エボラ危機を生きのびる:リベリア・シエラレオネからの報告

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4 December 2014
In
リベリア

WaterAidリベリア・シエラレオネのプログラムマネージャーのチュチュ・セルマが、アフリカそして世界全体のエボラ出血熱の壊滅的な影響からの復興支援に、投資と長期的対策が不可欠である理由を話しました。

私の国、リベリアでは、エボラ危機のためにこれまでに失われた人命が2700人を超えます。2003年に14年間続いた内戦が終結し、それ以来、私たちが築きあげてきたあらゆるものがエボラ危機の脅威の下にあります。

WaterAidが、リベリアと隣国シエラレオネで活動を再開したのは2009年でした。当時、リベリアとシエラレオネのインフラは、長年の紛争により壊滅状態にありました。道路、学校、病院、発電施設、生活に必要な水やトイレさえも利用できませんでした。何もかもが利用できない状態か、あるいはなくなっていました。

病院にすら安定した水の供給がなく、トイレも機能しない状態では、いかなる国もエボラのようなウイルスに対処することは不可能です。

好転の兆し

私が若いころを過ごしたのは、リベリア北部のロファ郡、そこで、エボラ出血熱の流行が始まりました。私はロファ郡にいる親類や友人と定期的に連絡をとりますが、皆がおびえています。私も心配です。

しかし、厳しいニュースがある一方で、好転の兆しも見えます。医療従事者とボランティアが命がけでエボラ出血熱の蔓延を阻止しようとしています。エボラ出血熱からの生還者が治療センターから戻ってきています。この方たちの話から、私たちにわかることは、生還の望みがあるということ、エボラ出血熱に感染することが即、死を意味するのではないということです。

エボラ出血熱がはじめて発生したとき、その村には1台の救急車もなく、医者も1人もいませんでした。その村では病人がでると、病人をファミリーバイクの荷台や車に乗せ、10マイル離れた最寄りの医療センターへ運んでいました。病人が医療センターへ行くには人の助けが必要なのです。 つまり、それは病人が他の人と接触することを意味し、病気が更に広がります。

リベリアの首都、モンロビアでは、病院においてさえ、エボラ出血熱が広がっています。衛生設備が不十分であること、衛生的な環境が確保されないことに原因があります。エボラウイルスの感染は血液、嘔吐物、便のような体液を媒介としますが、病院のトイレは衛生的ではなく、機能していないものがほとんどです。汚れた寝具も、すぐに交換されません。

エボラ出血熱専門治療センターは開設後、すぐに機能不全に陥りました。あるエボラ治療センタで2、3か月前のことです。20人もの方たちが門のそばに家族と一緒に立っていました。この方たちはエボラ治療センターへの入所を希望していましたが、断られました。ベッドの数が不足していたためです。

この状況は改善されてきています。

2つの視点

 

私の住むモンロビアからは、エボラ出血熱について2つの視点が見えます。国外からの視点とこの国に住む私たちの視点です。

国外からの視点では、世界はこのエボラ危機にたった今気づき始めたところです。しかし、ここリベリアでは、エボラ出血熱に直面して既に1年余りになります。いまだ状況は悪いものの、改善もみられます。皆、ラジオとテレビにくぎづけです。新しい情報が入ってきています。治療センターから戻ってきたエボラ出血熱からの生還者の話が大きく報道され、エボラ出血熱に感染することが即、死を意味するわけではない、早期の治療が大切であると伝えています。サービスチームと医療ボランティアは遠隔地の村落にまで出向き、洗面用具と消毒剤の配布によって家庭のエボラ対策を支援しています。

今では、感染者が家で何日間もずっと寝たままということはなくなりました。すべての住民がエボラ出血熱専用のヘルプラインの番号を電話に登録しました。これにより、モンロビアでは、援助がわずか2、3時間で派遣されます。ボランティアの数も増え、救急車の数も増えました。ウガンダの医師でエボラ出血熱の対処経験を持つ医師が地元の医師と肩を並べて活動しています。これによって地元の医師が自信をつけてきています。

投資の切実な必要性

だれもこの恐ろしい病気がこれ以上蔓延することを望んではいません。しかし、問題は今もなお非常に深刻です。

西側諸国が気づいていないことは、リベリアの病院には、この国の他の公共施設と同じく、水道設備も正常に機能するトイレもないということです。患者は、水をポリタンクにいれ、病院まで持参しなければなりません。財務省や議会のような政府の施設にさえ、正常に機能するトイレや水道設備もなく、あったとしても水道から水が出ることはまずありません。

エボラ出血熱の蔓延を阻止するためには投資が必要です。安全な水の確保、衛生設備システムの整備や衛生教育への投資が、今回のエボラ出血熱の蔓延を阻止すること、そしてこの災害から長期的に復興していくことに必ず重要な役割を果たします。

緊急に対応を要する事柄が多くあります。14年間続いた内戦の後、私たちは、整備された道路と安定した電力供給も必要としています。

しかし、昨年の調査から、55%の学校で安全な水の利用ができず、3分の1の学校には最低限のトイレ設備もないことがわかりました。世界保健機関(WHO)とユニセフによると、リベリアの25%の人々は安全できれいな水を利用できず、また、83%の人々が衛生的なトイレを利用できません。生活に欠かせない飲料水、洗浄や手洗いの水、正常に機能するトイレもない私たちには、エボラのような恐ろしい病気の蔓延を阻止することは不可能です。

人道支援組織の介入により、援助を受け、私たちはこの恐ろしい戦いに臨んでいます。しかし、これから何か月後かにエボラ出血熱を食い止めることができたとしても、リベリアとシエラレオネをエボラ出血熱の脅威から守る援助を続ける必要があります。私たちの疲弊した医療制度と経済では長期的な支援がなければ、エボラ危機の再発防止はできません。

地球規模の問題には地球規模の取り組みが必要です。

今回のエボラ危機以前には、リベリアの人口430万人に対して50人程度の医師しかいませんでした。つまり、8万5千人に対して医師が1人しかいないことになります。また、多くの医師や看護師が今回のエボラ危機で亡くなりました。これに対してイギリスでは、500人につき1人の医師がいます。

数億ドルもの資金がエボラ出血熱の抑止に必要とされていますが、その資金のほとんどは、長期的対策の支援には使われません。壊れた病院の修復や激減した医師や看護師の補充には使われません。

これを西アフリカだけの問題ととらえるべきではありません。これは地球規模の問題であり、地球規模の取り組みが必要です。我が国の大統領エレン・ジョンソン・サーリーフは失われた世代へ伝染病の犠牲についての警告の中で、壊滅した経済に加え、健康危機についても警告していました。

私たちはエボラが再び襲来するまで待つことも、前に出て共にエボラと戦うこともできるのです。