよう、皆さまのご協力をお願いいたします。 

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