【プレスリリース】ウォーターエイドの調査で、パキスタンと南アフリカでは約4分の1の人が新型コロナの感染が広がる中、手洗いが困難だったと回答-水が利用できないか、高価なため

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WaterAid Japan
on
15 October 2020
In
水/Water, 衛生習慣/Hygiene
Handwashing stations installed by WaterAid through its partner IRSP Pakistan in Mardan, June 2020.
Image: (no credit)

10月15日の世界手洗いの日に合わせて、ウォーターエイドとYouGovが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって最も大きな打撃を受けた国々で実施した調査で、いくつかの国では人々が新型コロナの世界的流行(パンデミック)の中でも、手を洗うことに苦労している実態が明らかになりました。

パキスタンでは、10人中、7人近く(69%)が、新型コロナ感染が猛威を振るう中、手を洗いたいときに洗えない経験をしたことが、自宅、オフィス、公共交通機関など1か所以上であったと報告しています。南アフリカでは半数以上の人々(55%)が同様の回答をしています。世界中が新型コロナに対するワクチンを待ち続ける中、石けんで手を洗うことは、ウイルスに対する数少ない防御策の一つです。

パキスタンと南アフリカの4分の1近くの人々(23%。パキスタンでは25%、南アフリカでは21%)が、水が利用できない状況にあるか、清潔な水が高すぎるかのために、手洗いや除菌が困難であると答えています。

ウォーターエイドの調査は、パキスタン、南アフリカ、アメリカ、イギリスの人々を対象に実施しました。各国の確認された感染者の数と亡くなった人の数はそれぞれ、パキスタンが31万5,000人と6,500人超、南アフリカが70万人と1万7,000人、アメリカが世界最多で800万人近くと22万人、イギリスが60万4,000人近くと4万3,000人弱です (*1)。

イギリスでは、自宅で手を洗うことに問題を感じたことがある人はわずか6%で、職場で手を洗うことに障壁を経験したことがある人はさらに少ない5%でした。一方、パキスタンでは、所得の低い人々の3分の1(33%)は、自宅で手を洗うことに障壁を感じたことがあると回答。困難を経験したと回答したパキスタンの人のうち、7%が「水が高すぎる」と答え、28%が「水が利用できない」と答えました。

4カ国を通して、ほとんどの人がコロナ感染拡大の前よりも頻繁に手を洗ったり消毒したりしていると回答(4カ国全体で81%)。一方、パキスタンでは12%が「手を洗う回数が減った」「手を洗わない」と回答し、同様の回答がアメリカで4%ありました。

世界では、30 億人の人々が自宅で清潔な水と石けんで手を洗うことができません。低所得国では、4分の3の人々の自宅に、石けんで手を洗うことのできる設備がありません。WHOとユニセフのデータによると、世界の保健医療施設の4分の1は、施設内に基本的な水のサービスがないため、医師や看護師は手を洗うことができず、医師と看護師、患者のいずれもが危険にさらされています (*2)。

こうした中、パキスタンでは、13%の人が保健医療施設で手を洗うことに困難を感じています。保健医療施設では、いつでも誰でも、清潔な水や石けんを利用することができなければ、ウイルスをはじめとする感染症のまん延を防ぐことは非常に難しくなります。

このような切迫した数字が示されているにもかかわらず、衛生と清潔な水へのアクセスの重要性は十分に考慮されていません。Devex の調査(*3)によると、これまでに新型コロナへの対応として表明された20兆ドルのうち、水・衛生の強化のために拠出されたのは約0.02%に過ぎません。

各国政府はいち早く、手指衛生と手洗いを促すことに取り組みました。しかし、自宅で清潔な水と石けんが使えない世界の30億の人々、そして何百万人もの保健医療従事者や患者たちが、いまなお手を洗うことができずにいるという懸念される事実が見過ごされています。

ウォーターエイドの調査は、新型コロナから身を守るために手を洗うことが非常に難しい人々がいることを明らかにしています。しかし、誰もが石けんで手を洗えるようになる上での障壁の一つは、多くの国では、どれくらいの人々が手を洗うことができないのかを把握するための十分なデータがないことです。 研究によれば、石けんを使った手洗いは、様々な病気に対する最も低コストで効果的な健康対策の一つであることがわかっています。

WaterAid Pakistan partner NRSP (National Rural Support Programme) is reaching out to the masses in Hyderabad, Sindh with the installation of contactless handwashing stations (feet operated), June 2020.
ウォーターエイドとパートナー団体がパキスタン・ハイデラバードに設置した足踏み型の手洗い設備
Image: WaterAid Pakistan

ウォーターエイド・イギリスのCEO、ティム・ウェインライトは次のように述べています。

「今回のパンデミックは、ウイルスから自分自身と家族を守るためにどうしたらいいのかという不安を私たちにもたらしました。石けんを使った手洗いは、ウイルスの拡散を遅らせ、保健医療への影響を軽減するのに役立ちます」

「ウォーターエイドはパンデミックの間、スラムや市場など、衛生的な環境を維持することが困難な場所や人との距離を保つことが困難な地域に手洗い設備を設置することに力を入れてきました。ウォーターエイドは、新型コロナへの対応として、清潔な水や石けん、手を洗うための場所の整備、手洗いの方法や理由に関する知識の普及への資金拠出を緊急に拡大し、医療施設と脆弱なコミュニティの状況改善に優先的に取り組むことを政府に求めています」

「清潔な水・衛生を中心に置かない対応策は、新型コロナへの対応として、十分なものとは言えません」

ウォーターエイドは、新型コロナをはじめとする感染症の拡大を防ぐために、保健医療施設、学校、公共の場を重点に置いた手洗い設備に対する緊急かつ大規模な資金拠出を求めています。

この資金拠出は、以下の5つの行動計画に沿ったものであるべきです。

  • 特に、最も脆弱で疎外されがちなグループや地域の状況を把握するため、国のデータ収集能力の強化に資金を拠出する。
  • 水・衛生サービスが提供されていないコミュニティへの手洗い設備や水・衛生サービスの提供を優先的に進める。例えば、物理的な距離を取ることなど、新型コロナ予防のための他の対策の実施が不可能な都市部の居住地など。
  • 多くの手洗い設備を設置することによって必要となる給水や衛生、排水管理のサービスも拡大強化する。
  • 政府の保健・教育プログラムの一環として全国的な行動変容キャンペーンを維持し、資金拠出を継続する。
  • 「Hand Hygiene for All」(手指衛生をすべて人に)など国際的なパートナーシップをサポート・資金的支援し、国ごとの計画を実施していくための政治的なコミットメントや調整、プライベートセクターのサプライチェーンにおけるイノベーションを引き起こす。

 

(*1) https://www.worldometers.info/coronavirus/

(*2) https://washdata.org/monitoring/health-care-facilities

(*3) https://www.devex.com/news/interactive-who-s-funding-the-covid-19-response-and-what-are-the-priorities-96833
文中のデータは、2020年10月5日現在

(注)低所得の定義
南アフリカ 年収60,000ランド未満、イギリス 同25,000ポンド未満、アメリカ 同30,000ドル未満、パキスタン 月収20,000ルピー以下。YouGovによって収集されたデータを、低、中、高所得のグループごとに集計。

 

調査方法
YouGovが、ウォーターエイドのために、パキスタン、南アフリカ、イギリス、アメリカで実施。調査はオンラインで実施され、南アフリカ、イギリス、アメリカでは18歳以上を対象に全国的に、パキスタンではオンライン上で成人を対象に実施されました。南アフリカの回答者は都市部に住む傾向がありました。調査期間は、2020年9月30日~10月8日。

 

パキスタン 

南アフリカ

イギリス

アメリカ

回答数 

1,041

1,001

2,196

1,420

調査期間 

9/30-10/4

9/30-10/8

9/30-10/1

10/1-10/4