【プレスリリース】すべての人が水・衛生にアクセス可能になることで、開発途上国の経済に数兆ドルをもたらすことが明らかに

on
7 July 2021
Taposhi (15) is standing in front of their toilet which was built a few years ago. Shamanagr, Shatkhira, Bangladesh. November 2020
Image: WaterAid/ Fabeha Monir

このたびウォーターエイドは、Vivid Economics社と連携し、水・衛生の改善によって回避できる経済損失の規模について調査を実施。すべての人が清潔な水とトイレを利用し、衛生行動を実践できるようになると、今後20年間で開発途上国の経済が数兆ドル規模で改善されることが明らかになりました。 

報告書「Mission critical: invest in water, sanitation and hygiene for a healthy and green economic recovery」(仮訳 ミッションクリティカル:健康的でグリーンな経済回復のために、水・衛生に投資を)では、すべての人が基本的な給水設備とトイレを利用し、清潔な水と石けんを使って手洗いすることが可能になれば、それを実現するためにかかる費用の最大21倍のリターンが得られると分析しています。持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6の達成を目指すことで、将来的に大きな資金を生み出すことができると言えます。 

  • 下痢等の予防可能な病気や死亡、教育や収入を得る活動に従事する時間を削って水を汲んだり排泄する場所を探したりする時間、水とトイレがないことによる自然災害やパンデミックに対する脆弱性など、水・衛生のアクセスがないことによって様々な損失が生じています。すべての人が水とトイレを利用し、衛生行動を実践できるように資金を投じることで、今後20年間で何兆ドルもの損失を回避することが可能です。 
  • すべての人が自宅で安全な水を得られるようになると、人々が健康になり、また、女性・女の子たちが水くみの代わりに教育や収入を得る活動に時間を使うことが可能になるため、毎年370億ドルを生み出すことができます。 
  • すべて人が、適切なトイレ(排せつ物が安全に処理されるトイレ)を利用できるようになると、2021年から2040年の間に60億件の下痢と120億件の寄生虫症の発生を防ぐことが可能となり、生産性の向上や医療費の削減等によって、毎年860億ドルを生み出すことができます。 
  • 下痢では毎年7万人以上の子供たちが命を落とし、寄生虫の一種である鉤虫に毎年5億人が感染しています。つまり、毎年400万年分が、これらの病気や寿命の短縮によって失われていると言えます。 
  • コミュニティに給水設備を設置することによって、女性や女の子が現在水くみに費やしている年間7700万日に相当する時間を解放することができます。また、すべての家庭で安全な水を得られるようになれば、女性や女の子の時間を、年間1億2200万日相当、解放することができます。水くみから解放されれば、世界中の女性や女の子たちは、これらの時間を教育や収入を得るための活動に使うことが可能になります。 
  • すべての人が手洗いを実践できるようになれば、呼吸器系疾患の流行時、感染者数を減少させることができます。新型コロナウイルス感染症が示すように、感染の拡大を抑制するための対応や封じ込めのために不可欠なコスト・日数を減らすことができます。 
  • 水・衛生インフラを洪水から守ることは、気候変動の影響から世界の最脆弱層を守る最善の方法の一つです。水・衛生インフラを洪水に対してレジリエントにするための施策に1ドル投じるごとに、洪水で破壊されるインフラの修復費用62ドルの支出を回避することができ、また、命を脅かす可能性のある飲料水源の汚染も防ぐことができます。 
    the magnitude of annualised net benefits from 2021-2040

7月9日・10日にG20財務大臣・中央銀行総裁会会議が開催されるにあたり、ウォーターエイドは、開発途上国が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに立ち向かい、気候変動の影響から身を守るためにも、水・衛生への資金拠出を優先化するよう呼びかけています。 

例えば、保健医療施設における水・衛生への投資は、G20が5月に発表したローマ宣言の中で、世界の最貧国の医療システムを守るために不可欠な施策として言及されました。これを実現するために必要な資金は65億ドル。7月9日・10日に、G20の財務大臣がこのような水・衛生課題について議論することを期待します。 

また、本報告書では、エチオピアとバングラデシュの事例を取り上げ、各地における水・衛生プログラムがもたらす健康、経済、環境面でのプラスの成果を紹介しています。これらのプログラムは、社会から取り残されがちなコミュニティの気候変動の影響に対するレジリエンスを高め、女性・女の子が直面する水・衛生問題の解決に取り組んでいます。 

ウォーターエイド・イギリスのチーフ・エグゼクティブ ティム・ウェインライトは話します。

  「水・衛生への資金は、このパンデミックを終わらせ、次のパンデミックを防ぐためだけでなく、世界経済に何兆ドルもの価値をもたらし、経済的に立ち直るためにも必要不可欠なものです。  

長い間、水・衛生の価値が見落とされてきたため、何百万人もの人々が今も貧困状態にあります。調査によると、水・衛生は非常に費用対効果の高い投資です。世界中のすべての人が基本的な水とトイレを利用し、衛生行動を実践できるようになれば、それにかかるコストの21倍ものリターンを得ることができるのです。  

G20がより強力で持続的な回復を目指している中で、水と衛生への投資は間違いなく最良の選択の一つです。」